〈ブンカ堂〉は、立石の街で輝く、賑わいの小箱。

ますます!おいしい酒場。

No. 899(2019.08.16発行)
ますます!おいしい酒場。

酒場の街・立石の新店〈ブンカ堂〉は、 毎日午後3時開店。

屋号が染め抜かれたグリーンの暖簾は、同じ立石の大先輩酒場〈宇ち多゛〉の3代目・内田朋一郎さんから、開店祝いに贈られたもの。

小体ながらおやつ呑みからご宴会まで、 酒場のゴールデンルーキーです。

互いに手を伸ばせば、お向かいの人にワインが注げそうなほどの幅の、スリムなコの字カウンター。自然と、会話が生まれたりも。

ブンカ堂 | 京成立石

名酒場がひしめく街・立石に、2018年12月に登場した(小さいながらの)大型ルーキーが〈ブンカ堂〉。京成立石駅を挟んで反対側にある人気おでん酒場〈二毛作〉を創業期からもり立てた一人である西村浩志さんが、その目と鼻の先に独立開業した酒場だ。

西村さんが「好きな色」だという緑色の暖簾が、夜目にも映える。

生まれも育ちも立石の西村さん。屋号の〈ブンカ堂〉は、祖父母の代から営んでいた実家の玩具店にちなむ。今、酒場の街として名高い立石には、タカラトミーの本社があり、かつては「おもちゃの街」
として知られた。玩具店の表記は〈文化堂〉。“3代目”が開いた酒場は、音はそのままカナ表記にして、ぐっと軽やかに。

駅の北口から商店街を抜けて徒歩2分と至近。

「実家を知っている年配のお客さんには“子供の頃〈文化堂〉によく行っていたけれど、大人になっても〈ブンカ堂〉に通うことになるとはね〜”って言われました」と照れながら話す西村さん。〈二毛作〉には、日比谷のバーで働いていたところを旧知の日高寿博さんに誘われて、12年以上前に屋台で営業を始めた時から参加。やがて立石仲見世に店を構え、後に〈おでん丸忠〉と屋号を改めてからも店を切り盛りした。立石を代表するこの人気店からの卒業を宣言するや、同業者や常連客から近隣の物件情報が次々舞い込んだ。中から選んだのは、駅から近い上に路面かつ角地の、申し分ない場所。

自身が好きな酒場、市川〈サケフク〉を手がけた大工さんに施工を依頼し、当初は丸ごと同じようにさせてもらうつもりだった。が、かつての〈二毛作〉(現〈おでん丸忠〉)の、細長いコの字カウンターから生まれる雰囲気が忘れがたく、最終的には自分の店もやっぱりコの字に。古い家屋を解体した際に出た廃材を使ったカウンター、通りから店内の様子がよく見える木とガラスの引き戸など、先輩格の店が醸し出す街の空気感に溶け込む意匠をちりばめた。

また、看板の周りには小さいタイルを敷き詰めた。「予算が足りなくてモザイク柄にできずにしょんぼりしていたら大工さんが、金魚型のタイルを見つけてきてくれて」。かくして、赤と青の金魚が愛らしいアクセントに。

手書きのメニューは、姉・和子さんによるもの。惚れ惚れするほど、端正な筆致!

こぢんまりとした店構えだが、品書きは実に多彩だ。酒は、下町らしくサワー類から焼酎、〈二毛作〉時代から得意の純米酒にナチュラルワインに、稀少なクラフトウイスキーまで。つまみも“ザ・居酒屋”な塩ゆで枝豆や刺し身の盛り合わせがあるかと思えば、ドレッシングにナンプラーを使ったサラダやタイ料理風の発酵ソーセージといったちょいエスニック、白いご飯が恋しくなる生姜焼きや、市販のルーをブレンドしたカレーのルーだけ=“カルー”までも!

カレーのルーだけだからカルー400円。「久保本家」生酛のどぶ750円との合わせは鉄板!

母・ヨシ子さんと姉・和子さんが店を手伝う家族経営なのもまた、愛される理由。近年、再開発の波が押し寄せるこの街にあって、〈ブンカ堂〉は、昭和から令和への襷を繋ぐ新星だ。

西村家のお手伝いシフトは火曜・木曜・日曜がお母さん、それ以外はお姉さんが担当です。

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ブンカ堂

東京都葛飾区立石4−27−9。15時〜24時(日・祝〜22時)。不定休。
tel.03-5654-9633

photo/
Tetsuya Ito
text/
Haruka Koishihara

本記事は雑誌BRUTUS899号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は899号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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ますます!おいしい酒場。(2019.08.16発行)

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