年々規模が拡大、『UNLIMITED EDITION』で韓国の独立出版物をチェック。
アートブックに特化した祭典『東京アートブックフェア』(以下TABF)が7月中旬に開催された。「表現の自由を!」と叫ばんばかりに、ZINEという場を謳歌する作家は年々増加し入場規制がかかるほど。しかし盛り上がりは日本だけではない! 上海、台湾、タイ、シンガポールなどアジアの至る地域でアートブックフェアが開催されている。
初めて訪れるなら、ソウルで開催されるアートブックフェア『UNLIMITED EDITION』(以下UE)がオススメ。アジアでは古株の2009年スタート、TABFが中止になった際は多くの日本人が出展したとか。こちらも年々規模が拡大し、昨年は220のチームが出展、約2万1500人が訪れた。独立出版物(個人やスタジオによる出版物のこと)の販売を中心に、ほかトークショーやフードも。主宰者であり書店〈YOUR MIND〉代表のIroは「UEは作家が自分の言葉で自分の本を語り、販売をする時間。昨年は節目の10回目ということもあり、10年間で最も注目された年でした」と話す。大手書店が軒並み廃業し、対して個人が開業した独立書店が増えているというユニークな状況下にある韓国。「10年前と比較すると、大手出版社よりも有名な作家や出版社が増えていてUEの人気の高まりを感じます。最近はデザインにこだわったスタジオやイラストレーター発行のアートブック、または読み物として面白く作家の魅力に価値が感じられる冊子、この二極化が顕著に進んでいます」
また、近年は他国の参加者も増加。「日本、中国、台湾、タイなど多くのアジアの方々が参加してくれるため、お客さんも新たな出会いを心待ちにしています」。自身も他国のアートブックフェアに参加、比較して違いは? 「直近で参加した上海は、会場がとても賑やかでエネルギーに満ち溢れていました。どの国も“本が好き”という気持ちは共通していますが、会場の雰囲気は国によって少しずつ異なっていて興味深いです」。今後はタイ(『バンコクアートブックフェア』9月5日〜8日)、上海(『UNFOLD』9月13日〜15日)でも開催。TABFが面白かった人、行けなくて悔しかった人、少し足を延ばして「アジアのアートブックフェア」も訪れてみては。
ブックコーディネーター・内沼晋太郎さん注目の韓国独立出版社。
「韓国の独立出版物は、その多様性や潔く独創的なデザインが魅力です。UEに行くときは、ぜひ本屋巡りも楽しんでみてください。開店や閉店、移転などのスピードが速いのでご注意を! 最新の情報はネットで調べたり、人にお薦めを聞いたりするのが確実です」。著書『本の未来を探す旅 ソウル』片手に書店巡りもおすすめ!
「韓国を中心に注目のアーティストをピックアップ。オンラインギャラリーと合わせてZINEを発行するシリーズ。2008年より刊行、最新刊は『#87 "First Cigarette in the Afternoon" BY Park Robynne.』」
「一枚を蛇腹に折って封入した独特のデザインで、気軽に読めるコミックやイラスト、短編小説などをたくさんリリースしている出版社」。写真は最新作『Tell her YOU LOVE her』。オリジナルの文具や雑貨も人気。
「グラフィックデザインを行いながら、小さな声を大切にした独立出版活動を続ける。写真の『서울의 목욕탕(ソウルの銭湯)』は、減りつつある、ソウルの銭湯文化のディテールを美しい写真で捉えた写真集」
内沼晋太郎
- design/
- Park Sun Kyung (UE11 Teaser)
- photo/
- Hwang Yeji (UE photo)
- text/
- Yoko Hasada
本記事は雑誌BRUTUS898号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は898号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。