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idea 1【 建築家しばりで物件を探す。】

都市生活者による、 集合住宅に住むためのアイデア。

No. 915(2020.05.01発行)
HOME SWEET HOME 居住空間学2020
26.9帖という広々としたリビングから一続きになったダイニング。ガラス窓にはあえてカーテンはつけない。外国人向け住居のような造りが特徴で、ホウビカンジュなどの巨大な観葉植物も似合う。

欲しいイメージを追い求めて手に入れた理想の斜面住宅。(神奈川県川崎市)

『高橋英二郎 ●グラフィックデザイナー』『中里真理子 ●スタイリスト』

東京に程近い郊外の住宅街。家々の間を車で走った先に突如現れたのは、丘の斜面に建てられた、巨大な分棟型の集合住宅。グラフィックデザイナーの高橋英二郎さんとスタイリスト中里真理子さん夫妻は、そのモダンな外観に惹かれて、2年半前にこのマンションに越してきた。全14棟でおよそ80組ほどが入居する瀟洒な集合住宅は、知る人ぞ知る人気建築で、たまたま運よく入居できたというよりは、長年の思いが実ったという方が正しい。

 15年ほど前、サンフランシスコに住んでいた2人。帰国してから探したのは外国人向け住居のようなスケールの大きい住まい。都内近郊は難しいと思っていた矢先に出会ったのが、斜面の住宅を得意とする建築家、井出共治の集合住宅だった。それ以来、彼の建築を調べ、東京、神奈川に数軒ある物件を片っ端から見て回った。決めかけたのに寸前で売れてしまった、なんてこともあった。探し始めてかれこれ12年ほど経った頃、ようやく現在の物件と出会う。念願の住まいは、4LDKで住居専有面積165㎡という理想的な広さ。上階なので眺望抜群なうえ、各住戸に専用庭スペースがあるので庭を育てる楽しみもある。

「住みたい家のイメージがはっきりとあったので、戸建てをイチから建てるより、建築家しばりで探し、完成されている物件がいいと思って。初めてここを見たときの高揚感はすごかった」と高橋さん。一方、中里さんはディテールよりも全体の雰囲気が好きかを重視する。それは近隣同士の関係性にもつながっていて、必ずしも同じ嗜好の住人ばかりではない中で、この建築が好きで住んでいることが共通項としてあるのは大きいという。

「かつて住んでいたマンションでは周辺に誰が住んでいるかわからなかった。でも、ここでは家に対する思いが重なる者同士が住んでいるので近所付き合いがしやすい。そこが建築家が造る集合住宅の魅力かなと思います」

エントランス。手前は「サンフランシスコに住んでいたときに、よく電線にスニーカーがぶら下がっていた」(⁉)のを思い出し、スニーカーをディスプレイのように吊して収納。

ダイニングから緩やかにつながる10帖ほどのキッチン。竣工時から手を入れていない物件だったので、台所周りをはじめ、床や壁など当時のまま。その味わいも気に入っている。

ストリートカルチャー好きという高橋さんの仕事部屋の棚には本や雑誌、レコード、機材など、趣味のものが溢れている。「自分にはない世界観だから面白い」と中里さん。

夫婦の寝室はごくシンプルにベッドのみ。ベッドカバーはインドの刺し子カンタ。インテリアは、悩んだときに互いに聞く。「アリかナシか。ジャッジは速い」(高橋さん)

北向きの13帖ほどの1室は2人のアトリエに。高橋さんは、奥のデスクで週に3日ほど自宅作業する。棚にずらりと並ぶ古着のTシャツは高橋さんのもの。手前のミシン台は中里さんの作業スペースに。

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高橋英二郎/たかはし・えいじろう』『中里真理子/なかざと・まりこ』
共に1972年東京都生まれ。高橋さんは2019年よりフリーのグラフィックデザイナーとして独立。中里さんは、食やインテリアのスタイリストとして雑誌や広告などで活躍。双子の子供と2匹の猫と暮らす。

本記事は雑誌BRUTUS915号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は915号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.915
HOME SWEET HOME 居住空間学2020(2020.05.01発行)

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