エンターテインメント

ジャズピアニスト・丈青が惹かれたフィメールラッパー・Awich

BRUTUSCOPE

No. 915(2020.05.01発行)
HOME SWEET HOME 居住空間学2020
丈青(左) Awich(右)

丈青(SOIL & "PIMP" SESSIONS)は語る、「Awichは"普通じゃない"」。

傑作アルバム『孔雀』をリリースしたラッパー・Awichと、SOIL &“PIMP”SESSIONSのピアニスト・丈青。AwichがSOILの「Heaven on Earth」に参加してから、2人はライブや作品で共演を重ねてきた。そんな両者の対談、冒頭から知られざる話が……。

丈青
Awichのミュージシャンシップというのは、いつもとても感じていて。僕がすごい好きなエピソードがあるんだけど、沖縄のコザでアメリカ人を相手に会場をロックするということをやっているじゃない?
Awich
米軍基地がある地域なんですけど、アメリカ人しかいないクラブがあって。普通にみんながDJで踊っているところにパッと出ていって、自分の曲を歌うんです。最初はまさしく「お前、誰?」みたいな反応なんですよ。だって知らないんですもん。日本語では絶対に反応をくれない。そんななかで「NEBUTA ft. kZm」みたいな英語の曲をかけたりするとちょっとずつノってくる。
丈青
そういう感覚を忘れないようにやってるんだよね。彼女という人を表す一つのエピソードだと思うんです。その感覚っていうのは本場のものじゃない?
Awich
ですね。それは丈青さんも持っているもので、一緒にやるときにわかってくれる。私は感覚的に「もうちょいいやらしいドラムなんですよね」とかしか言えないけど、SOILのみなさんは音楽的な言葉に通訳してくれて、伝え合うことができる。
丈青
Awichはその感覚的な理解の度合いが尋常じゃないので、話が早いわけです。彼女がノーバディノウズなところでやるっていうのは、僕たちが海外でやってきたことと、同じなんだよね。海外でロックするというのは相当タフな話なんだけど、それはやれないといけないことだし、その感覚は常に持ってないといけない。そこにお互い通じるところがある。Awichもだし、三浦大知もそうだけど、沖縄からは"普通じゃない"すごい人たちが出てくる。それはなぜかというとアメリカに近いからで。
Awich
イヤでもアメリカに憧れちゃうんですもん。すぐそこにあるから手が届きそうという思い込みもある。だからほかの地域の人よりも変な自信があるのかもしれない。「本場知ってる」みたいな。ヒップホップもR&Bもレゲエも、ルーツが英語圏にある音楽を語るにあたって、英語がわからないのにどうやるのっていう思いがあるけど、沖縄にいると肌で感じられる。そこでコミュニケーションを取ってきたし、ラッパーとして言葉でどう勝負するかって自信をつけたいがためにそういう環境に身を置いてきた。それを感じ取ってくれるのが丈青さん。SOILとはすごくやりやすいんですよね。だって、ただの天才の集まりだから(笑)。この人たちの頭どうなってるんだろうと思いますよ。
丈青
変わり者が多いからね。キャラクターが全然違うし。
Awich
そこも超面白い。それぞれの役割が確立されてる。
丈青
秋田(ゴールドマン)はウッドベースだけじゃなくてシンベも弾けるし、ドラムのみどりんはパッドも使えるから、Awichがやりたい音楽に対応できるんだよね。俺は一応バンマスってことになってるけど、ピアノトリオのJ.A.Mではリーダーをやっているので中間管理職もやれるというか(笑)。しかも最近、ここに吉田サトシ(電気グルーヴなどのサポートを務めるギタリスト)が入ってきて。
Awich
あの人もただの天才! みなさんで譜面とか楽譜の用意の仕方が全然違うんですよね。
丈青
謎だよね。同じ曲やってるのに共通の譜面使ってない(笑)。Awichのトラックを作ってるChaki(Zulu)君も素晴らしいよね。彼も感覚的にやれる人だから、すごくいい集まりになってる気がする。
Awich
みなさんがChakiさんを音楽的に分析して「すごい」って言ってるのを聞いて、やっぱすごいんだって改めて確認してます(笑)。お互いが引き立て合ってる感じがする。
丈青
そうだね。
Awich
一緒にライブするときは、この猛獣の方々をいかに指揮してるように見せるか。本当はコントロールされてるんですけど、してるように見せたいじゃないですか。そこをどう見せるかっていう勝負です。
丈青
こうは言ってるけど、コントロールされてるのは俺ら。よく「姉御」って言われたりしてるけど、まさにそういう気質がある。ステージを見てもらえたらすぐわかると思うけど。
Awich
恐れ多いっす(笑)。
丈青
それがいいの。バンドを始めた頃のような新鮮な作業を一緒にやりたい相手が現れて、それが今、仕事にできているというのは幸せだなと思います。
Awich
いつも本当に楽しいです。これからもよろしくお願いします。

Awich 『孔雀』 Release Tour

3月17日に予定していた、リリースツアー東京公演の振り替えが6月15日にバンドセットで開催予定。早くも2020年の傑作といわれるアルバム『孔雀』を凄腕ミュージシャンたちがどうアレンジするのか、要注目のライブだ。会場/東京・恵比寿LIQUIDROOM。開場/18時30分。開演/19時30分。

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丈青

じょうせい/1975年広島県生まれ。ピアニスト。世界的に活躍するジャズバンド、SOIL &“PIMP”SESSIONS、J.A.Mのメンバー。これまでに国内外の大物とのセッションを重ねてきた。

Awich

えいうぃっち/1986年沖縄県生まれ。ヒップホップクルー、YENTOWN所属。14歳で音楽活動を開始、その後、アトランタに留学。結婚と出産、夫の死を越え、2017年にアルバム『8』でブレイク

photo/
Hiromi Ikeda
text/
Kazumi Nanba

本記事は雑誌BRUTUS915号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は915号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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