【素材重視の中華】慈華/みこころ 無添加チャイナ935

グルマン温故知新

No. 913(2020.04.01発行)
犬がいてよかった。

素材重視で体にも優しい、次世代型中華料理の登場。

このところ中華料理の勢いがグングン加速する中、素材重視でおいしく、通い続けたい新店がお目見え。“無添加”に踏み切った神保町の実力派シェフと、素材ありきの姿勢に大きくシフトしたベテランシェフ。それぞれの強みを個性に、中華料理も新時代に突入へ。

『慈華 ●外苑前』国産食材で伝統の古典料理を現代版にアレンジ。

 店舗の老朽化に伴い閉店した〈麻布長江 香福筵〉のオーナーシェフ田村亮介さん。新店では食材を慈しみ、素材の持ち味を尊重する方向へシフトした。

景徳鎮の流れを汲む有田焼の器にもこだわった田村さん。

 千葉、石川、香川など日本各地から産直される有機野菜。長崎・五島列島のハタやクエ、島根のナマコ、和歌山のサワラ、函館の噴火湾からはボタンエビが登場する。「普通の食材でもおいしくするのが中華料理。それなら選りすぐりの食材を使えばもっとおいしくなる」というのが田村さんの考え。20年以上前から化学調味料不使用、「素材の持ち味を超したくない」と味つけも最低限にとどめる潔さ。

 ガツ(胃袋)の詰め物や大ハマグリを彩る翡翠、澄ましスープの清湯など、伝統的な中華の技法とモダンな盛り付けで古典と現代を結びつける。

「四川料理は24の味つけがありバリエーションがつけやすい。コースは淡い味の前菜から刺激的な味わいの主菜と、メリハリを効かせています」と太鼓判。

【千葉県産大蛤の翡翠仕立て】肉厚でプリプリとした大ハマグリは酒蒸しに、下には極細で軟らかな卵麺を。ホウレン草と卵白のペーストを低温の油に散らしながら揚げて、ゆでて油抜きした翡翠の粒を透明な清湯スープに浮かべて。穂紫蘇がアクセントに香り立つ、春らしい組み合わせ。料理はすべて夜のコース15,000円から。

【前菜盛り合わせ】豆腐干とセリのネギ油和え、菜花のカラメル焼き、北海道余市のあん肝ねっとり仕立て、フォワグラとナツメのテリーヌ、よだれ鶏など9種。手前から順に上へ食べ進むことで「運気が上がる」という験担ぎの皿。

【ジャージー牛の四川風スパイス炒め】リブロースを塊のまま火入れ。唐辛子、クミン、フェンネル、ニンニク、ショウガ、豆豉、豆板醤などのオリジナルスパイスで炒めて。仕上げに茶葉でスモークし、香りづけ。しっとりジューシーな味わい。写真は2人前。

テーブル間隔もゆったりと、シックなインテリアを基調にした店内。

『みこころ 無添加チャイナ935 ●神保町』自家製発酵調味と醬でひた走る、無添加街道。

〈トゥーランドット游仙境〉〈銀座芝蘭〉等の名店を経て、四川省成都でも腕を磨いたオーナーシェフの井上貴士さん。化学調味料不使用の“無添加”に目覚めたのは修業時代。無添加を試してみたまかないが好評で、「手応えを感じた」という。

「店名935の由来は直接僕に聞いてください(笑)」と、井上さん。

 無添加の場合、素材の味がストレートに伝わるだけに、仕入れは入念。豊洲市場に足を運んでは鮮魚を目利きし、無農薬有機野菜を取り寄せる。味のベースは、濃度の層で使い分けるスープ1種類のみ。手作りでも調味料は最低限に抑え、手間のかかる自家製醬が味の決め手に。

 極め付きは、本場四川仕込みという油の使い方。使用量と火加減、色と音の変化も見逃さず、味も食感も格別の仕上がりに。料理はどれも塩味、油は控えめなのに、旨さの余韻は長く、深く。食後感の軽さったらない!

 酒もいいけれど、中国茶にめっぽう強いマネージャー吉田正洋さんセレクトのお茶をぜひ。ノンアルでも旨さに酔えます。

【豚肉の発酵唐辛子 辛味炒め】1ヵ月かけて発酵させる自家製唐辛子ペーストで豚肉、セロリ、キュウリ、レンコン、キクラゲを炒めて。清々しいショウガの香りがたまらない。油とペーストが綺麗に分離しているのは、素材が油を吸収しておらず、うまく炒められた証拠。本場・四川の料理人も認めたというスペシャリテの一つ。1,800円。

【鯛と蟹の清湯スープ】食べ終わるタイミングまで逆算して火入れする鯛、蟹、カブ、シイタケ、干し貝柱など。塩は味を調える程度。ほぐした具から出るだしと旨味たっぷりのスープを味わうため最後の一口が最も美味。7,000円のコースから。

【担々麺】麺も無添加にこだわり、池袋〈山口や製麺所〉オリジナルの無かんすい麺を使用。ゴマの味と香りを一番に立たせ、ミツカン《純酒粕酢 三ツ判山吹》でくどさがない、さっぱりとした、キレのある味わいに。1,200円。

白を基調にみこころの書を掲げた明るいトーンの店内。

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慈華/いつか

電話:03・3796・7835
営業時間:17時30分〜21時LO(金・土・日・祝11時30分〜13時LO、18時〜)。
酒:ビール900円、グラスシャンパン1,500円〜、中国茶1,000円〜。
価格:ランチコース6,000円〜、ディナーコース15,000円〜。
席数 :テーブル5卓20席、個室1室4〜8席。

●東京都港区南青山2−14−15 五十嵐ビル2F。月曜・第2・第4日曜休、火曜〜木曜の昼休。サービス料10%、個室使用時は15%。交通:東京メトロ外苑前駅4a出口から徒歩3分。2019年12月9日オープン。昼夜ともに前菜、点心、海鮮、肉、デザートで構成するコースのみ。ランチにはフカヒレを含む約8品の10,000円コースもあり。ディナーコースは約9品23,000円、約10品30,000円もおすすめ。

みこころ 無添加チャイナ935

電話:03・5577・2822
営業時間:11時〜14時LO、17時〜21時LO。
酒:生ビール750円、中国茶900円〜、甕だし紹興酒700円〜。
価格:ランチコース3,500円〜、ディナーコース7,000円〜、アラカルトあり。
席数 :テーブル4卓16席、個室1室4席。

東京都千代田区神田小川町3−22 細野ビル2F。日曜・祝日休。ディナーのみサービス料5%。交通:東京メトロ神保町駅A5出口から徒歩6分。2019年11月22日オープン。ランチコース3,500円・5,000円(共に6品)。アミューズ、前菜、スープ、野菜、海鮮、肉料理、食事、デザート、中国茶で構成するディナーコース7,000円・10,000円・13,000円・20,000円(3日前からの要予約)。

photo/
Hitoshi Okamoto
文/
粂 真美子

本記事は雑誌BRUTUS913号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は913号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.913
犬がいてよかった。(2020.04.01発行)

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