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特色インキ作りは、機械よりも人の目と手が頼り。|浅見 博

本を作る人。

No. 910(2020.02.15発行)
キッチン
瞬く間に色を生み出す松下由広さん。
特色の色合わせに使う計器。インキデバイスと呼ばれる。

東京インキ 羽生工場長 浅見 博(最終回/全4回)

印刷の基本となる黄、紅、藍、墨のインキを重ねても表現できないニュアンスを湛えた色がある。熟練の技から生み出される、特色とも特練とも呼ばれる特別なインキの色作りとは。

東京インキ〉では特色インキも製造するそうですが、オフセットインキの4原色とは作り方が違うんですか?
浅見博
特色インキは、独特な色合いを表現するために個別の注文を受けて作られます。基本のオフセットインキが完成する前段階で取り分けられた黄、紅、藍、墨の4色と、特色専用に作る7色のベースインキを使って、色味だけでなく、どんな紙に刷られ、どんな加工が施されるのかなど、細かい使用条件に応じて設計していきます。指定された色相を実現するには、調色師の存在が欠かせません。
色を調える専門家ですね。
浅見
特色インキ部門の責任者はこの道30年の松下由広さん。指定された色の見本を肉眼で見てベースインキを選び、分量を測りながら調色するのですが、配合の比率を予測するのがまず難しい。ベースインキを合わせて攪拌し、分量を計測したら薄くのばして紙に転写。ドライヤーで乾かしてから、濃度や硬さを、そして透過光と標準光源の下で色相の確認をします。
光源を変えるんですか?
浅見
太陽光と蛍光灯の下では同じ色でも違って見えるでしょう? 条件によって色の見え方が変わるメタメリズムという現象があるので、光を変えて観測するんです。さらに、印刷されて紙に定着したときの色を予想しながら調整を重ねます。コンピューターカラーマッチングシステムも参考にしますが、厳密なところはやっぱり人の目と手で。分量を定めたら改めて比率を計算し、その値を基にして機械で配合を行います。(了)
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あざみ・ひろし/1964年生まれ。87年の入社から、オフセットインキにまつわる部署に33年間勤務しているアナログ人間。一般社団法人〈色材協会〉の理事も務めている。

写真/
森本菜穂子
文/
鳥澤 光

本記事は雑誌BRUTUS910号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は910号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.910
キッチン(2020.02.15発行)

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