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ことば、を贈る。【感謝】ナイツ→内海桂子

ことば、を贈る。

No. 898(2019.08.01発行)
ことば、の答え。
浅草・東洋館の出番前の楽屋にて。ナイツから感謝の思いを込めて贈られた日本酒の一升瓶を、大事そうに抱きしめる桂子師匠。

“漫才師は、言葉で絵を描きなさい” その意味が、今やっとわかりました (ナイツ)

今や押しも押されもせぬ売れっ子芸人となったナイツと、長きにわたり漫才界を率いる内海桂子師匠。ナイツの2人から、“浅草の星”へと導いてくれた桂子師匠へ。積もりに積もった感謝を伝える機会に密着した。

内海桂子 
お猪口持ってきて、あれ、開けなさいよ(ナイツから贈られた日本酒の一升瓶を指差して)。
土屋伸之 
いやいや、開けないです(笑)。あとで飲んでくださいね。このあと出番ありますから。
塙宣之 
展開作るの速いです(笑)。師匠は初めて僕らに会った時のことは覚えていますか?
内海 
マセキの会長からの紹介で来たんじゃない?
土屋 
はい。
内海 
なんで来たのかなと思ったね。私は自分から「おいで」なんて言わないから。しかも女の芸人だし、当てにしっこないと思っているからね。
塙 
正直、僕らも訳がわからないままに来た感じです。
土屋 
そもそも、弟子に入るっていうのがどういうことかわからなかったんです。だから先輩や会長に言われるままに。
塙宣之、土屋伸之

内海 
でも、私のことはテレビやなんかで見てたでしょ。
塙 
そりゃもう、内海桂子好江っていったら、雲の上以上の存在ですよ。そもそも弟子にしてくれたことにまず「感謝」です。
土屋 
師匠は鞄持ちをさせるでもなく、すぐ現場に連れていってくれましたよね。
内海 
だって知らないもんね、あんたたちがどういうことをやるか。だから「こうしろ」とか言うんじゃなくて、まず舞台立ちなさいって。
塙 
まだコンビも組みたてで、5分のネタ1本しか持っていなかった時、いきなり今から20分の前説をやりなさいって言われて、タジタジになりました。途中から、本当に何にもしゃべれなくなっちゃって(笑)。それで、「あんたたち何にもできないね」って言われて。
内海 
そうだったね。でも私、細かいことは言わなかったでしょ。
塙 
そうですね。舞台の上で遠慮をする必要ないから、好きにやれと。でも漫才とはこうあるべき、みたいなことは教えてもらいました。
土屋 
塙さんは、師匠の“漫才師は、言葉で絵を描きなさい”という言葉を意識してやってきたんですよ。
塙 
あれ、実際のところどういう意味だったんですか?
内海 
漫才にはいろいろ形があるってことだよ。
塙 
え? 今日はもうちょっと掘り下げてもいいですか?(笑)
内海 
例えば噺家には、代々受け継がれているスタイルがあるでしょ。この師匠はこうっていう型があって、それを学びに入ってくるんだから。でも漫才は違う。決まった型があるわけじゃないから、その日のお客さんに合わせて漫才も変えていかないといけない。それが言葉で絵を描くということ。毎回同じじゃないのよ。
漫才は宇宙だ!

塙 
なるほど、やっと今意味がわかりました。
土屋 
当時は、なんか深い意味があるんだろうなと思って聴いていましたけどね(笑)。
塙 
師匠は絶対、お客さんを楽しませて帰りますからね。
内海 
お客さんと遊んでいるようなフリして、ちゃんと笑いの餌にする。お客さんを遊ばしてあげるんです。
塙 
僕らも、昔は機械的に漫才をやっていたのが、だんだん年を経て、目の前のお客さんと一緒に場を作ることを心がけるようになってきました。それも、師匠のスタイルに近づいてきているのかもしれないです。
土屋 
あと、師匠は「舞台に上がる時は、スーツを着なさい」とおっしゃってましたよね。
内海 
舞台に上がるっていうのは、特別なことだからね。今の若い人は、普段と同じ格好でいいと思ってる。
土屋 
『爆笑オンエアバトル』を見て、「漫才師が膝小僧を出すなんて」って怒ってましたよね。だから、僕らも最初は空気を読んで、スーツを着るしかないのかなと思ってたんですけど。いつもバシッとお着物を着て舞台に立つ師匠を見て、お客さんの前で漫才をやるっていうのはこういうことなんだ、と腑に落ちました。
塙 
ところで師匠は今年で100歳ですけど、長生きの秘訣は?
内海 
うん、そうだねえ。
土屋 
違います。「うん」じゃないですよ。100歳じゃなくて97歳です。
塙 
やっぱりお酒ですか?
内海 
そうだねえ、ほかに何もないもんね。あれ、開けていいよ(贈り物の日本酒を指差して)。
土屋 
別に我々、飲みたがっているわけじゃないんですよ(笑)。桂子師匠は、テレビを見るのもお好きですよね。
内海 
うん、テレビは見だしたら、一日中ずっと見てる。
塙 
最近は、来年の東京オリンピックの話題もよくテレビでやってますけど、チケットは取ったんですか?
内海 
いや。やっぱり私ら芸人だから、仕事で行ってみたいね〜。遠くから見ているんじゃなくて、じかに関わりたい。
土屋 
せっかくなら、やっぱり体感したいですよね。
塙 
ニュースといえば、師匠は「お前」問題どう思いますか? 今、話題になってるんですよ。中日ドラゴンズの応援歌に出てくる「お前」っていう表現が教育上良くないって。
土屋 
師匠は言葉遣いには厳しいですからね。ネタの終わりに「もういいよ」って言うなとか。そんな日本語はないから、「いい加減にしなさい」って言って終わりなさいとかね。
内海 
場面によって言葉遣いも変わるよ。考えるだけ奥は深いってこと。
土屋 
割と衝撃の言葉ですね(笑)。
塙 
我々には師匠の言葉が絶対なので、「もういいよ」って言っちゃダメなんだって、心に刺さっちゃってました。
内海 
いや、気にしすぎることはないけどね。
一同 
(笑)。
土屋 
最後に、今後の僕らに何かお言葉をいただけますか?
内海 
コンビは、喧嘩もするのよ。でもそれがいい。夫婦と違って、喧嘩したから別れるってことじゃない。ナイツの漫才は2人じゃなきゃできないんだから、2人で頑張りなさい。
塙 
おぼん・こぼん師匠にも伝えておきます!(笑)
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内海桂子

うつみ・けいこ/1922年東京生まれ。38年、16歳の時に漫才の初舞台を踏み〈内海桂子好江〉で人気を博す。現在も、現役のピン芸人として舞台に立ち続ける。日常を綴ったTwitterも話題。

ナイツ

塙宣之 ボケ担当、土屋伸之 ツッコミ担当。共に1978年千葉県生まれ。2001年にコンビを結成し、内海桂子師匠に弟子入り。『M−1グランプリ』では08年から3年連続で決勝進出。

photo/
Katsumi Omori
edit&text/
Emi Fukushima

本記事は雑誌BRUTUS898号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は898号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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