エンターテインメント

旅をしながら混ざり合う、“文化混流”東京キャラバンとは⁉

BRUTUSCOPE

No. 915(2020.05.01発行)
HOME SWEET HOME 居住空間学2020
松たか子(左) 中納良恵(右)

演者も観客も夢幻に包まれる不思議な舞台。

2017年、京都・二条城で開催された野田秀樹率いる『東京キャラバン』で共演した女優・松たか子とミュージシャン・中納良恵。ジャンルも言語も国境も超えて、表現者たちが“混流”し合う夢のようなステージでは、一体何が起こっているのか⁉

松たか子
私は2015年の初回から何度か参加させていただいていますが、最初プロジェクトの話を聞いた時は、わかるようなわからないような。キャラバンというバスがパカッと開いて、歌があり展示物があり、舞台をやってをしていく。で……? みたいな(笑)。でも、まいっか! と流されて。その積み重ねで参加してきました。一度限りの本番を終えたら、あっという間にみんなバラバラに散っていく。なんだか不思議な感覚ですね。
中納良恵
私はライブ以外のああいう舞台は初めての経験。しかも共演する方たちがすごい人ばっかりでもうどうしよう! という感じでしたが、楽しんでやらせてもらいました。
伝統芸能とか、とにかくいろんなジャンルの方たちが集まるんですけど、決してみんな普段やってることと違うことをやるのではなくて、あくまでもお互いがいつもやっている通りのことをやって、混ざり合ってくというか、すれ違っていくというか。それが面白いですよね。
中納
東京キャラバンアンサンブル〉のパフォーマーの人たちは動きがめちゃくちゃ機敏だし、みなさんが臨機応変にこうすればいい、ああすればいいとやっているのを見て、プロやなと、素人みたいな感覚でしたね。それぞれ違う背景を持った人たちが融合して一つのものを作り上げていく感じが、すごいことだなと。
いつも、最初が一番面白いというか。ちょっと戸惑いながら探りながらやるのが、スリリングでもあり。だんだんわかってくるんですけど、最初のあの何ともいえない感覚は、なかなかドキドキするんですよね。
中納
終演後は、普段のライブとはまったく違う、ドッとしたものがありましたが、自分の中の何か新しい芽が開いたというか、驚きがいっぱいあったし、刺激的でした。
中納さんの曲に合わせて重要無形文化財・能楽師の津村禮次郎さんが踊っているシーンを、私はすごく贅沢な気分で見ていました。歌手の方は、発する声、そこに立ってるだけで圧倒的な存在感がある。役者たちは、その間を這うようになんとか居場所を探して生きてる、卑しい生き物なんだな、と自覚しました。
中納
いやいや、松さんと向かい合って歌うシーンはめちゃめちゃ幸せでした。ここまで来たか私、と(笑)。
松さん、ちょっと神的でしたよ。
私がですか⁉ そんなことない。私こそ、二条城の屋外、とても開放的な空気の中で、椰子の実の歌を歌っている中納さんを、「私がいま、独り占め!」と思っていました。
中納
いやいや、椰子の実の松たか子は、私のものでしたよ。私ら、ちょっと微笑み合いましたよね。
うん。それが最高でした。それに、本番を迎える少し前、すごく空が綺麗なマジックアワーの時間帯があって、自分たちは自然の一部分でしかないような感覚がありました。
中納
儀式的というか、神事的な感覚があったような気がします。芸事というのは、やっぱり神様とのツールというか、松さんが役者についておっしゃいましたが、つなぐ役割というか、すごく神聖な感じがありました。お客さんだけじゃない、いろんな人が見てる、見守られているような感覚。皮膚がピリピリするような。すごく厳かな時間でしたね。
今年、代々木公園で開催予定だった公演は残念ながら延期になってしまいましたが、野田さんは東京キャラバンのような取り組みは2020年で終わりというわけではなくオリンピックが終わった後も残していけたらいいなという思いがあるみたいなんですよね。だから、できる時に、できる人が集まってやる。個々が存在してさえいれば、原っぱでだってできるものですしね。
中納
そうですね。引っ張られ、引き出されて。
いつかまた!

東京キャラバンって?

野田秀樹劇作家演出家)総監修のもと、第一線で活躍するアーティストと各地の多彩な表現者たちが言語や国境、表現ジャンルを超え、“文化混流”によって新しい表現やパフォーマンスを創造し続ける文化ムーブメント。「東京オリンピック・パラリンピック」に向けた文化プログラムを主導する東京都のリーディングプロジェクトとして2015年に始動。全国16ヵ所をしながら唯一無二のパフォーマンスを繰り広げる。*5月23日・24日代々木公園で開催予定だった『東京キャラバン』は延期。
今後の情報はHPから→https://tokyocaravan.jp

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photo/
Satoko Imazu
hair&make/
Eri Akamatsu (esper.)
text/
Chisa Nishinoiri

本記事は雑誌BRUTUS915号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は915号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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