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【4月1日発売】会田誠が語る、岡村靖幸の4年ぶりのニューアルバム『操』ジャケット制作秘話

BRUTUSCOPE

No. 912(2020.03.16発行)
WORK WEAR 働く服は美しい

会田誠が描く、岡村靖幸という「光」。

音楽界の奇才が出した「お題」に、美術界の鬼才が出した「答え」とは。

岡村靖幸の4年ぶりのニューアルバム『操』が4月1日に発売される。ジャケットを描き下ろしたのは現代美術家・会田誠。2013年からコラボレーションを続け、今回で3作目となる。会田誠が制作秘話を語った。


 今回もジャケットをお願いしたいと、麻布の喫茶店に呼び出されまして。コーヒーを飲みながら話を聞きました。「アルバムタイトルは『操』にしようと思います」と、岡村さんは言ったんです。「最近、操という言葉がとっても大事だと思うようになりました」と。なぜそう思うのか、その理由を、岡村さんの口から聞いたわけですが、前回の『幸福』のときもそうでしたが、岡村さんの言葉はそうわかりやすいものではないんです。タイトルは明快ですが、かなりモヤモヤとした、ニュアンスたっぷりのことをおっしゃる。
「操」というと、僕は演歌の世界を思い浮かべるんです。貞淑といいますか、イメージで言えば、戦争時代、許婚の男が戦死してしまうも貞操を貫く女、みたいな。しっとりした世界が浮かぶわけです。でも、岡村さんが意図するところはそうではない。「操」にはもっと深い意味があると。変わらない心、美しきもの、そういう意味もあるんです、と。
 家に帰ってから、黒人の少女と日本人の少年が指切りをしている絵が浮かびました。ほんの1秒ぐらいでポッと出てきたんです。真横顔の構図でね。岡村さんがモヤモヤと思う、深い意味には辿り着かなかったかもしれません。でも、僕が見つけた答えはそれでした。
 岡村さんは真面目な方なんです、とっても。比べると僕は不真面目な人間だなとよく思うんです。岡村さんの方が、トータルには遊んできただろうし、私生活も派手だっただろうし、天国と地獄も見てきたと思う。ゆえに50歳を越えて、「操が大切だ」という心境に至ったのかなと。僕と岡村さんは同世代で、高校時代は同じ新潟で育っているんです。高校生の頃からソングライターとして頭角を現した彼に対し、僕は平々凡々、その後も大した波風もなく、「操」について考えることもなく50歳を過ぎたわけです。ですから、「会田さんにとっての操とは?」なんて聞かれると、嫌な汗が出てくるばかりでね(笑)。
 僕には毒のようなものや、ネガティブな部分があるんです。Twitterでも口喧嘩をよくしますけれども(笑)、現代美術をやるにおいては、そういったものが求められる部分がありますから、自然とそうなっていくところもあるんです。ただ、いままで岡村さんのジャケットを3作描いてきて、僕の中で、岡村さんの絵を描くという行為は、僕の光の部分だなと思うんです。善と光の領域といいますか。それが心の救いにもなっているんです。

『操』

「日本人と黒人の組み合わせは、岡村さんが子供の頃にロンドンで暮らしていた経歴から。2人の皮膚に光が当たったときの色に凝りました」。2019年制作。

『幸福』

作品名は「ゆず湯」。「アメリカでは父と娘が一緒にお風呂に入るだけで訴えられる。それも馬鹿馬鹿しいなと思って描いた部分もあります」。2015年制作。

『ビバナミダ』

キャンバスではなく紙に色鉛筆などで描いた作品。「デモテープの音を聴いたら虹やハイビスカスが浮かんできたのでそのまま描きました」。2013年制作。

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会田 誠

あいだ・まこと/1965年新潟県生まれ。現代美術家。絵画のみならず、写真、立体、パフォーマンス、インスタレーション、小説、漫画、都市計画を手がけるなど表現領域は国内外多岐にわたる。現在、美術界を舞台にした青春小説「げいさい」を『文學界』で連載中。

photo/
Katsumi Omori
text/
Izumi Karashima

本記事は雑誌BRUTUS912号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は912号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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