エンターテインメント

【話題の絵本】村田沙耶香、米増由香、瀧井朝世が語る「絵本」の魅力。

BRUTUSCOPE

No. 917(2020.06.01発行)
マンガが好きで好きで好きでたまらない
『ぼくのポーポがこいをした』「恋の絵本」シリーズ第5弾。ある日ぼくのおばあちゃんと大切にしているぬいぐるみのポーポが結婚することに。ぼくは状況を呑み込めないまま、2人の結婚に考えを巡らせる。色彩豊かなイラストも幻想的。岩崎書店/1,500円。
『ぼくのポーポがこいをした』「恋の絵本」シリーズ第5弾。ある日ぼくのおばあちゃんと大切にしているぬいぐるみのポーポが結婚することに。ぼくは状況を呑み込めないまま、2人の結婚に考えを巡らせる。色彩豊かなイラストも幻想的。岩崎書店/1,500円。
『ぼくのポーポがこいをした』「恋の絵本」シリーズ第5弾。ある日ぼくのおばあちゃんと大切にしているぬいぐるみのポーポが結婚することに。ぼくは状況を呑み込めないまま、2人の結婚に考えを巡らせる。色彩豊かなイラストも幻想的。岩崎書店/1,500円。

薄い一冊に閉じ込められた大きな世界は、大人にも豊かな想像力を与えてくれる。岩崎書店の「恋の絵本」シリーズは、絵本初挑戦の作家たちが、新しい恋愛観やジェンダー観を取り入れた恋の物語を描く。「大人の心の痛みや切なさにも響くものを作りたかった」と編集の瀧井朝世さん。その第5弾『ぼくのポーポがこいをした』は、物語を村田沙耶香さん、イラストを米増由香さんが手がけた。

村田沙耶香
恋がテーマと聞くと私の場合は全人類一斉恋愛などと妄想してしまうのですが(笑)、恋はおとぎ話のような綺麗なものだけじゃなくて、怖さや不思議さもあるはず。だから恋愛し終わったイメージのあるおばあちゃんとぬいぐるみの結婚に笑っている町民がいて、それでもおばあちゃんは恋をするんだ、ということを必ず書こうと思っていました。
瀧井朝世
恋とは他人にとやかく言われるものではなく、とてもパーソナルで奇妙なもの、というメッセージがいいなと思いましたね。ブラックドレスや女性同士の親など、細やかに常識を覆していく描写もさすがです。
米増由香
村田さんの小説は、足元がグラグラして不安になるんですよね(笑)。同時に、心が解放的になる。今回も、もっと自由になっていいんだなと気づいて、自分のことを考えさせられました。絵も、とにかく自由に描いてください、といい感じで野放しにしてくれましたよね。
瀧井
ポーポは「くま」という指定もなかったんですよね。
米増
悩んでいた時に、村田さんから見せていただいた『愛されすぎたぬいぐるみたち』という本が衝撃で。大事にされすぎるとボロボロになってしまうという視点や、希望のシーンであっても黒い色で表現できることなど、自分の中にはない発想ばかりでした。
瀧井
今回絵本を作る機会をいただいて、言葉と絵が世界観を補強し合うことは、こんなにも力があるんだと気づきました。文字数は少ないけれど、一ページにとどまる時間が長いので、舐めるように楽しむってこういうことかと思いました。
村田
小説は次々ページをめくって読み進めていくものだけれど、絵本は一ページの中にずっととどまっていた子供時代のことを思い出しますよね。言葉を削って限定されるのではなく、削った言葉と絵の力によって世界が広がっていく。それはすごく不思議な経験だと思います。
米増
自分だけだと創作の限界を感じることがありますが、絵本のちょっとした言葉から想像力がバッと広がるんですよね。その感覚が楽しかったです。

社会の目を気にして、自分で勝手にルールを作り、窮屈な気持ちになっていないだろうか。もっと自由になっていい、と教えてくれる絵本の世界に浸ってみては。

3人が選んだ、大人の心にも響く絵本。

村田沙耶香セレクト

『音叉』作:エドワード・ゴーリー /訳:柴田元幸 河出書房新社/1,200円。

『翻訳できない 世界のことば』作:エラ・フランシス・サンダース/訳:前田まゆみ 創元社/1,600円。

「『音叉』は、ゴーリーの中でも特に好きです。辛い目に遭っていた女の子が、最後は身を投げた海の中で生き物と仲良く暮らすという物語も素敵で、言葉もいいです。『翻訳〜』は自分の小説が翻訳されるようになり、この本で言葉を覚えた記憶や他国の文化を改めて尊く思えました」。

米増由香セレクト

『ふたり』作:瀬川康男 冨山房/1,600円。

『いばらひめ』作:エロール・ル・カイン/訳:やがわすみこ ほるぷ出版/1,400円。

「めくっていて楽しい作品を選びました。『ふたり』著者の瀬川康男さんは、絵本作家であり画家でもあるので絵が素晴らしい。言葉遊びのような物語もほっこりします。『いばらひめ』も絵が本当に美しくて、一枚一枚じっくり見て、眼福をいただいています。カインのほかの作品も収集中です」。

瀧井朝世セレクト

『焚書 World of Wonder』作:鴻池朋子 羽鳥書店/3,800円。

『ころべばいいのに』作:ヨシタケシンスケ ブロンズ新社/1,400円。

「ポーラ美術館で鴻池さんの作品を拝見し、購入しました。宇宙が広がっていくような感覚になれて、長い時間を過ごすことができます。ヨシタケさんの作品は、嫌なことがあった時に気持ちの切り替えをどうすればいいか考える絵本。もやもやした気持ちの時に読みたくなります」。

エンターテインメントカテゴリの記事をもっと読む

村田沙耶香

むらた・さやか/小説家。『授乳』でデビュー。同作で第46回群像新人文学賞、『コンビニ人間』で第155回芥川賞受賞。近著に『丸の内魔法少女ミラクリーナ』など。

米増由香

よねます・ゆか/イラストレーター。書籍装画や舞台ポスター、CDジャケットなどを手がける。児童書の仕事に『キンダーブック3』『おっこちてきたおほしさま』。

瀧井朝世

たきい・あさよ/編集、ライター。『anan』『クロワッサン』などで作家インタビューや書評を担当するほか、『王様のブランチ』ブックコーナーでブレーンを務める。

text/
Yoko Hasada

本記事は雑誌BRUTUS917号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は917号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.917
マンガが好きで好きで好きでたまらない(2020.06.01発行)

関連記事