エンターテインメント

装幀の第一歩は、作品世界を呑み込むことから。|佐藤亜沙美

本を作る人。

No. 898(2019.08.01発行)
ことば、の答え。

サトウサンカイ デザイナー 佐藤亜沙美(第3回/全4回)

小説、エッセイ、写真集から実用書まで。佐藤亜沙美さんがデザインした書籍を書店で目にしない日はない。視線を感じるほどの不思議な強さをたたえたデザインはどこから生まれるのか。

書籍のデザインの進め方について教えてください。
佐藤亜沙美
雑誌と書籍では、同じデザインでも全く違う筋肉を使っている感じがします。雑誌が瞬発力での勝負なら、書籍の場合は時間をかけて本質を探しながら作っていく感じです。装幀のご依頼をいただいたら、まずはその本の原稿を読みます。編集意図も著者の方の労力も知らない人間が、初めて原稿を読んだときの第一印象を書き起こして、それをもとに提案のための資料を作ります。カバーや帯のイメージ、イラストレーターの提案、イラストの構図まで描くこともありますし、印刷で通常使われている4色のインクに加えて、特色という、特別に調合するインクや蛍光インクを使ったり特殊加工を施したり、という造本のプランをビジュアルでまとめて、最初の打ち合わせの場でお見せするんです。その資料をたたき台にして、この中でピントが合うものはありますか? 全然違いますか? とすり合わせていきます。
最初から、具体的なイメージとして提示されるんですね。
佐藤 
こんな造本にしたい、やってみたい、と相手を引き込んでいくには、最初の段階で世界観を共有することが大切だと感じています。あとは、自分の頭の中にある感想を手で書き出してみると、思わぬ派生が起きるというか、なんとなくのイメージだったものに不思議な力が加わって有機的に膨らんでいく。手を使って考えていくみたいな感触で、それが面白くて、このやり方を続けているというのもあるんですよね。(続く)
通称「であすす」のデザイン資料。

WEB連載から生まれたエッセイ、芥川賞作家の最新作も担当。

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さとう・あさみ

1982年生まれ。2014年〈サトウサンカイ〉設立。最近装幀を手がけた書籍に『女優の娘』『よかれと思ってやったのに―男たちの「失敗学」入門』『まほうの寓話』など。

第1回第2回第3回第4回

写真/
角戸菜摘
文/
鳥澤 光

本記事は雑誌BRUTUS898号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は898号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.898
ことば、の答え。(2019.08.01発行)

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