女優に映画監督。いろいろな経験を経て 26歳になったのんが、いま観たい映画と観る理由。本誌アザーカットも公開中。
映画『おちをつけなんせ』で監督デビューしたのんさん。監督だけでなく、脚本・衣装・編集・音楽など映画作りに関わるすべてを自身で担当。好奇心旺盛にさまざまな表現に飛び込んでいく。そんな彼女が映画を「いま観る理由」とは?
いまいちばん気になるのは『スパイダーマン』の次作。トム・ホランドが演じるスパイダーマンがお気に入りなんです。もともと『アベンジャーズ』シリーズが好きで、ロバート・ダウニー・Jr.のアイアンマンが大好き。その流れでスパイダーマンの新シリーズを観るようになって。私、『スパイダーマン:ホームカミング』('17)が初スパイダーマンなんです。めちゃめちゃ楽しみました。軽い気持ちでヒーローの世界に飛び込み、若さゆえの浅はかさ、弱さ、情けなさが絶妙。毎年観たいお気楽映画があるのっていいですよね。
魅力的なキャラクターが出ていると、演技を中心に観るときもあります。これはやられた! 悔しい! と思う表現に出会うと、何度も巻き戻して観返すんです。例えば、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』('14)のベニチオ・デル・トロ。変人コレクターの演技が衝撃でした。心の琴線に触れる気持ち悪さを出していて。ほんの数分のシーンなのに、一体どうやってここに行き着いたんだろう。
マイブームでアクションばかり観ているんですが、人間ドラマも好き。最近は、昔観て辛い記憶しか残っていない映画を、いま観るとどんな気持ちになるのかなって考えたりもします。高校生の頃はコンプレックスの塊で、何をやってもうまくいかず鬱々として、主人公が追いつめられていく映画ばかり観ていたんです。自分よりも辛い境遇にいる人を観て救われたかった。
ただ、いい映画に「痛み」はつきもの。心の痛みを撮るのが映画だとも思うんです。私が演じるときも、その役が抱える痛みがどこにあるのかを一番に探します。脚本をどう解釈するか、その役にどうリアリティをつけるか、いつも神経をビーンと張り詰める。だから、昔観た映画の主人公たちの痛みをもう一度観て、いまの自分で受け止めたいんです。
映画を撮ってみてわかったのは、映画作りにはやることが膨大にあるということ。でも時間は有限。なのに毎回、想定外なことが起こってしまう。その中で、どこまで自分の撮りたいものにこだわるのか、それをどう多くのスタッフに伝えるのか、すっごく難しかった。自分が頭の中に描いたことを、ちゃんと言葉で伝えなきゃだめだと痛感して。苦手だった自分の気持ちを話すことにもずいぶん抵抗がなくなりました。いまはもう、いろんなことがへっちゃらです。だから、苦手なバイオレンス映画もホラー映画もどんどん観てみようかなっていう気分です(笑)。
のん
- photo/
- Kenshu Shintsubo
- styling/
- Erisa Yamaguchi
- hair&make/
- Kaori Mori
- text/
- Izumi Karashima
- special thanks/
- Cinemavera Shibuya, Ryo Chiura
本記事は雑誌BRUTUS904号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は904号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。