【商店街フレンチ】unepincée/willo'wisp

グルマン温故知新

No. 914(2020.04.15発行)
いつか旅に出る日。

ご近所さんいらっしゃい! の地元密着型フレンチ。

街に根ざした銀座、新宿といった商業エリアではなく、商店街の一角に溶け込む地元密着型のフレンチが相次いで登場。一つは都営大江戸線沿線、もう一つは京王新線の駅前。いずれも気取らずに訪れられる雰囲気で、くつろげるカウンター席がいい感じ。

『unepincée ●赤羽橋』ひたむきな人柄が伝わる、端正な料理を。

 東麻布商店会、通称「いーすと通り」の一角に小さなフレンチレストランが誕生したのは2019年の年の瀬。店内の様子がよく見える大きなガラスと、イギリスのアンティークの扉を組み合わせた入口が目印だ。

 オーナーシェフの馬堀直也さんは理系の学校を卒業するも、フランス料理の世界に惹かれ、代官山〈マダム・トキ〉をはじめとする有名店で研鑽を積んだ。パリ郊外・フォンテーヌブローのレストランではジビエ料理を、その後ロンドンの星付きレストランではイノベーティブな表現も学んだ経歴の持ち主だ。


「師匠の教えは、とにかく丁寧に作ること」と、真摯な馬堀さん。

 2016年から3年間、麻布十番〈カラペティバトゥバ!〉でシェフを務めた後、満を持しての独立開業。生まれも育ちも東京・大井町。同様に個人店が多く立ち並ぶこの街並みに親しみを覚えて、ここに決めたという。

 フレンチの要であるソースを重んじつつ、オーセンティックな料理も軽やかに仕上げる。ゆったり、じっくり味わいたい。

【仔羊スモークのロースト 栃木 越雲農園のお野菜 マジョラムのソース】燻香をつけて焼いた骨付き仔羊には、爽やかなマジョラムのソースを。添えたムラサキダイコン、スウェーデンカブやケールなどの野菜はすべて栃木〈越雲農園〉から。4,600円(価格は2名分、写真は1名分)。

【くぬぎ鱒のミキュイ ふきのとうのソース】微妙な火入れで仕上げたクヌギマスには、香味野菜やマッシュルーム、白ワインなどで作るデュグレレソースを合わせて。フキノトウのピクルスの酸味がアクセントに。3,800円(価格は2名分、写真は1名分)。

【栃木 加藤いちご園の苺のミルフィーユ アマレットのアイスクリーム】キャラメル味のカスタード、キルシュでマリネしたとちおとめ、オレンジ風味のチュイルとパイ生地、アマレットが香るアイスクリームを重ねて風味豊かに。900円。

「木・鉄・白」をお題に、デザイナーに依頼した空間。

『willo'wisp ●幡ヶ谷』駅前商店街の新星は、軽やかでフレッシュ。

 幡ヶ谷駅から代々木八幡方面へと延びる西原商店街。ドラッグストアやチェーン店がひしめく駅前に、今年2月忽然と現れたレストランが〈will o’ wisp〉。全面ガラス張りの店構えや天井の高い空間が、異彩を放つ。

 サッカーの指導者を目指して資格を習得した後、ニュージーランドでの語学留学中に料理の世界へ興味を持ち、フランスに渡ったオーナーシェフの光安北斗さん。全くの未経験にもかかわらず、パリの〈Passage 53〉の佐藤伸一さんに願い入れ、店の立ち上げから2年間勤務。さらにブルックリンにあった話題店〈Battersby〉で働くなど7年間の武者修行から戻り、代々木八幡〈PATH〉へ。3年働きシェフを務め、独立を果たした。

読書家の一面を持つ光安さん。店内には文学全集や絵本も並ぶ。

 扱う素材の多くは、天草、佐渡など実際に現地を訪れて出会った生産者から届く。それらを、例えばイカと豚の内臓を組み合わせるといったフレンチのセオリーを踏まえつつも、完成した料理は新鮮さを放っている。

【桜マスと紅芯大根のセビチェ】紅芯大根とライムやレモンの果汁、イタリアの魚醤「コラトゥーラ」を混ぜたもので、佐渡から届いた桜マスを和えて。仕上げに振りかけた黄色い粉末は、寒ブリを自家熟成させた際に削いだ表面の身を乾かしたもの。「食材を無駄にしたくない」という光安さんの思いが生んだ、名もなきパウダーだ。1,760円。

【イカとブーダンノワールのリゾット】イカスミのリゾットを煮るベースのスープに、ブーダンノワールを混ぜている。イカと内臓の組み合わせは、バスク料理がヒント。焼いたスルメイカや削った生カリフラワー、フキノトウのフリットを添えて。3,080円。

【チキンハムと甘エビのドレッシング】しっとりと仕上げた鶏ハムに合わせたのは、アメリケーヌソースの技法で味のベースを作ったドレッシング。甘エビの頭や殻を焼いて、旨味やコクを凝縮させている。さりげないが、手をかけた一品。1,320円。

天井に渡した太い梁は、東北の古民家で使われていたもの。

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unepincée

電話:03・5561・2939
営業時間:17時30分〜24時LO。
酒:グラスワイン900円〜。ボトルワイン4,800円〜。ビール700円〜。
価格:おつまみ900円〜。前菜1,600円〜。主菜3,800円〜。デザート900円〜。
席数 :カウンター10席。テーブル1卓4席。

東京都港区東麻布2−19−2 酒井ビル 1F。日曜休、不定休。交通:都営大江戸線赤羽橋駅から徒歩6分。2019年12月に開店。メニューはアラカルトが基本。ケークサレなどのおつまみ的一品や締めのリゾットも揃え「しっかり召し上がらずとも、ワインとちょっと一品、でも気軽に来ていただけたら」と馬堀さん。カウンター中心ながら1卓だけあるテーブルからは、東京タワーを望める。

willo'wisp

電話:03・5738・7753
営業時間:18時〜23時LO。
酒:グラスワイン990円〜。ボトルワイン6,930円〜。ビール990円〜。
価格:おつまみ550円〜。前菜1,760円〜。主菜3,080円〜。デザート770円〜。
席数 :カウンター8席、テーブル4卓8席。個室2卓8席。

東京都渋谷区幡ヶ谷1−33−2。月5回不定休。交通:京王新線幡ヶ谷駅から徒歩1分。2020年2月に開店。休業日は、前月の第3週にInstagramで告知。多種多様な器の中には、シェフのお母さんのコレクションも。また、光安さん自身も器好きで、地元・大分の小鹿田焼や生産者を訪れた際に出会った佐渡のガラス作家・戸田かおりさんの「パート・ド・ヴェール技法」の器などを組み合わせる。

掲載した価格はすべて税込みです。

photo/
Shin-ichi Yokoyama
文/
小石原はるか

本記事は雑誌BRUTUS914号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は914号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.914
いつか旅に出る日。(2020.04.15発行)

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