アート

【〜3月1日】「a girl 3」 彫刻家・菅原玄奨が見せる「曖昧な実体」とは?

BRUTUSCOPE

No. 910(2020.02.15発行)
キッチン
《Dalmatian》

《Stranger(portrait)vol.3》

初の作品集発表を記念して、渋谷でサイトスペシフィック・アートを展示。

「“実在しているのに、実在していない”。東京の街で過ごしていると、そんな違和感を覚えることがある」と話すのは、東京都出身の彫刻家菅原玄奨。現在、初の作品集『GENSHO SUGAHARA '18, '19』の発表を記念した新作「a girl 3」を、SHIBUYA TSUTAYA 7Fにて展示中だ。
 菅原はこれまで、めまぐるしく変転する現代に感じてきた、実在の無機質さや曖昧さを、塑造彫刻で具現化する試みを行ってきた。実体を感じさせない“無機質さ”の表現に、“質感”で形象化する彫刻という手法を選んだのはなぜだったのだろう。
「写真や絵と違い、彫刻には触感的な感覚が強く加わります。大学で具象彫刻を学んでいた頃に、生まれ育った東京に抱いてきた無機質な感覚と彫刻との間に共通するものを感じました。手の感覚で“曖昧な質感”を作っていくことは、自分のリアリティを作品に反映するうえでの確認作業にもなっていると思います。写真や絵の中のイメージに触れることはできないけれど、彫刻はそれを実現できる。彫刻の物理的な性質は実在する曖昧なものへの説得力にも近いと思っています」
 これまで一貫して行ってきた、会場の“物質感”を排除した会場構成はせず、様々な物質が存在する商業施設の環境にそのままで展示をしている。また、「a girl 3」も会場の「渋谷」をテーマに新たに制作した。場所性を強く意識した展示は、菅原にとって初の試みだった。
「作品が主役となる“展示空間”にしすぎず、いかに作品を設置するかによって作品の“存在の曖昧さ”を際立たせています。渋谷は特に作品コンセプトと共通する部分の大きい街の一つでしたし、彫刻はもともと、パブリックスペースに置かれるものでもあります。作品集を発表するこのタイミングで、作品と場所との関係性を意識した展示を行い、今一度彫刻の原点に立ち返りたいと思ったんです」

アートカテゴリの記事をもっと読む

『GENSHO SUGAHARA '18, '19』

自身初の作品集。「私の作品は平面上で見るとCGといわれることも少なくありません。平面でいかに表現するか、カメラマンやデザイナーと検討を重ねて制作しました。“紙”というメディアを介して、彫刻を楽しんでいただければ幸いです」。SHIBUYA TSUTAYA/1,980円。

「a girl 3」

舞台・展示照明家の伊藤啓太が会場の照明を担当。展示環境の“物質感”を排除することで作品コンセプトを際立たせてきた菅原にとって初の試みである、光を利用した“不安定な存在感”の演出にも注目。左/《Stranger(portrait)vol.3》。右/《Dalmatian》。〜3月1日、SHIBUYA TSUTAYA 7F(東京都渋谷区宇田川町21−6☎03・5459・2000)で展示中。10時〜翌2時。無休。

photo/
Soichiro Ishida
text/
Konomi Sasaki

本記事は雑誌BRUTUS910号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は910号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.910
キッチン(2020.02.15発行)

関連記事