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【話題の音楽】羊文学の全5曲入りの新作EP『ざわめき』

BRUTUSCOPE

No. 910(2020.02.15発行)
キッチン
枝 優花(左) 塩塚モエカ

ものを生み出す原動力になるのは「寂しさ」。

羊文学の塩塚モエカと映画監督の枝優。0から1へ、作品を生み出し続ける同世代対談が実現。

芯のあるサウンドと繊細な歌詞で着実に支持を集めるロックバンド、羊文学。ボーカルの塩塚モエカが、かねて親交のある枝優と対面。大人と子供の間(ハザマ)で、表現について語らう。

塩塚モエカ
会うと愚痴ばっかり言い合っている気が……。謎に、ファミレスで夜中まで一緒に作業したことあったよね(笑)。
枝優花
あった! お互い全然違う作業を一緒にして、できた? みたいな。
塩塚
辛いね、みたいな。
(笑)。
塩塚
そもそもどんなきっかけで羊文学を知ってくれたの?
知り合いから薦められて。「枝さんは絶対好きだよ!」ってCDを2枚渡されて聴いてみたら、本当に好きだった。
塩塚
ありがと!
性別を感じさせないところがかっこいいなと。あと私は、余白のある歌詞が好きで、そこに惹かれました。歌詞はどうやって書いているの?
塩塚
昔観た映画とか本のワンシーンとか、そういう思い出のかけらが頭の中にあって、それがふっと降りてきた時に詞にしていく。イメージを具体的にしていくよりも、その心地よさとか、匂いとか、漠然としたことを文字に起こすのが、自分らしいし好きだなと思ってます。
私も脚本を書く時、もっと受け手に委ねるようなものを作っていきたいと思っていて。それを臆することなく自分のテイストでできる人っていいなと思っています。
塩塚
……そわそわするね(照)。私は初めて『少女邂逅』を観た時、衝撃を受けました。作品には、当時の枝さんが、心の中で思っていても表に出さないようなことが詰まっていて。でも全然いやらしくなく、共感できて、こんな作品を作る人がいるんだとびっくりしました。
最近波長が合う知り合い何人かでしゃべっていた時、創作の原動力は「寂しさ」だって行き着いたんです。「0から1」のもの作りって大変だしお金にならない。それでもみんな、寂しいから作るんだっていう。
塩塚
なるほど。なんかわかるかも。
うん、すごくしっくりきて。振り返ってみると、自分の原点にあるのは、6歳の時に父親と映画館で観た『A.I.』っていう映画。寂しさが根底にあるあの作品は、両親が忙しくてあんまり一緒に過ごすことができず寂しかった当時の私にすごく響いたんですよね。それが根っこにあるから、今もどこか小さい頃の寂しい自分がいるというか。ものを作っている人って、どっかでみんな寂しさを持っている。塩塚さんも絶対そうだと思う。
塩塚
確かに、音楽を通じて足りない部分を埋めているところはあるかも。小さい頃からミュージシャンになろうと決めて、中学の頃から曲を作り続けているから、曲を作ることが、自分が自分でいるために必要なことになっている気がする。
羊文学の曲って、いつも誰かから置いていかれちゃって、自分はどうしたらいいんだろうみたいな寂しさがある。重くなく、でも切実で。
塩塚
私は別れとか、もう戻ってこないものに対する衝撃が大きくて、それが詞になるんだと思う。
大胆だけど、急に繊細みたいな。自分もそう。鈍感になれたら大人なんだろうけど、それやるとものが作れなくなっちゃう気がする。
塩塚
つらいつらい! みたいな気持ちから作っているところあるからね(笑)。
そうそう。仕事のステージが上がれば、大人にならなきゃいけない場面が増えるけど、その中でどれだけ抵抗して、子供のままちゃんとイライラしたり落ち込んだりできるか。苦しさも大事にしたいな。そういう、大人と子供のバランスを兼ね備えている憧れの人って、いる?
塩塚
いる! 元SEBASTIAN Xの永原真夏さん。楽曲そのものはポジティブな雰囲気なんですが、歌詞には繊細な部分もあって、そのバランスが素敵です。あと、ソロになってからも、自分がやりたいことに合わせて新しいメンバーと組んだり、センスを生かして雑貨ブランドを立ち上げたり、新しい挑戦をどんどんしている。その姿がかっこいいなと思って。枝さんにはそういう憧れの存在はいる?
映画監督の岩井俊二さん。もともと岩井さんの作品が大好きで。でも初めてお会いした時は色々びっくりした(笑)。
塩塚
不思議だよね(笑)。
地面から5㎝浮いているんじゃないかなと思うくらい、ふわふわしてる(笑)。天性のものかもしれないけど、キャリアと実績を積んでいても、自分を強く持っているところがかっこいいなと。大人にならなきゃなんて葛藤はなさそうだよね。
塩塚
それ、岩井さんに質問したことがあるんだよね。そしたら全然気にしてないって(笑)。
やっぱり(笑)。でもたくさん本を読んでたり、社会に対して厳しい目を持ったりしていて、そこは映画監督であって作家だなと思います。
塩塚
わかるな〜。大人になりながらも子供でい続けること。今の私たちのテーマだね。

『ざわめき』

羊文学の全5曲入りの新作EP。昨秋、映画監督とミュージシャンのコラボレーションイベント『MOOSIC LAB 2019』で公開された常間地裕監督×羊文学の映画『ゆうなぎ』の主題歌「夕凪」と挿入歌「サイレン」を収録。ガーリーなムードの前作『きらめき』からは一転、新機軸の楽曲が揃う。1,400円。

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枝 優花

えだ・ゆうか/1994年群馬県生まれ。映画監督、写真家2018年、初の長編監督作となった『少女邂逅』などで話題に。『少女邂逅』のスピンオフ作品となったYouTube作品『放課後ソーダ日和』では、主題歌に羊文学を起用。

塩塚モエカ

しおづか・もえか/1996年東京都生まれ。スリーピースオルタナティブロックバンド、羊文学で、ゆりか(Ba)、フクダヒロア(Dr)とともに活躍中。ボーカルとギターを担当し、すべての曲の作詞作曲を手がける。

photo/
Aya Kawachi
text/
Emi Fukushima

本記事は雑誌BRUTUS910号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は910号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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