新しくて懐かしい新時代のブレンド。

From Editors

No. 909(2020.02.01発行)
もっと おいしいコーヒーの教科書
東久留米の〈East End White ~coffee~〉では「ブタ釜」と呼ばれる、年代モノの直火式焙煎機が使われていました。このご時世に全手動と、手のかかる機械で焼き上げられたブレンドには、オーナー・志藤雄一さんの人柄が表れているようで、とても甘く香ばしい。どこか懐かしく、だけど新しい。そんな一杯が飲める素敵なお店でした。

「ブレンドには無限の可能性があります」 ある焙煎家がそう言っていました。

農園・農家へのリスペクトから、豆本来のポテンシャルを最大限に引き出すことを最良とするシングルオリジンに対して、ブレンドは豆と豆を組み合わせて新しい味を作り出すもの。しかもその豆が昔とは違い、とびきり良質と来た。けれど、いいもの同士を合わせるだけで、もっとおいしいコーヒーが出来る、とは限らないみたいです。個性の強い豆と豆がぶつかり味がバラつくこともあれば、お互いの良さを打ち消してしまうこともあるのだとか。だから、焙煎家たちは試行錯誤を繰り返し、“自分の味”を追求しているんです。

生豆の状態で先に混ぜて同時に焼き上げるプレミックスを用いる人もいれば、一つ一つシングルで焼き上げてあとで混ぜるアフターミックスの人もいます。あえて豆の個性を抑えて飲みやすい一杯を目指す人もいるし、個性を強調させ奥行きのある一杯を目指す人も。焼き方を変えた一種類の豆で作るブレンドだってあります。同じ配合でも焙煎機・焙煎家が変われば同じ味にはならないし、そもそも同じ豆が必ず手に入るとも限らない……。ブレンド作りとは、正解がない、とてもストイックな仕事だと実感しました。今回の特集で取材した焙煎家の方々は強いこだわりを持ってブレンド作りに打ち込んでいて、コーヒーに人柄がよく表れていました。焙煎家が一杯に込めた思いを感じながらコーヒーを飲むというのも、ブレンドの新しい楽しみ方かもしれません。

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辻田翔哉(本誌担当編集)/

本記事は雑誌BRUTUS909号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は909号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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もっと おいしいコーヒーの教科書(2020.02.01発行)

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