アート

【話題のチーム】骨董界に新風を吹き込む"古物商集団"を知っていますか?

BRUTUSCOPE

No. 909(2020.02.01発行)
もっと おいしいコーヒーの教科書
空間で互いに作用し合うインスタレーション。左から、縄文晩期の縄文土器鉢、学生服カタログ用の肉筆JOHNNYKEY学ラン図、空巻き寿司、徳利うどん初期伊万里、建物に貼り付ける番地用タイル、両性具有陰陽石、19世紀の幾何学文の菓子型。

既存の価値にとらわれない魅力ある古物を紹介、空間インスタレーションする〈tatami antiques〉が考える骨董とは。

どこか一般的な骨董やアンティークとは表情が違う。独自の審美眼で、時代や用途に固執しない商品を扱う古物商集団〈tatami antiques〉。代表の奥村乃さんを中心に6〜7人の流動的なメンバーが集める古物は、主に海外に向けて発信される。そして時に、それらをインスタレーションしてみせるその活動は、業界内でも異色。彼らは、紋切り型の骨董の世界を拓こうとする表現者でもあるのだ。奥村さんとメンバーの2人に話を聞いた。

奥村乃
昔、リサイクルショップでアルバイトをしていて、冷蔵庫やらに交じってたまに扱う美術品が高額で売れたのが、古いものに興味を持ったきっかけでした。当時、骨董の知識は全くなかったけれど、何が売れるかはわかった。海外をターゲットにして、これを発信したら面白いんじゃないかと、15年ほど前に1人で始めたのが〈hotoke antiques〉という屋号でのウェブショップでした。最初はただ売れればよかった。いろいろ扱ううちに、自分の好きなものがわかってきた感じですね。
長谷川迅太
僕はもともとアート作家として古いものを材料に作品を作っていて、骨董市に通うようになりました。そのうちにアートより骨董が断然面白く感じて、露天商をやるようになった。何より、日本ではアートより需要もありました。
牛抱幾久真
僕はこれと言ってないんですが(笑)。神社が好きだったり、母が拾ってきた農具を壁に飾っていたり、雑貨好きな姉がいたりした環境のなかで、自然と古いものに惹かれたのはありますね。迅太くんもお父さんが雑貨屋だしね。
奥村 
彼らをはじめ、海外を視野にできそうなものを集めているディーラーに声をかけて、古物商集団として〈tatami antiques〉を立ち上げたのが5年前ですね。自分1人でやるより大勢の方が、商品のバリエーションが出せると思ったのと、面白いものを扱っているのに日本のマーケットであまり評価されていないのはもったいないなと感じた。メンバーには古美術系の人から、無名の人の遺影や人体模型を集める人までいて、扱うものも立ち位置も参加理由も様々です。〈tatami〉の活動の軸は、おのおのの商品を海外向けのウェブに乗せて販売すること。その延長として、誘いがあれば持ち寄った古物でインスタレーションなども行います。展示では関係性のなかで商品を見ることができるので、ものの魅力がより高まりますね。
長谷川 
全く違うジャンルのもの同士が作り出す空間を僕らも楽しみながら展示しています。
牛抱
一般的には、はてさて、という組み合わせかもしれませんが、だいたいメンバーみんながココだなと感じる場所にものが着地していく。例えば、直球で真面目なものの横に少し笑えるものを置いたりすると、真面目なものにユーモアが加算されてバランスが良くなったりするんですよね。
長谷川
そう、笑いがあることも大切なんです。
奥村
いわゆる"骨董"ってもともと堅苦しくて、敷居が高いイメージがありますよね。それはそれで、一つの文化としてリスペクトしていますが、本来、ものの背景がわからなくても、それが面白ければ評価されてもいいわけで。〈tatami〉の顧客に海外のアーティストやコレクターが多いのは、何年の誰の作品かとか、それは"本物"か、ということよりも、感覚的に、自分がいいなと思ったらパッと手を伸ばしてくれるからなんですよね。
長谷川
反対に、日本は背景がきちんとしているものを好みますよね。"偽物"でも不完全でも面白ければいいという感覚の人は少ないかなと。
牛抱
僕は未完成の人形の首や壊れたキツネの像など完璧な状態からズレた不完全なものが好きなので、日本のマーケットの目線ではなかなか厳しいものがあって。でも、作られた当初から時間が経って壊れていたり、いつの間にか別の用途のものになっていたり、思いがけず最初の意図と違ってしまっているものにも良さがあるんですよね。
長谷川
アートだと誰の作品という署名が重要になってくるけれど、古いものの無名性、誰が作ったとも知れない、名もなきものが残っているところにも、僕は惹かれるんですよね。そしてそういう無名の品を見続けると、名前ありきできちんと作られたものの良さにも気がついたりする。でも、アート作品をいろいろ見に行くよりも、骨董市に行く方が、これって何⁉ という見たことのないものに出会える確率は高いように感じます。
奥村
古いものの魅力って、デザインなり色なり、そこに今現代にない"新しさ"を感じられるところなんですよね。だからもう少し自由に、見たことのないものとの出会いを純粋に楽しめるようなシーンが、日本にもあっていいと思いますね。
理容学校の練習用のヘアカタログ。

ロケットや昔の手洗いなどを床に置き組み合わせた。すべて2月2日まで開催の蔵前〈水犀〉での最新の展示風景から。

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tatami antiques

タタミ・アンティークス/"コンテンポラリー・アンティーク"をテーマに2015年結成。ウェブ販売、展示で活動。〈hotoke〉の奥村乃のほか、自ら手を加えた古物も扱う作家の長谷川迅太、清澄白河〈幾何〉の牛抱幾久真らが所属。https://tatami-antiques.com

text&edit/
Asuka Ochi

本記事は雑誌BRUTUS909号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は909号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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