アート

Splitting(1974) ┃ ゴードン・マッタ=クラーク

チンキビジュツ〜世にもおかしなアートの世界〜

No. 902(2019.10.01発行)
バンコク 見る、買う、食べる、101のこと。
©The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.

 まるで包丁で家を切断したような、うーん、不思議な光景。そういえば、街では「建てる」ことばかりに目が行きがちですが、「壊す」現場を目撃すると妙な気分になりませんか? パワーショベルでガラガラと解体される家屋の内部をちょっと盗み見て、そこに住んだ人の気配を感じたりして。特に日本の住宅は「スクラップ&ビルド」と言われるように、壊して建てるのが当たり前。解体現場を見る機会も多いような気がします。そこに奇妙さを感じるのはきっと、物質的なものとともに、流れていたであろう時間や記憶も一瞬にして失われるのを見るからではないでしょうか。ところが上の作品ではそんな余韻を感じさせる暇がないほどに、スパッと。1970年代ニューヨークを拠点に活躍し35歳で夭逝したゴードン・マッタ=クラーク(1943〜1978)は、この作品のように建築物を分断したシリーズで知られる作家です。壊すことに慣れてしまった私たちに、“正しく美しく切る”という違和感で何かを気づかせてくれるようです。

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文/
中村志保

本記事は雑誌BRUTUS902号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は902号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.902
バンコク 見る、買う、食べる、101のこと。(2019.10.01発行)

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