SOUTHLAB南方 / 新富町 湯浅

グルマン温故知新

No. 899(2019.08.16発行)
ますます!おいしい酒場。

素材、技、丁寧さ。三拍子揃った次代の中華の名店。

気軽な酒場スタイルの店が増え、活気を増す東京チャイニーズシーンだが、相次いで誕生した実力派をご紹介。有名店で計十余年腕を磨いたシェフが満を持して開いた店と、惜しまれつつ幕を下ろした繁盛店のスピリッツを受け継ぐ店。オープン直後から安定感十分!

SOUTHLAB南方(錦糸町)

香港の熱きソウルフードをワインとともに。

 東京の中でもアジアン濃度が高い町・錦糸町にエネルギッシュな広東料理店がお目見え。一羽が丸っと皿にのる豪快なクリスピーチキンや鳩の醤油煮を、ナチュラルワインとともに。仕掛け人写真家香港に関する著書もある菊地和男さん。今年6月、惜しまれつつ閉店した外苑前〈楽記〉を手がけた人だ。

 焼き物以外にも推しがある。例えば、塩漬け魚・ハムユイを使ったハンバーグ。“中華版アンチョビ”の熟れた旨味が味わいをぐっと底上げしてくれる。野菜料理もユニーク。ライムの酸が効いたパクチーサラダは、ほくほくに素揚げした根っこがアクセント。ベースは広東。で、これからはニョニャ(中国人と東南アジア人の混血)やインドシナ半島に移住した広東人の料理など、マニアックなものも伝えていく予定、だから「南方」。コースもアラカルトもあり。土日は昼からの通し営業でチョイ飲み酒場使いもオッケー。間口が広く、奥は深い。

クリスピーチキン

香港原産の鶏・ロンコンカイを日本で飼育したものを使用。肉が黄色く、脂が豊か。ゆでてから麦芽糖を塗って干し、下揚げは低温で、仕上げは高温で、と二度揚げして完成するまで、なんと8時間を要する。表面を覆う皮がパリパリで、脂の旨味、コクがしっかり。9,500円(1羽。半羽は4,800円)。要予約。

パクチーサラダ

葉より香りが強いといわれるパクチーの根を、素揚げにしてトッピング。ドレッシングはエシャロット、クミン、黒コショウなどのハーブ、スパイスを効かせて。焼き物の箸休めにもぴったりの爽やかスパイシー味。800円。

塩漬魚と蒸しハンバーグ

ミナミコノシロという魚で仕込んだ、香港でもとびきりとされるハムユイを使用。豚挽き肉のハンバーグの上に小さな一切れをのせて蒸すだけ。素材から出た味が極上のソースになる。針ショウガがアクセントに。1,800円。

〈福臨門酒家〉で腕を振るったベテラン、覃志光さんが厨房を仕切る。
コンクリート打ち放し。中国料理店らしからぬ内装。

新富町 湯浅(新富町)

旬魚とフカヒレの2本柱で勝負。

 修業先を聞けば三田〈御田町 桃の木〉や〈筑紫樓 銀座店〉など有名店ばかり。どちらも4、5年、きっちり勤め、〈筑紫樓〉では副料理長として活躍した。さらに縁あって、独立前に築地の水産仲卸を手伝った時期もある。その全部が湯浅大輔シェフの血肉に。厨房での動きにムダがない。料理はどれも、シンプルで迷いがない。甘味と酸味がぎゅっと凝縮したたれで食べる黒酢の酢豚は芯までしっとり。「器使いは〈桃の木〉で多くを学びました」と、フカヒレ料理を織部焼の器で、という具合。

 とりわけ力を入れるのは、旬魚の一品とフカヒレ料理。2キロ大のキジハタを1本、骨付きのまま約1週間寝かせて蒸し物に。フカヒレは前菜にスープ、姿煮と料理に応じて常時3~4種と、わずか20席足らずの店とは思えない仕事が、日々、ワンオペの厨房で繰り広げられている。手間もコストもかかる一皿一皿から、料理人の楽しさがバシバシ伝わってくるのだ。

旬の食材の大豆ソース蒸し

独立前に勤めた仲卸から、和食店に負けない旬魚を仕入れる。明石産のキジハタは、約1週間寝かせてから蒸し、身を崩さず脂と旨味を隅々まで行き渡らせる。ハスの葉の香りをまとわせ、蒸し大豆に塩などを加えて発酵させた自家製大豆ソースとピリ辛の薬味を添えて。料理はすべて夜の10,000円コースから。

メジロザメ尾ビレと黒米団子のスープ

天日干しにこだわる千葉県のメーカー〈信和キンシ〉のフカヒレは「モノが違う」と、湯浅シェフ。メジロザメの尾びれのスープは、梅山豚の生ハムを挟んだ黒米団子とともに。贅沢な旨味の層ともちっと甘い団子が好相性。

黒酢の酢豚

艶やかな黒酢だれはねっとりと濃厚。低温で時間をかけてやさしく火を入れた後、さっと揚げた漢方三元豚の旨味を引き立てる。付け合わせに、サツマイモや新ジャガイモなど、甘いたれに合う根菜の素揚げが忍ばせてある。

湯浅シェフ。魚の話となると止まらない。
横長の窓が空間のアクセント。新築の物件で、内装もシンプルだが妥協なく作った。

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SOUTHLAB南方

電話:03・6658・5299
営業時間:18時~22時LO(土12時~22時LO、日12時~21時LO)。
酒:グラスワイン約10種900円~、ボトルは60~70種4,500円~。
価格:コース6,500円~、アラカルトあり、約15種500円~。
席数 :テーブル12卓25席。

東京都墨田区錦糸3−7−3 オフィスナカジマビル1F。月曜休。東京メトロほか錦糸町駅から徒歩3分。2019年6月4日オープン。西洋野菜や中国野菜、アジア野菜を千葉県の栽培農家と作る〈テラ・マードレ〉が系列。店内で野菜の販売も行う予定。6,500円コースはスープ、揚げ物、パクチーサラダ、鳩の醤油煮、食事、デザートなど全10品とお得。ワインのほか、フランスクラフトビールも。

新富町 湯浅

電話:03・6222・8677
営業時間:17時30分~21時30分LO(土・日・祝20時30分LO、昼営業もあり)。
酒:ビール780円~、グラスワイン4〜6種950円~。
価格:コース10,000円~(昼3,000円~)。20時以降アラカルトあり。
席数 :カウンター4席、テーブル4卓8席、個室6席。

東京都中央区新富2−7−4。水曜休。東京メトロ新富町駅から徒歩1分。2019年2月21日オープン。サービス料10%。20時以降は6,000円のショートコース、アラカルトあり。平日昼も人数、予算によって予約応相談(要事前問い合わせ)。10,000円のコースは約10皿。サービスはフレンチで経験を積んだベテランサービスマンが担当。ワインは日本、クロアチア、スイスなど幅広く、中国酒も充実。

文/
佐々木ケイ
photo/
Naoki Tani

本記事は雑誌BRUTUS899号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は899号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.899
ますます!おいしい酒場。(2019.08.16発行)

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