ライフスタイル

女はいくつになっても女ですし、それなりの面白さがある。| 吉行和子

TOKYO 80s

No. 913(2020.04.01発行)
犬がいてよかった。

吉行和子(最終回/全四回)

 アングラに移って後悔はしませんでした。どんな役でもおじけづかないで立ち向かっていく力がついたのは、早稲田小劇場で鈴木忠志さんに怒られながら受けた洗礼のおかげです。それから随分経って金八先生をやって。脚本をお書きになった小山内美江子さんから手紙をいただいてね。「民藝で真面目にやっていたあなたが、いま見るとめちゃくちゃだ」「もう一度、初心に戻ってくれませんか?」と。民藝の殻を破りたくて、あばずれの役とか悪い役を好んでやっていましたから(笑)。どうなっていくのだろうと、心配してくださったみたいです。長い間、テレビも映画もやらせてもらいましたが、舞台を続けていたのは民藝をやめたときに、テレビや映画に出たいからだと言った人がいて。それが悔しくてね(笑)。どうして舞台に惹かれるのか、特に一人芝居をやるとよくわかるんです。大勢のお客さんを前に、絶対に負けないと立っているのはすごいエネルギーですよ。だからパワーが落ちる前にやめないとまずいぞって。ちょうどいい機会があったので、7、8年前にスパッとやめましたけどね。若い頃は50歳より上のことは考えられなかった。70歳からは年をとった役ばかりでしたが、去年公開された『雪子さんの足音』はまったく違いました。雪子さんは70代のおばあさん。下宿している男の子を気に入って、尽くして尽くして嫌われて、出ていかれちゃう、とっても面白い役。女の人は「わかるわ」って言うんですが、男の人は「怖かった」という人が多い(笑)。年をとると、優しいおばあさんとか意地悪なおばあさんとか、もう役割が決まっちゃうんですよね(笑)。雪子さんにはちゃんと彼女の女としての人生が描かれていて、満足しました。日本の男の人は年をとった人に無関心だと思うのね。私が言いたいのは、女はいくつになっても女ですし、それなりの面白さはあるんだから、どうか見つけ出して、面白い役を書いてくださいってこと。この年でもやれる役をいただけたら、やりながら死んでいきたい。人生を振り返るとどうだったか? 嫌なことを聞かれたわね(笑)。本当にまあ自分勝手に生きてきました。人のために無理したことはない。私の敵は病気だけでしたから、それと折り合いをつけながら、病気と2人で来たって感じ。これからも楽しいことだけ見つけながらやっていきますよ。十分、幸せです。(了)

ライフスタイルカテゴリの記事をもっと読む

吉行和子

1935年生まれ。女優。映画『雪子さんの足音』では、ある老嬢の愛のかたちを妙演。

PHOTO/
SHINGO WAKAGI
TEXT/
KUNICHI NOMURA
HAIR&MAKE/
JUNKO SHIMIZU
EDIT/
HITOSHI MATSUO

本記事は雑誌BRUTUS913号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は913号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.913
犬がいてよかった。(2020.04.01発行)

関連記事