エンターテインメント

宮藤官九郎が語る、がまんと表現について。

BRUTUSCOPE

No. 913(2020.04.01発行)
犬がいてよかった。

脚本家、役者、バンド、劇作家、演出家……様々な活動のなかで自由でいられる理由。

宮藤さんはあらゆる活動をされていますが、なかでも、三宅弘城さん、よーかいくんとのショートコアパンクバンド〈画鋲〉と1996年から作・演出をしている舞台〈ウーマンリブ〉シリーズは、やりたい放題やっておられる印象です。
宮藤官九郎
そうですね(笑)。芝居の方が頭は使ってますけど、〈画鋲〉は自由ですね。その2つは、最初にアイデアを発想してから、お客さんに見せるまでがダイレクトな気がします。大河ドラマなんかは、発案していた頃を忘れちゃうくらい時間が経ってから放送されてますから。
一般に商業的で整えられたエンターテインメントが増えているなか、なぜそれほど自由でいられるのでしょう?
宮藤
ああ。たしかに「よそ行き」(の表現)が多いかもしれないですね。昔はもっと自由でしたよね。『ガロ』があった頃は原稿料なしの漫画誌に掲載されることがステータスだったなんて、いまでは考えられないけど、当時は疑問に思わなかった。幸せな時代でしたね(笑)。僕も、大人計画の舞台がお金にならなかった頃をギリギリ知っているんで。芝居やって生活できるなんて思っていなかったところがスタートというのは大きいかもしれません。だからチケットの値段が決まると、「どうしよう、ちょっと高いな」といつも思います(笑)。でも、セットやら、それなりにお金かかっているから、しょうがないんですけど。
新作舞台は『もうがまんできない』。このタイトルにしようと思ったのはなぜですか?
宮藤
まず、都会の片隅の屋上みたいなところに集まっている人たち、というシチュエーションから考えました。そこで、解散しそうになっているお笑い芸人の、ずっとがまんしていたけど、もうがまんできないという関係を思いつきました。そこから、そういう倦怠期を迎えた人たちの話を絡めようかなと。いまは、なんでも手に入るし、インターネットでなんでもできるじゃないですか。僕はやってませんが、SNSで誰とでもつながれる。なんでもできるからこそ、がまんをすることがみんなストレスになっているんじゃないかなと思うんです。
宮藤さんは、いまがまんしていることは何かありますか?
宮藤
芝居に関係ないことだったらいっぱいありますけど、芝居に関していえば、10年前だったら怒っていたなというようなことも怒らなくなりました(笑)。前回『七年ぶりの恋人』(2015年)という芝居の出演者が全員劇団員だったので、ギスギスするのはいやだなと思って、「怒らない」というのをテーマにしたんです。セリフを覚えてこない人がいたんですが、覚えてほしいなと思いながら怒らず、繰り返し稽古した。それが今回も続いていて、皆に平等に怒ってないです。今年50歳ですから 無理して完璧を目指すのではなく、その人の面白いところだけ見てもらえばいいやと切り替えるようになりました。本番近づいてきたら、がまんできなくなっているかもしれないけど。
どの仕事に関しても、そんなふうにがまんできるようになったのですか?
宮藤
そんなことないです。ドラマの現場などではいまだに、本気で闘うときはあります。こうじゃなきゃいけない、譲らず頑張らなきゃというときがあるんです。
ラジオでは「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」という愚痴のコーナーがありますが、ストレスのはけ口は必要だと思いますか?
宮藤
最近特に思うんですが、気晴らしといっても、やることをやっていないと気も晴れないんですよね。僕は、次の作品のことを考えているときが一番気晴らしになります。無責任に面白いことを考えればいいから。そうやって、結局、仕事以外のはけ口はなくなっちゃいましたね。
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宮藤官九郎

くどう・かんくろう/1970年宮城県生まれ。脚本家、監督、俳優、ミュージシャン。91年から大人計画に参加。監督作に『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』(16年)など。10月にはユニット〈ねずみの三銃士〉『獣道一直線』の脚本を手がける。

photo/
Aya Kawachi
text/
Tomoko Kurose

本記事は雑誌BRUTUS913号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は913号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.913
犬がいてよかった。(2020.04.01発行)

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