WONKが表現する「もう一つの世界」。
2016年にデビューアルバム『Sphere』を発表後、最近では香取慎吾やCharaへの楽曲提供、LAのジ・インターネットのオフィシャルカバーを手がけるほか、海外のアーティストともコラボレーションするなど、快進撃を続けるWONK。新作『EYES』は全22曲。壮大なテーマを伴うコンセプトアルバムになっている。
- 荒田洸
- アルバムのコンセプト構造は、自分たちが見ているものが、メディアの恩恵によって皮肉にも制限され、自らの思考も無意識に操作されているのではないかと、疑問を持ったところから始まりました。現在目にする情報は、SNSなど、自分に近い環境の人や、都合のいい情報で固められていることが多いと思う。このことが原因で、意見や生活環境の違う他者を受け入れることがなくなってきていると思います。「現状は本当に正しいのか?」というメッセージをメンバー間で話し合い、そんな状況を作品として表現しようと考えていきました。そのうち「他者の意見も受け入れる」という考え方と同時に「もう一つの世界が同時に存在していたら」というイメージが出てきて。
アートブックと完全にリンクした楽曲は、どのように制作されていったのか。
- 長塚健斗
- メンバーと話し合いながら、歌詞を書きましたが、アートブックの制作が進行する過程で、楽曲の内容も変わっていきました。揃った曲を並べ替え、脚本と調整していくところなど、本当に映画の編集作業みたいでしたね。
- 江﨑
- サウンド的なまとまりには時間を要しましたね。バンドの方向性も過渡期を迎えていて変化した部分も多かった。
- 荒田
- 冒頭のタイトル曲「EYES」は、神秘的で、別世界の雰囲気を出すために、ベースのリズムにアフリカンなポリリズムを導入し、その上にサイバー感のあるパーカッションを重ねていきました。ストーリーがあることで、音楽的な新しいアイデアが出てきたことも多かった。
- 江﨑
- デジタル・プログラムの曲も多かったんですけど、ストーリー的に温かみがある最後の「In Your Own Way」など、生楽器に軸が置かれているというような作りにしました。ストーリーとサウンドのリンクにこだわるあまり、完成当初はCD一枚の収録時間数限界の74分を超えてしまうハプニングがあって(笑)。
- 荒田
- CDなどのソフトが生活圏からなくなっていたことを、改めて実感した。
- 江﨑
- 初音ミクの収録時間数80分45秒が最長ということで、記録に挑戦しようと思いましたが、なんとかCD一枚分に収まって、ホッとしましたね。
メジャーも注目するWONKのプロダクション。
- photo/
- Naoto Date
- text/
- Katsumi Watanabe
本記事は雑誌BRUTUS917号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は917号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。