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【話題の写真集】沢渡朔撮影の長谷川京子写真集『Just as a flower』、大人の女の色香を振りまきつつ好評発売中。

BRUTUSCOPE

No. 907(2019.12.16発行)
危険な読書2020
沢渡 朔(左) 藤代冥砂(右)

女性を撮らせたら双璧の2人が口を揃えて言う。「女は40歳を越えてからが美しい」

沢渡朔と藤代冥砂、写真家として認め合う2人が対談するのは、藤代が『SKETCHES OF TOKYO』を上梓した時以来3年半ぶりのこと。今回は、沢渡が撮影した長谷川京子写真集『Just as a flower』の校正紙を見ながらのトークになった。

藤代冥砂
実は昔、月刊シリーズの岩田さんから「沢渡さんが冥砂のCharaの写真集を誉めてたぞ」って話を聞いた時に、よかった、間違ってなかったって思ったことがあって。
沢渡朔
それって20年以上前の話だよね。当時『スワロウテイル』のCharaがすごく気に入ってて、偶然本屋で写真集を見つけて買ったら冥砂が撮ってた。とにかく写真がかっこよかったんだ。
藤代
あの言葉は自信になったし、今日も新作を見られるのをすごく楽しみにしてきました。

――ではその新作をご覧いただきましょう。

沢渡
今回の写真集は写真だけで112ページだから、けっこうなボリュームなんだよね。僕は10年くらい前に一度、彼女を撮ってるんだけど、今の方がずっといい女だと思った。子供を2人産んで、今が一番いい時期なんじゃないかな。
藤代
僕もそう思います。この写真の長谷川さん、肌とかすごくキレイだし、キラキラしてるじゃないですか。沢渡さんはいい感じに生っぽさを引き出していて、やっぱりさすがだなあ。
沢渡
彼女自身も肌のキレイさには自信を持っているみたいだったね。皺とか全然気にしませんって言ってたし。いい意味で今の自分を全部引き受けてるような印象があった。
藤代
沢渡さんっていくつの女性を撮ろうと、決して壊さないというか……。
沢渡
それは勝手な枠に嵌めないということ?
藤代
それはもちろんですが、あるがままの美しさを引き出して、それを極上の空気感とともに丁寧に提示している、とでも言ったらいいのかな。
沢渡
女の写真って、やっぱ軽く撮るっきゃないと思うんだよね。ドキュメンタリーで純文学でっていう撮り方もあるけど、僕の場合は軽みみたいなものにポエジーを加えて、いい感じになればいいっていうね。それ以上でも以下でもなく。
藤代
その軽く撮るしかないっていいなと思います。自分を投影してみたり、余計な関係性を入れ込んだりするような写真には自分も違和感を抱いてしまうので、被写体の良さを撮るだけでいいじゃんていう沢渡さんの姿勢はとてもよくわかる。写真って軽くても深いところまで届くんですよ。
沢渡
ま、俺にはこれしかできないんだけどさ。
藤代
自分は沢渡さんの撮影現場にお邪魔したことはないんですが、以前、たしか井川遥さんだったと思うんだけれど、午前中に沢渡さんが撮って、午後が自分ということがあったんです。
沢渡
現場でのすれ違いは何度もあったからね。
藤代
そうですね。で、その時、撮影を終えてスタジオを後にしようとした沢渡さんが、残っている井川さんやスタッフの人たちに向かって「お疲れさまでした」って深々と頭を下げてたんですよ。その姿を見て、ああすごいなぁ、自分はまだまだだなあって思ったことをよく覚えています。といって、今も自分はできてないんですけど。
沢渡
いや、僕も50歳を過ぎてからじゃないかな、撮らせてもらってありがたかったなぁっていう思いを素直に表現できるようになったのは。とにかく僕にとっては、写真を撮ることが一番楽しいわけだからさ。冥砂は今何歳になった?
藤代
52歳です。そろそろ頭の下げ時かもしれない(笑)。でもお世辞ではなく、そういう沢渡さんの写真に向かう真摯な姿勢がいい作品に結びついてるんだと思いますね。
沢渡
必死に撮らないと写らないからさ。まぁ、一生懸命さは伝わってるかもしれないけど。普段、誠実さが足りないからこういう時ぐらいは(笑)。
藤代
誠実さは出すべき時に出せばいいんだと思いますよ。沢渡さんの写真、被写体の雰囲気を見ると感じるんです、撮られていてすごく心地いいんだろうなって。心と心の距離感というか、何だろう、少年の距離感、かな。その印象は昔から変わらない。沢渡さんは何かを変えようと思ったこととかないんですか?
沢渡
一時期スランプになったことはあったけど、結局、俺は女を撮ることしかできないって気づいたら、素直にカメラに向かえるようになった。だから、あと10年は撮りたいと思ってるんだよ。
藤代
沢渡さんが撮ってるうちは自分もその背中を追い続けられるので、ぜひお願いします。
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『Just as a flower』

長谷川京子写真集。沢渡朔撮影。40歳を越えてさらに女優としての輝きを増している長谷川京子の、16年ぶりとなる写真集。女性そのまんまの魅力を引き出すことに長けた写真家・沢渡朔とのコラボレーションでみずみずしくも艶やかな仕上がりに。宝島社/2,400円。

photo/Hiroshi Shiohara text/Kaz Yuzawa/

本記事は雑誌BRUTUS907号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は907号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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