エンターテインメント

【2月21日公開】 『恐竜超伝説 劇場版 ダーウィンが来た』

BRUTUSCOPE

No. 910(2020.02.15発行)
キッチン
デイノケイルス"ニコ"。円状に並んだ卵が発見されたことから、中央に身を置き抱卵をしていたと考えられている。母性を描いた象徴的なシーン。
モササウルス"ジーナ"。太古の海の王者ともいわれている凶暴な爬虫類。作品終盤では赤ん坊を出産。大きな胎児の化石が発見されていることから、胎内で子供を育てたのではと考えられていることを受けての表現。
トロオドン"ホワイト"。厳しい北極圏の大地で知恵を働かせて生き抜いた。

僕らが知ってる"恐竜"は、もう古いかもしれない?

仮説の"揺らぎ"を攻めた、古生物学のロマンが満載。

 響き渡るけたたましい咆哮。逃げ惑う恐竜に容赦なく噛みつくティラノサウルス。恐竜映画と聞いて私たちが思い浮かべるのは、やや血なまぐさいスペクタクル作品が多いのでは? もしそうだとしたら、本作品は"恐竜映画"観、ひいては恐竜に対する古典的なイメージをアップデートすることになるだろう。

 まず驚くのが「色」。主要キャラクターの一体であるデイノケイルスの"ニコ"は、なんとピンク色である。さらには、水面に虫を落とし、寄ってきた魚を獲るトロオドンという知性に富んだ恐竜も登場する。この世界はナンダ⁉ と思わず前のめりになる映像を手がけたのは、NH
K『ダーウィンが来た』などを制作してきた植田和貴監督。

「本作に出てくるのはCGの恐竜ですが、『ダーウィンが来た』と同様に、動物ドキュメンタリーの視点で作ろうと思いました」

 言葉の通り、恐竜たちは生き生きと画面の中を動き回る。その様子を覗き見している感覚は、自然ドキュメンタリー番組『プラネットアース』を見ているときの没入感と近い。精緻に作り上げた恐竜の姿や背景など、高度なCG表現によるリアリティもあるが、その恐竜たちを"動物"
たらしめているものは何なのか?

「本作で"ニコ"は崖から落ちたり、異性に突然出会ったりします。野生動物は、ハプニングと隣り合わせで生きているんですね。以前、私がカモの番組を作っていたときに、雛が親鳥からはぐれてしまった瞬間に出会ったことがあるんです。そのときの親鳥の形相はものすごいもので
……。動物番組はそうした予期せぬ動きを追ってドラマにしていくので、本作においても同様の哲学で恐竜たちを描いているのです」

『恐竜超伝説』は、「もしかしたら、こんなこともあったかも?」という、仮説とも新説とも言えない "揺らぎ"の部分にも果敢に踏み込んでいるという。監修を務めた古生物学者の小林快次教授に"揺らぎ"をいかに取り入れたかについて尋ねると、「研究者としては、保守的に行きたかったのですが」と苦笑いをする。

「今回の私の仕事は、ギリギリまで攻めたいという監督にどこまでOKを出すかでした。例えば、パキリノサウルスに毛を生やすかどうかについては非常に悩みました。多くの学者からは"それは認められない"という返答があるからです。ただ、その道の権威の方からOKが出たので、それならば大丈夫だろうと判断を下したこともありました(笑)」

"揺らぎ"を描くことにこそ古生物番組の醍醐味があると考える植田監督は、小林教授の案内のもと、ローラー作戦のように多くの学者に会いに行ったという。

「現在、一部の恐竜には羽毛が生えていて、なかには鳥にかなり近いものがいたことが判明してきました。それなら色鮮やかな羽毛を生やす恐竜もいたのではないかと、思い切って色をつけてみようと思ったんです」

 彩色の際に植田監督が参考にしたのは、現代の鳥類。デイノケイルスは水辺に生息していたのではないかという推測から、フラミンゴやベニヘラサギのピンク色を。ザナバザルという恐竜は、ゴシキインコを参考にカラフルにしたそうだ。

「さらに、先ほど述べたカモのように、鳥に見るドラマを盛り込むことができるのではと。愛や母性ですね」

 見どころの一つに、ニコともう一体のデイノケイルスによる求愛のダンスがある。このシーンは一番議論の的になったそうで、鳥類学者の川上和人氏にも意見を求めたという。

 小林教授は語る。「作中には、少し飛躍した表現もあるかもしれません。ですが、"それが間違いか?"と研究者に尋ねても、答えられないんです。なぜなら今の生き物だって、骨格だけを見ても、実際の生態は想像を超えているものも多いですから」

 この映画を全部信じてほしいとは思わない、と教授は続ける。子供たちだけでなく、大人や研究者たちに、恐竜に関心を持ってもらう入口となる作品であってほしいのだと。
「こうだったりして?」という想像力が、人々を惹きつけ、科学を前に進めてきた。本作品も、観た人に刺激を与え、恐竜世界をさらにロマン溢れるものに彩ってくれるはずだ。

当時の"恐竜観"と見比べると面白い映画3選。

『ジュラシック・ ワールド』

舞台は恐竜テーマパーク〈ジュラシック・ワールド〉。人気アトラクションの一つがモササウルスのショーだ。水中から勢いよくジャンプしてサメを丸呑みにするシーンは圧巻だが、ちょっと大きすぎるような気も……。20
15/米/NBCユニバーサル・エンターテイメント/1,886円(BD)/監督:コリン・トレヴォロウ。

『ウォーキング with ダイナソー』

主人公は、『恐竜超伝説』にも出てくるパキリノサウルスの"パッチ"。本作のパキリノサウルスは大きな角も、羽毛もない点に注目を。日本語吹き替え版の声優は、木梨憲武が担当。2013/英=米=豪/20世紀フォックス ホーム 
エンターテイメント 
ジャパン/1,905円(B
D)/監督:バリー・クック、ニール・ナイチンゲイル。

『ドラえもん のび太 の恐竜2006』

1980年に上映された同作のリメイク版。物語はのび太が首長竜・フタバスズキリュウの卵を発掘したことから始まるが、近年の研究によると、首長竜はお腹の中で赤ん坊を育てたのではないかといわれている。この春には『ドラえもん のび太の新恐竜』も公開。2006/日/ポニーキャニオン/2,000円(DVD)/監督:渡辺歩。

エンターテインメントカテゴリの記事をもっと読む

『恐竜超伝説 劇場版 ダーウィンが来た』

最新の研究で次々と明らかになった新しい恐竜世界を、NHKのVFXチームと日本のトップクリエイターが創り上げた最高傑作。映画館のスクリーンでは超リアルな恐竜映像が楽しめる。2月21日、全国公開。

text/
Ryo Hasumi

本記事は雑誌BRUTUS910号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は910号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.910
キッチン(2020.02.15発行)

関連記事