仕事

隈研吾建築都市設計事務所

真似のできない仕事術

No. 900(2019.09.02発行)
真似のできない仕事術

仕事術三箇条

・プロジェクトを止めるな。
・打ち合わせは10分間。
・無理に答えを出さない。

東京と中国、パリに拠点を置き、250名を超えるスタッフを擁する隈研吾建築都市設計事務所。「アトリエ系」と呼ばれ、個性のある建築物を設計する事務所として、日本では最大規模。世界中で約100ものプロジェクトが同時に進み、常に移動し続ける隈研吾さんだが、驚くことに一つ一つの案件の状況を詳細に把握しているという。きめ細かなクリエイティブワークの秘訣はどこにあるのか。

プロジェクトの地域は、ヨーロッパアメリカアジア日本が約3分の1ずつ。隈さんは、それぞれの工事現場やプレゼンテーション会場を巡る日常を過ごす。月のうち半分は日本国内、残りの2週間で海外の3ヵ所を訪れるのがルーティン。世界1周チケット以外の持ち物は、ジャケットと機内持ち込みの手荷物1つ、そしてスマートフォン。移動中はスタッフから届くメールをチェックし、即座に返答し続ける。「僕はみんなの上にいるというより、あらゆるところにいるような状態。なるべく組織をフラットにしたいのです」。スタッフの人数が多くなれば管理上、縦割り型になるのが一般的だ。しかし縦割り組織では上下関係が出て、意見のやりとりは停滞して硬直しがち。柔軟かつ円滑にプロジェクトを進めるために、隈さんはあえて組織を水平に保っているのである。「現代サッカーは、ドリブルよりパス回しが基本ですよね。ボールを止めずにパスを回すようにコミュニケーションすることが、効率を上げるコツだと思う」と隈さん。机の前にじっと座ってスケッチしながらコンセプトを練り上げるような建築家像とはかけ離れた、隈さんのワークスタイル。新人スタッフであっても、受け取る質問には一つずつ答えていく。ただし、メールの文面には注意点がある。「例えば、選択肢を1と2で挙げてもらう。そうすれば“2の方向だけど、こんなふうに進化させて”と返せます」。時間がない時には、「2」という返事だけのことも。兎にも角にも、テンポよくプロジェクトを進行させることが、隈さんの役割なのである。

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くまけんご けんちくとし せっけいじむしょ

隈研吾建築都市設計事務所は1990年設立。隈研吾は1954年神奈川県生まれ。東京大学大学院建築学専攻修了。現在、東京大学教授。これまで20ヵ国を超す国々で建築を設計し、国内外でさまざまな賞を受けている。その土地の環境、文化に溶け込む建築を目指し、ヒューマンスケールのやさしく、柔らかなデザインを提案。また新しい素材の探求を通じて、工業化社会の後の建築のあり方を追求している。

photo/
Yosuke Owashi
text/
Jun Kato

本記事は雑誌BRUTUS900号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は900号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.900
真似のできない仕事術(2019.09.02発行)

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