アート

【3月13日〜15日上演】偉大な舞踊家、クルト・ヨースによる普遍的傑作の再上演。『緑のテーブル』

BRUTUSCOPE

No. 911(2020.03.02発行)
大阪の正解

舞踊という身体表現で受け継ぐ戦争意識の警報。

 近代バレエの最高傑作『緑のテーブル』。あのピナ・バウシュが師と仰いだ舞踊家のクルト・ヨースが、シュルレアリスム的な構成と振付をもって、戦争を苛烈に風刺した反戦舞踊だ。1932年の初演以来、世界各地でたびたび再演されてきた本作は、ヨース自らが各国に出向き振付指導を行ってきた。彼の引退後もその指導方針は実娘のアンナ・マーカード、その後任のジャネット・ヴォンデルサールへと受け継がれ、今も上演の際には厳格な振付指導が行われている。
 初演から90年弱が経ち、次第に戦争体験者が少なくなっている中、現代の観客や関係者たちは何を感じ、ダンサーたちは何を思い演じるのだろうか。現在、振付指導を担当しているジャネットに話を聞いた。

「“現実を突きつけられたような感覚が残る”という声が多く上がっています。残念なことに、戦争が抱える問題やその結末は世界共通です。戦争は、無益で、無意味なもの。その現実を伝えるダンサーたちは、何よりもまず、今世界で起こっていることに対する意識を持たなくてはなりません。各シーンの意図を知れば、戦争の実体験がなくとも、自分事だと捉えられるはずです」

 インターネットやSNSの普及で、生や死、人間関係における身体的な実感が薄れてきているように思う。しかし、それでも本作が伝え続けてきたメッセージは観る者の心に警鐘を鳴らすはずだ。私たちは戦争を現実として理解できているのだろうか? いま一度この問いを胸に、ヨースの傑作を目撃してほしい。

クルト・ヨースって?

1901年ドイツ生まれ(1979年没)の舞踊家、振付家。「美しいクラシックバレエの修練があってこそ、新しい表現主義舞踊が生まれる」という信念のもと、バレエ要素を取り入れたメソッドを確立。『緑のテーブル』を振り付けた後にナチスから逃れるためドイツを出る。終戦後はフォルクヴァンク芸術学校を共同創立し、ピナ・バウシュなど後進の育成に努めた。

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緑のテーブル

台本・振付:クルト・ヨース/作曲:フリッツ・A・コーヘン/舞台指導:ジャネット・ヴォンデルサール、クラウディオ・シェリーノ/ピアノ:小池ちとせ、山内佑太/出演:スターダンサーズ・バレエ団
3月13日15日東京芸術劇場プレイハウスで上演。

text/
Mami Hidaka

本記事は雑誌BRUTUS911号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は911号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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大阪の正解(2020.03.02発行)

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