アート

【2月27日発売】ポール・オースターによる新作長編小説『サンセット・パーク』を翻訳家・柴田元幸が語る。

BRUTUSCOPE

No. 910(2020.02.15発行)
キッチン
悲劇をきっかけに、心を閉ざして生きるマイルズ。ひょんなきっかけでブルックリンにある廃屋で同世代の若者たちと暮らすことになり  。2月27日発売。新潮社/本体2,200円。*カバーは変更になる場合があります。

ポール・オースターが愛され続ける理由。

『鍵のかかった部屋』や『ムーン・パレス』などで知られ、1980年代以降のアメリカ現代文学を牽引する小説家ポール・オースター。2010年に刊行された『サンセット・パーク』の邦訳版が、この2月、晴れて発売される。大不況に見舞われた2008年のアメリカを舞台に、ブルックリンの廃屋に暮らし、未来を模索する4人の若者の葛藤と再生を描いた物語だ。

 注目すべきは、章ごとに視点が入れ替わる構成。「作者が60代に入っても積極的に新しいことをやっているのが嬉しい」と話すのは、訳者の柴田元幸。

「それぞれの視点的人物にどういう声を与えるか、口に出す言葉だけじゃなくて、内面の言葉を一人一人どう差異化するかを考えるのが楽しかったです」

 さらに、30年以上にわたり数多くのオースター作品を翻訳してきた柴田は次のように続ける。

「作者本人がとにかくクリアな文章を標榜しているので、余計な曖昧さを持ち込まず、原文と同じリズムのよさを再現することは毎回心がけています」

 改めて、世界中でオースターが愛される理由はどこにあるのか。「自分の気持ちから類推するに、文章自体の快さ、〝現実〟に対する健全な懐疑、物語の進め方・外し方のうまさ、〝知〟の人でも〝情〟の人でもあることだと思います」と柴田。作者の魅力を知り尽くした翻訳家の存在もまた、作品が海を超えて愛され続ける理由であることは間違いない。

柴田元幸が「あえて」選んだ、 思い入れのある3作品。

『幽霊たち』

私立探偵のブルーは、変装した男ホワイトから受けた奇妙な依頼に次第に翻弄される。「一番じっくり訳せた作品」(柴田)。文庫本1989年刊。新潮文庫/430円。

『空腹の技法』

オースターが小説家になるまでの軌跡を、エッセイやインタビューを中心にまとめた一作。「若き日の凄味がわかる」(柴田)。文庫本2004年刊。新潮文庫/絶版。

『偶然の音楽』

突然多額の遺産を手にした男が辿る数奇な運命。「主人公が風邪をひいたところを訳していたら、自分もひいた」(柴田)。文庫本2001年刊。新潮文庫/590円。

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柴田元幸

しばた・もとゆき/1954年東京都生まれ。翻訳家、米文学者。ポール・オースター、スチュアート・ダイベックなど現代米文学を多く翻訳。文芸誌『MONKEY』の責任編集も務める。

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Emi Fukushima

本記事は雑誌BRUTUS910号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は910号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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