東京インキ 羽生工場長 浅見 博(第3回/全4回)
本や雑誌の印刷に使われている、黄、紅、藍、墨のオフセットインキ。顔料の分散度や粘着度など、いくつもの項目を測定する品質検査をクリアすると、いよいよインキの完成だ。
- 前回、作り方を教えていただいたオフセットインキですが、品質のチェックは、どんなことをされるんですか?
- 浅見博
- 顔料をすりつぶす練肉という工程のあとに、まずは分散度を検査します。グラインドメーターという測定器具の溝にインキをのせて、スクレーパーで掻き取った線状の跡と数値をチェックします。粒子のサイズ、つまり練肉が十分であるかをここで確認して、規定の数値をクリアしたものが調整タンクに移されます。
- いよいよ仕上げの工程に入るんですね。
- 浅見
- インキ作りの最後は、徹底的な品質チェックです。異物を取り除くためのフィルターを通したインキの一部が、サンプルとして採取されて恒温室に運ばれます。温度を常に一定に維持し、入室人数も制限しているこの部屋で、L型粘度計やレオメーターと呼ばれる粘度計を使って粘度を測定したり、スプレッドメーターという器具で流動性を数値化する、フローという検査を行ったりします。インキの粘着性を測るのはタックという検査で、ここではインコメーターという器具を使います。4種類のチェックを経て、すべての基準をクリアしたものだけが、やっと缶やコンテナへ充填されるわけです。
- この段階で弾かれるものも出てくるんですか?
- 浅見
- 数値が基準に満たないものは、印刷の際に汚れが出てしまったり、紙への吸着度が低下してしまったりなどのトラブルの原因になりますから、改めて調整が施されることになります。(続く)

あざみ・ひろし/1964年生まれ。87年の入社から、オフセットインキにまつわる部署に33年間勤務しているアナログ人間。一般社団法人〈色材協会〉の理事も務めている。
- 写真/
- 森本菜穂子
- 文/
- 鳥澤 光
本記事は雑誌BRUTUS909号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は909号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。