エンターテインメント

【話題の本】レティシア・コロンバニの2作目『彼女たちの部屋』邦訳版が近日発売。

BRUTUSCOPE

No. 917(2020.06.01発行)
マンガが好きで好きで好きでたまらない
レティシア・コロンバニ photo/Getty Images

力強く生きる女性たちの物語が交差する。

 フランスで100万部を超えるベストセラーとなり、折しもその頃世界的に拡散した「#MeToo運動」の中で、フェミニズム小説としても高い評価を受け、その後日本でも出版され話題となった『三つ編み』の作者レティシア・コロンバニの待望の新刊『彼女たちの部屋』の日本語版が間もなく刊行される。コロンバニは、それまでもオドレイ・トトゥ主演の『愛してる、愛してない…』などの映画監督や女優として活躍していたが、初めて挑んだ小説が『三つ編み』であった。

 それは、出自も住む国さえも異なる3人の女性が、それぞれ逆境や苦難を力強く乗り越えて行く話が交互に語られ、それが女性の象徴である「髪」を通して、まさに三つ編みを編むかのように、最後に一つに縒り合わさって、読者に大きな感動を呼ぶ物語だった。

『三つ編み』インド、イタリア、カナダ。3つの国の3人の女性。かけ離れた境遇に生きる彼女たちに共通しているのは、女性に押しつけられる困難と差別のために立ち向かっていることだった。逆境を生きる女性の連帯を描く物語。齋藤可津子訳。早川書房/1,600円。

『彼女たちの部屋』の舞台となるのは、救世軍が1926年にパリに造った恵まれない女性たちのための宿泊施設、〈女性会館〉である。ここは1世紀近く経った現在でも存続しているのだが、この物語は、女性弁護士として社会的な成功を収めていたソレーヌが、ある事件をきっかけに弁護士をやめてから鬱になり、精神科医のアドバイスでボランティアをやることを勧められ、その会館に住む女性たちの代書人として門を叩くところから始まる。その一方で、時は1925年に遡り、その会館の誕生に命を賭して尽力したブランシュという女性の物語が語られ始める。そして、ここでも『三つ編み』同様、それぞれの物語が同時並行的に進んでいくのだ。

 それにしても、ジェンダーギャップが比較的小さいといわれるフランスにおいてさえ、貧困や社会的不平等、家庭内暴力などにあえぐ女性たちが、今なお数多くいることに心が痛む。そして、現在会館の主な住人はフランス語も解せない移民なのだ。そこで、代書人ソレーヌの奮闘が始まるのだが、『三つ編み』同様、ソレーヌとブランシュの物語が時空を超えて重なり合う時、読者は圧倒的な感動と希望の光に包まれることになるだろう。

『彼女たちの部屋』

現代を舞台に困窮した女性が避難できる施設のボランティアをするソレーヌと、100年前を舞台にその施設創設のため奔走するブランシュ。背景の異なる人との連帯に苦労しつつも少しずつ道が拓ける2人だが、最後の壁が立ちはだかるーー。齋藤可津子訳。6月18日刊行予定。早川書房/1,600円。

エンターテインメントカテゴリの記事をもっと読む

レティシア・コロンバニ

1976年フランスボルドー生まれ。映画監督、女優、脚本家。第1作となった『三つ編み』は、刊行前から話題を集め、2017年春の刊行後にはまたたく間にベストセラーへ。フランスで100万部を突破、32言語で翻訳が決まった。

text/
Mikado Koyanagi

本記事は雑誌BRUTUS917号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は917号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.917
マンガが好きで好きで好きでたまらない(2020.06.01発行)

関連記事