エンターテインメント

【話題の音楽】NEO K−POPのミューズ・SUMINが語る、これからの“ポップス”。

BRUTUSCOPE

No. 907(2019.12.16発行)
危険な読書2020

日々進化しつづけるK−POPシーンで独自の地位を獲得しつつある彼女が表現する、“不安定”で“不完全”な音楽とは?

ソウルを拠点に活動するアーティスト&プロデューサーのSUMINは、メジャーとアンダーグラウンドを行き来しながら独自の地位を築く注目の存在だ。彼女の音楽は「NEO K−POP」と呼ばれ、新たな世界観を提示している。

「先日『OO DA DA』というアルバムを発表したのですが、どういうジャンルの音楽か説明するのが難しくて。私にとってはポップスなのですが世間的にK−POPといえばアイドルグループが歌うものとされていますよね。そんな固定観念を打ち破りたかったんです」

 先鋭的なビートにポップでどこか危ういメロディが乗る『OO DA DA』は、まさに彼女の音楽観を表した作品でもある。ボーカリストとしてキャリアをスタートさせた彼女は、2015年から音楽制作を開始。試行錯誤を重ねるなかで、“不安定”や“不完全”というテーマに行き着いた。

「例えば失恋したからといって、湿っぽいバラードを歌うのは嫌だったんです。悲しい感情こそ健康的でかわいい曲として表現したくて。相反するものが共存する不安定な状態を作ろうと考えるようになってから、私の曲はぐっと複雑になったと思います」

 これまでSUMINはインディペンデントに活動してきたが、今作からはソウルのクリエイティブエージェンシー〈GDW〉が始動したレーベル〈MOTHER〉に参加。同レーベルチームの力により、音楽のみならずビジュアルの強度も向上した。

 SUMINが特殊なのは、自身の作品制作と並行しながら、Red VelvetやBTS、BoAなどメジャーアーティストの楽曲も数多くプロデュースしていることだろう。アーティストとしての活動とプロデュースの仕事は「あくまでも別物」としながらも、いわゆる“K−POP”を作る経験から受けるインスピレーションも大きいという。

「そもそも昔からK−POPは好きでした。なかでもS.E.S.やSHINeeを手がけたプロデューサー、ユ・ヨンジンさんの作品は特に素晴らしい。もちろん影響も受けていて、2017年に作ったRed Velvetの「Look」という曲には、自分が好きなK−POPの要素をかなり詰め込んでます。この曲はSMエンターテインメント主催の『ソングキャンプ』で作ったもので、Jinboとダニエル・“オビ”・クライン、チャーリー・タフトという3人のプロデューサーとチームを組みました。3人とは気が合って、実質1日で完成してしまいました。Red Velvetとは2019年も「Eyes Locked, Hands Locked」という曲を作りましたが、それは自分一人で作っていたし、このパートは誰が歌うといいなど、より具体的にメンバー一人一人をイメージしながら作業していました。曲によって作り方を変えていけるのもプロデュースの面白さです」

 メジャーとアンダーグラウンド。アーティストとリスナー。あるいは喜びと悲しみ。SUMINは常にさまざまな二項対立の間で揺れ動きながら、決して偏らず、物事を単純化しない。複雑なものを複雑なまま提出することこそが彼女にとっては重要なスタンスだからだ。それは一見わかりにくい態度でもあるが、彼女にとってはむしろ扇情的でシンプルなメッセージを発してしまうことの方が危険に思えるのかもしれない。

「音楽を作るときはいつも、まずは自分の好きなことを考えて、次にリスナーのことを考えます。自分が51%でリスナーが49%って感じ。“愛”のように大きなテーマで音楽を作るのは好きですが、みんな感情を単純化しすぎだと思うんです。失恋のようにわかりやすい痛みを表現するのではなくて、もっと複雑で曖昧な感情のディテールを音楽的な言語で表現したい。そうすることで、ゆくゆくは社会的なイシューも扇情的ではなく、愛に包み込むようにして表現していけるはずですから」

『OO DA DA』SUMIN

SUMINの美意識が色濃く表れたセカンドアルバム。先鋭的なビートとキャッチーなメロディが共存する奇妙なポップさはまさにNEO K−POP的だ。

『The Slide(feat. SUMIN)』Sultan of the Disco

韓国を代表するソウル/ファンクバンドの楽曲をSUMINがプロデュース。自身もゲストボーカルとして参加し、SUMINの声の魅力も楽しめる。

『Club 33』KIRIN & SUMIN

韓国ヒップホップシーンでも異色のラッパー、KIRINとのコラボ作品。楽曲のみならずMVからも1990年代〜2000年代への溢れる愛が感じられる。

『Some Definition of Love』SOMDEF

CrushやLocoなど著名アーティストとコラボする気鋭のプロデューサー、SOMDEFの最新アルバム。SUMINが参加したの
は、しっとりしたR&Bの曲。

『So!YoON!』So!YoON!

韓国屈指のインディロックバンド、SE SO NEONのボーカルがソロデビュー。いびつでポップなSUMINの参加曲はアルバム中でも異彩を放つ。

エンターテインメントカテゴリの記事をもっと読む

SUMIN

スミン/アーティスト、プロデューサー。2019年7月にセカンドアルバム『OO DA DA』を発表。B
TSやRed Velvet、BoAなど数多くのメジャーアーティストの楽曲プロデュースに携わりながら、自身の活動を続けている。

photo&text/Moteslim/

本記事は雑誌BRUTUS907号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は907号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.907
危険な読書2020(2019.12.16発行)

関連記事