エンターテインメント

ビートからポップ・アート、W・バーマン再発見。

滝本誠のCAFÉ NOIR

No. 915(2020.05.01発行)
HOME SWEET HOME 居住空間学2020

 この連載コラムの前担当者M(現『ポパイ』編集長)のメールでの質問が、おおげさでなくウイルス禍で引きこもった一老人の孤独な環境に劇的な知的刺激をもたらすことになった。これまで数十年かけて集め、わが家で散乱状態にある情報をすべて適所に配置可能にする人物との遭遇であった。Mのメールはこうである。

「まだ息してます? よかった。ところで、ウォレス・バーマンって知ってます?」

「だれだよ? ……まてよ、どこかで……そうだ、ビートルズ『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』50周年記念盤で再チェックしたとき、アルバム・カバーのおびただしい人物群のなかに、その名前があったような……待ってね……あった」

 バーマンを推挙したのは、1960年代ロンドンのアート界をけん引した画廊主、ロバート・フレイザーだ。そして、フレイザーとバーマンを結び付ける役割を果たしたのが、俳優、写真家のデニス・ホッパーだった。ホッパーは自分の俳優仲間のディーン・ストックウェル、ラス・タンブリンがともにバーマンの強い影響下にあることに気づいた。バーマンに勧められ、ストックウェルもタンブリンもバーマン同様にコラージュ・アートに手を染めはじめていたのだ。

 ホッパーは自身の監督作『イージー・ライダー』のヒッピー・コミューンの一員バーマンをカメオ出演させている。ただ、男は全員、長髪、髭面だから『ウォーリーをさがせ』状態で特定がむずかしい。それにしても、シックスティーズ文化を象徴する音楽、映画の英米の二大アイコン双方に顔をみせるというのはカルチャー上の離れ業といっていいのではないか。

 代表作『SEMINA(ラテン語由来で「種」を意味する)』シリーズは、手作りの小冊子で自分が認めた相手にしか配布しない極小のアート(の「種」蒔き)行為であった。3歳のころから父親の助手を務めていた息子トッシュが書いた回想録『TOSH Growing up in Wallace Berman's World』の序文をタンブリン(最新出演作は復活した『ツイン・ピークス』Dr.ジャコビー役)の娘というのがいい。(以下、次号)

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たきもと・まこと

東京藝術大学卒業後、編集者に。著書に『映画の乳首、絵画の腓 AC 2017』(幻戯書房)。

本記事は雑誌BRUTUS915号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は915号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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