エンターテインメント

【4月3日発売】内省的で美しいサンダーキャットの新作。

BRUTUSCOPE

No. 912(2020.03.16発行)
WORK WEAR 働く服は美しい

リラックスして語る制作秘話と、男の身だしなみ。

 サンダーキャットが、大ヒット作『Drunk』(2017年)に続く、5枚目のアルバムを発表する。前作から3年の間、自身のツアーはもちろん、フライング・ロータスやトラヴィス・スコット、マック・ミラー(R.I.P)らの作品やライブに参加。「地元(LA)の友達に誘われただけだよ」と言うけど、今ではみんな世界中のフェスなどに、ヘッドライナーとして出演しているツワモノばかり。ところが、写真の通り、サンダーキャット自身は“オタク”なまま、変わりない。

「基本的に、みんな昔からの友達なんだ。カマシ・ワシントンは『ストリートファイターⅡ』の腕を競い合った小学校の同級生。フライング・ロータスは『AKIRA』や『攻殻機動隊』とか、やたら日本のアニメや漫画が好きでね。それから、新作でラップしてくれたチャイルディッシュ・ガンビーノも超オタクだ。みんなでスタジオに集まる時は、最近ハマっているゲームやアニメのこと、ツアー先でゲットしたグッズの自慢から始まる」

 ドラマーのロナルド・ブルーナーを父に持つ音楽一家に生まれ、小さな頃から演奏家として育ったサンダーキャット。ジャズ・フュージョンからの影響で、6弦ベースを奏でる、いわゆる超絶技巧のテクニックの持ち主だ。しかし、11年のソロデビュー以降は、シンガーソングライターとしての才能も開花しており、新作『It Is What It Is』では、全編自身で歌っている。ゲストが多い分、カラフルに聞こえる楽曲が並ぶ、本人にとってはパーソナルな作品だという。

「この2年間で、実は人生で大切な人を2人も失ってしまったんだ。それがショックで、しばらく休みを取って、ゆっくり自分と向き合う時間を持つようにした。メロディと歌詞をゆっくりと書き、友達が集まってきて、自然にセッションが始まって。だから、これまで以上にじっくり曲を作り込むことができた。それから、前作ではマイケル・マクドナルドやケニー・ロギンスといった、オレのアイドルに参加してもらったんだけど、新作にはスレイヴというファンクバンドに在籍したドラマーのスティーヴ・アーリントンに参加してもらうことができた。超ファンキーなルックスの人で、初めて会いに行った時なんか“ルックスと違う性格の人だったらどうしよう……”とかビビりながら行ったんだけど、すごくいい人で安心したよ。スティーヴがオハイオ在住という以外、あとはLAに住んでいる仲間と曲を制作して。いい時間だった」

 確かにアルバム全編が美しく、儚い。8曲目「Overseas」、続く「Dragonball Durag」で聴かせてくれるファルセットボイスのハーモニーは、70年代のフィラデルフィア・ソウルのようにエモーショナルだ。ちなみにドラゴンボールって?

「鳥山明先生の作品さ。オレとフライング・ロータスはとにかく大ファンで、2人でステージに立つ時なんか亀仙流の道着だったよ。そんなドラゴンボールがプリントされた、夢のようなドゥーラグがあって、それについて歌った曲さ」

 ドゥーラグって、一体なんだろう。

「遡れば19世紀からあるもので、黒人のアフロヘアを押さえてウェーブをつけるためのネットのようなものだ。ラッパーがストッキングのようなものを頭にかぶっているだろ? あれのことさ。俺たちの間では当たり前のものだったけど、エミネムが巻くようになってから、白人にも浸透してさ。映画『ナポレオン・ダイナマイト』(04年公開時の邦題は『バス男』)でも、白人のキモオタがドゥーラグを巻いて、初めての彼女をゲットする。それから、サッカー選手のデイヴィッド・ベッカムは、チャールズ皇太子と面会している時に巻いている。オレ自身だって、一番かわいい彼女と付き合った時は、ドゥーラグを巻いていたものさ。ドゥーラグは男の秘めたスワッグ(カッコよさ)を引き出すアイテムだと思うんだよね。妻・ヴィクトリアをゲットしたり、チャールズ皇太子と会えたりしたのは、彼自身の魅力からじゃない きっとドゥーラグを巻いたベッカムだからだ(笑)」

 取材から数日後、アルバムの先行として「Dragonball Durag」が配信された。なんとジャケットには、自慢のドゥーラグを被ったサンダーキャットの姿が。はたして、来日公演でもその勇姿を見せてくれるのだろうか。とにかく、その美声と超絶演奏が観られるのが楽しみだ。

「ドゥーラグを着けて集まってくれると嬉しい。いつもサポートしているファンのみんなに感謝しているよ。それから、秋葉原にいるオレのブラザーたち! ドゥーラグを着けて、3次元でも彼女をゲットしてほしい。心から願っているよ」

先行配信された「Dragonball Durag」。ドラゴンボールがプリントされたドゥーラグを着け、ご満悦の様子

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『It IS What It IS
フライング・ロータス主宰の〈Brainfeeder〉から、4月3日発売。また、来日公演は4月21日大阪BIGCAT、22日名古屋CLUB QUATTRO、23日東京 THE GARDEN HALLを予定。チケットの詳細はhttps://www.beatink.comへ。

サンダーキャット

1984年ロサンゼルス生まれ。16歳でスイサイダル・テンデンシーズに参加。2011年に『The Golden age of Apocalypse』でソロデビュー。ケンドリック・ラマー『To Pimp a Butterfly』に参加以降は、常に注目の的

photo/
Naoto Date
text/
Katsumi Watanabe

本記事は雑誌BRUTUS912号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は912号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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