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蒐集家のホーム・スイート・ホーム。|郷古隆洋 ●Swimsuit Department (福岡県太宰府市)

居住空間学2020

No. 915(2020.05.01発行)
HOME SWEET HOME 居住空間学2020
古今東西の「愛すべき物」たちに囲まれる、郷古隆洋さんの太宰府の家。貴重な骨董だけではなく、2歳の息子・光人くんのおもちゃも並ぶ。風通しの良い高台のマンションで、窓からは宝満山の稜線も太宰府天満宮の緑も見渡せる。写真正面の赤い椅子は、ヴェルナー・パントンのハートチェア。
リビングにある僧侶の版画は、棟方志功と共に民藝運動を支えた鳥取の板画家、長谷川富三郎の作。吊り棚は松本民芸家具。「民藝への関心と学びは今も続いています」

寝室の一角。3年ほど前に買ったスペインの素朴なスツールとジョージ・ネルソンの黄色いココナッツチェアが並ぶ。ココナッツチェアは妻の淑美さんが持っていたもの。

室内のエレベーターホールにも古今東西の「古い物」が。右端の張り子のだるまは岡山県の伝統工芸品で「顔が素晴らしい。目の大きさといい、僕が今まで見た中で一番」。

玄関先に飾られた日本の古い張り子人形たち。「玄関は、人を迎え入れる場所なので縁起物がいいと思って」。左は弁慶。宝船が描かれただるまは宮城県の松川だるま。

玄関の一角を床の間に見立て、柚木沙弥郎のタペストリーを掛け軸に。床板代わりの飾り台の上に置いたスリップウェアは、倉敷で見つけた武内晴二郎の1960年代の作。

写真中央の深皿は出西窯の創業メンバー、多々納弘光の作。「出雲民藝館で彼の仕事の素晴らしさを知った直後に骨董市で出会った。1972年作で自分の生年と同じ」

サボテンの持ち手の小さなマグカップは、公私にわたって交流のあるアーティスト、ピーター・シャイアーからの息子誕生のお祝い。飾られている物すべてに物語がある。

郷古さんの2店舗目、〈バスハウス太宰府〉の奥に設けたゲストルームには囲炉裏も。囲炉裏の黒煉瓦は小代瑞穂窯の福田るいが耐火煉瓦に釉薬をかけて焼いた。

2拠点居住で初めて得た、帰省する場所。

蒐集家であり、国内外のヴィンテージ雑貨を販売するスイムスーツ・デパートメントの郷古隆洋さんが、ここ福岡の太宰府に住まいを設けたのは2017年のこと。東京の家はそのままに、太宰府との2拠点居住をスタートさせた。

「結婚して子供が生まれたことがきっかけですが、もともと、国内にもう一つ拠点を持つなら、福岡と決めていました。もの作りの歴史から見ても九州は面白いし、羽田─福岡間は飛行機の便数が多く、行き来にストレスはありません。太宰府は町の気がいいし、何がいいって、野菜がおいしい」と、骨董の目利きは町の野菜直売所の素晴らしさを一番に語り、ここに住み始めてから、集めた器を使うのが楽しみになったと話す。

 住まいは妻の淑美さんの両親が20年ほど前に建てたマンションで、内装は壁紙以外、建てられた当時のままを引き継いだ。

オーダーメイドの赤いシステムキッチンやカリン材の光沢のあるフローリングなど、ちょっとポストモダンっぽい雰囲気も良くて、改装は全く考えませんでした」

 仕様は変えずとも、この部屋を「郷古さんの家」にしているのはやはり、世界各地から蒐集したたくさんの「物」だ。古い陶器や張り子人形など、貴重で壊れやすいものも多いが、それらは子供の手の届くところにも飾られている。

「息子は今2歳ですが、生まれたときから割れ物、壊れ物が周りにあるからか、乱暴には扱わないし、壊したこともない」うえに、自分のミニカーも向きを揃えて両手で並べるというのだから驚く。

ストライプのペンダントライトはシステムキッチンの赤の塗装に合わせて選んだ。中央の黒い椅子はジオ・ポンティの《PONTI 969》。

リビングの一角に設けたキッズコーナー。壁の「HOME SWEET HOME」の看板は旅先のアリゾナで見つけ、この家用に持ち帰った。

動物の図柄のタペストリーは染色家、柚木沙弥郎の70年代頃の作。右の壁、金太郎が描かれた古いこいのぼりが息子の成長を願う。

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ごうこ・たかひろ

1972年東京都生まれ。ユナイテッドアローズランドスケーププロダクツを経て2010年にSwimsuit Department設立。ヴィンテージ雑貨などを販売する〈BATHHOUSE〉を運営。店舗のインテリアコーディネートなども手がける。

photo/
Keisuke Fukamizu
text/
Tami Okano

本記事は雑誌BRUTUS915号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は915号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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