アート

アーティスト青山悟が魅せる、愉快な現代版風刺画。

BRUTUSCOPE

No. 902(2019.10.01発行)
バンコク 見る、買う、食べる、101のこと。
《News From Nowhere (Labour day)》, 2019 シルクスクリーンプリントに刺繍、ドローイング 100×140cm 撮影: 宮島径

ミシン刺繍を使った作品で圧巻する個展が、ミヅマアートギャラリーで開催。

これまで一貫して刺繍による作品を制作してきた青山悟。だがひとえに刺繍といっても、古い印刷物の上にカラフルな糸で現代的なモチーフを縫い付けたり、歴史的な場面を刺繍それ自体で写真作品のように見せたり、時に絵画的で、時にコラージュやポスターのようで、その表情はさまざまだ。
 
青山が刺繍を扱うようになったきっかけはロンドン留学中に出会ったシンガー社製の古いミシンだという。以来、機械と人の関わりや、時代によって変化する労働のあり方に疑問を投げかけながら、制作を続けてきた。
 
今回開かれる個展に登場する大型の新作《News From Nowhere(Labour day)》では、19世紀ニューヨークで始まった「労働者の日」のデモをモチーフにした白黒の挿画をベースに、「仕事に8時間を、休息に8時間を、やりたいことに8時間を」などのスローガンを引用した旗などが目に飛び込んでくる。だがよく見ると、その中に「アーティストの仕事にもっと評価を」という作家自身の言葉や、トランプ大統領の顔、「BREXIT」などの文字に、インターネットから拾い集められた多様なアイコンが混じっているのが愉快だ。まさに現代版の風刺画のような世界観に惹きつけられる。急速に変化する社会の中で、作家は、人間性とは? さらには美意識や芸術の在りかはどこにあるか? と提示し、未来における労働のあり方と、作家本人の制作のこれからについても問う。メッセージやヒントがちりばめられた作品を、じっくりと眺めてみたい。

《8 Hours》, 2018 ポリエステルに刺繍 52×70cm 撮影: 宮島 径 

《The Lonely Labourer》, 2018-19 4K Video

アートカテゴリの記事をもっと読む

『青山悟展「The Lonely Labourer」』

10月2日〜11月2日、ミヅマアートギャラリー(東京都新宿区市谷田町3−13 神楽ビル2F)で開催。11時〜19時。日曜・月曜・祝日休。刺繍と映像によるインスタレーションやシルクスクリーンに刺繍を施した作品、コンピューターミシンを使用した新作によって構成。美しく繊細な刺繍の奥に風刺とユーモアを内包した作家の世界観が広がる。

text/
Shiho Nakamura

本記事は雑誌BRUTUS902号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は902号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.902
バンコク 見る、買う、食べる、101のこと。(2019.10.01発行)

関連記事