『「燕三条 工場の祭典」in Singapore』開催中。
「シンガポールは人々が行き交うアジア最大のハブに成長している国際都市ですし、今回は芸術アカデミーのキャンパス内で開催するので、ものづくりの未来を担う学生との交流も楽しみなんです」
そう語るのは「燕三条 工場の祭典」スタート以来実行委員会事務局を務める、鎚起銅器の老舗〈玉川堂〉の山田立氏である。
「燕三条 工場の祭典」は、金属加工をはじめとするものづくりの現場を紹介するイベント。今や燕三条の秋の風物詩と呼べるほどの存在となり、多くの人々を呼び込むことに成功している。TEN年代には日本各地で伝統技術にスポットを当てるイベントが誕生したが、その動きを牽引したのがこの工場見学&体験イベントだった。
そして成功の隠れた理由に挙げられるのが、海外への積極的なアプローチである。地域の活性化を考える時に大切なのは、言うまでもなく“いかに人を呼び込むか”。だが「燕三条 工場の祭典」では、“待ち”の仕掛けに工夫を凝らす一方で、海外への出展にも力を入れてきた。スタート翌年の2014年には早くもミラノデザインウィークに参加し、その後も台北、ロンドン、スイス・ランゲンタールと、世界各地で燕三条のものづくりを紹介してきている。海外でのイベントの来場者がその後、燕三条を訪ねるケースも少なくないという。
「私たちには、この燕三条で400年も連綿と受け継がれてきたものづくりの伝統を、いい形で次の世代にバトンタッチする責務があります。そのためには地域の活性化はもちろん大切ですが、燕三条で働く人たちに“自分たちは間違ってないんだ”という確信を持ってもらうことも重要なんです」
プロダクツが海外から注目されれば、職人の心には新たなプライドが芽生えるはず。匠の技が来場者の心を捉え、そのことで職人がさらなる研鑽へと向かう美しいサイクル。その成果を見られる燕三条での定例イベントは、10月1日〜4日に開催される。
『ROOTS OF METALCRAFT: Tsubame-Sanjo, Niigata, Japan』
〜3月22日、Nanyang Academy of Fine Artsで開催中。シンガポールを代表する作家を多数輩出するアカデミーで、燕三条のものづくりの歴史やプロダクツなどを展示。職人によるワークショップも。https://kouba-fes.jp
- text/
- Kaz Yuzawa
本記事は雑誌BRUTUS911号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は911号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。