ファッション

大好きなワークウェアを自ら着て、 “カッコいい”を追求する現役70歳。

From Editors

No. 912(2020.03.16発行)
WORK WEAR 働く服は美しい

 ちょうど1年前。2019年春夏ファッション号で、「ブルータス繊維新聞」と銘打って、「サステイナブル」という言葉と真面目に向き合った。限られたページで表現するにはあまりに大きなテーマだったし、決して100点満点ではなかったようにも思う。ただ、その時は絶対に取り上げなければいけないテーマだと考え、何かに突き動かされるように取り組んだ。

 いつからか展示会に行けば、「サステイナブル」はアイテム紹介の枕詞のように語られるようになった。その会場ではプラスチックカップで飲み物が配られ、クリアケースに入ったプレスリリースはエコバッグに入れて配られた。一体全体何がしたいの? と思ってしまう。取り組む姿勢が大事なのも分かっている。でも、モヤモヤしたものが頭の片隅から離れない。

 今回の特集で〈HAKUÏ〉デザイナーの小野塚秋良さんとお会いして、話をしているうちに、頭はみるみるクリアになった。〈ZUCCa〉時代から並行してレストランやホテル向けにユニフォームを作り続けて30年。売れない服を過剰に作るのではなく、誰もが欲しがる服(在庫)を切らさない商売。資材の調達から流通まで無駄はない。健全そのものである。確固としたデザイン哲学と、地球にストレスフリーな物作りで、ビジネスも成功を収めている。本当のサステイナブルってこういうことじゃなかったっけ?

 発想の転換というより、小野塚さんご自身は極めて自然体なのだ。底抜けに明るくて、毎日が楽しそう。本誌の写真を見ていただければ一目瞭然である。最高のワークライフバランスを確立している小野塚さんが作るワークウェアは、カッコいいに決まっているのだ!

年間に新しくデザインするのは、せいぜい10型程度。良いデザインは定番として残し、在庫し続けるという。あの、マルタン・マルジェラやジャン・トゥイトゥと同時期にデビューし、活躍し続けるデザイナーでありながら、自らを職人と呼ぶ奥ゆかしさにも人柄が滲む。

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本誌担当編集/
鮎川隆史

本記事は雑誌BRUTUS912号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は912号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.912
WORK WEAR 働く服は美しい(2020.03.16発行)

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