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【話題の映画】『ミッドサマー』アリ・アスター監督が語る、映画的こだわり。

BRUTUSCOPE

No. 911(2020.03.02発行)
大阪の正解

2018年、呪われた血を受け継ぐ家族の悲劇を描いたスリラー『へレディタリー/継承』で、世界中の観客の度肝を抜いたアリ・アスター監督。彼の最新作『ミッドサマー』が公開中だ。描かれるのは、スウェーデンの人里離れたコミュニティで開催される“奇祭”を訪れた大学生たちが、身の毛もよだつ惨劇に巻き込まれる姿。今作について、監督に話を聞いた。

前作も今作でも、家族という関係の残酷な真実が描かれていると思いました。愛ではなく、血によって否応なく結ばれてしまう関係としての家族です。実際、『ミッドサマー』のコミュニティは、ネタバレになるので詳細は避けますが、背筋が凍るほど愛のない方法で家族を築こうとします。
アリ・アスター
愛があろうがなかろうが、血でつながってしまっているために、逃げられないのが家族です。どちらの作品にも、実は登場人物たちが愛のジェスチャーをするシーンはあるんです。しかし同時に、私がいつも描きたいと思っているのは、人間の振る舞いや意図に対しての疑念なのです。
通点という意味では、前作にも今作にも、人間が燃えるシーンがあります。
アリ
実は現在執筆中の新作の脚本の中にも、さらに言えば、頭の中で構想中の企画の中にも、やっぱり火のイメージが出てくるんです。無意識に書いてしまうので、なぜかということはもう少し考えてみないと言えませんが。ただ、あえて言うなら、古き人生を捨て、新しい人生へと踏み出す際の、浄化の象徴として使っているような気がします。そして何より、炎のモチーフは映画的なので、撮っていて楽しいのです。
今作はショッキングなシーンがてんこ盛りのスリラーではありますが、同時にユーモラスなシーンもあります。特にコミュニティの少女たちが『オースティン・パワーズ』の上映会をしているのには大いに笑いました。なぜ『オースティン・パワーズ』だったのですか?
アリ
ダークコメディのつもりで撮ったので、笑ってもらえて嬉しいです。物語とちぐはぐなのが面白いんじゃないかと思ったんです。私たちの住む世界とは別次元のような場所ですら、『オースティン・パワーズ』が観られているということが。ただ、あとで知ったのは、スウェーデンの子供たちにはあの作品が大人気だそうです。結果、文化的なジョークにもなりました(笑)。
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『ミッドサマー』

監督・脚本:アリ・アスター/出演:フローレンス・ピューほか/大学生のダニーは、恋人や友人と共に、スウェーデンの奥地の村を訪れる。太陽が沈まないその村では、“90年に一度の祝祭”が開催されるというのだが……。全国公開中。

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アリ・アスター

1986年生まれ。『The Strange Thing About the Johnsons』『Munchausen』『Basically』など、いくつかの短編を製作。ニューヨーク映画祭をはじめ数々の映画祭で上映される。その後、『へレディタリー/継承』で長編映画デビューを飾った。

photo/
Wakana Baba
text/
Keisuke Kagiwada

本記事は雑誌BRUTUS911号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は911号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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大阪の正解(2020.03.02発行)

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