ファッション

今、あえて三原康裕が手間のかかる革靴を、世に送り出す理由とは?

BRUTUSCOPE

No. 898(2019.08.01発行)
ことば、の答え。

熟練の職人の手によって一足ずつ生み出される特別仕様の革靴は、既製品では醸し出せない存在感が魅力だ。

「昔からみんなが口を揃えていいねというものに対して、一石を投じるタイプの人間かもしれない」

 そう話すのは〈ミハラヤスヒロ〉デザイナーの三原康裕。8月3日にアトリエ ミハラヤスヒロ限定シューズをリリース。メンズ、ウィメンズを合わせた3型は、いずれも昨今のスニーカーブームに逆行するかのような、クラシカルな革靴となっている。

「ファッションは常に新しさを求められ、変わり続けなければならないものですが、その一方で自分の中で変化できない気持ちが置き去りになっていることに気づいたんです。それが革靴を作りたいという単純な思いでした」

 三原が22歳の頃からの付き合いになる靴職人の早川嘉英と、「作るのが一番難しい靴はなんだろう?」と冗談で話すうちに、製作に至ったのが今回の靴だ。一枚のヌメ革でアッパーを形成したほっこりとした佇まいが特徴で、アッパー部分につなぎ目が一つもない珍しい仕様である。ヌメ革は伸びやすく、立体的な表革に裏革を縫い付けるなど、その工程には早川の勘に頼る部分も多い。当然、作業は数値化できるものではなく、量産もできない。しかし、店舗限定ながらあえて発売に踏み切った。

「僕は世の中、常にバランスだと思っています。今回リリースした3型の革靴は、興味のない人にとっては、なんてことない靴に見えるかもしれません。でもむしろ、スニーカーが全盛の時代には、そういう靴の方がカウンターカルチャーとして支持を集める場合もあると思うんです」

 自分の足に馴染ませたり、風合いの変化を楽しめるのも革靴ならではの魅力。果たしてどんな反響が巻き起こるのか? 注目したい。

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三原康裕

みはら・やすひろ/1972年長崎県生まれ。ファッションデザイナー。多摩美術大学在学中より独学で靴作りを始める。卒業後、シューズブランドとして〈ミハラヤスヒロ〉をスタート。その後、コレクションブランドとして、国内外問わず人気に。

atelier MIHARA YASUHIRO Limited shoes』

オリジナルの製法で製作。踵を含めてアッパーにつなぎ目がなく、ピタリと吸い付くような足入れを実現している。後染め加工も可能。一枚革の状態で染めるよりも、刷毛の跡が残ったり、濃淡が出やすいのが特徴だ。それによって経年変化による豊かな表情が味わえる。メゾン ミハラヤスヒロ表参道ヒルズ店内のアトリエ ミハラヤスヒロ限定での販売。左・右/サイドベルト短靴58,000円*左は後染め加工(+3,000円)を施したもの。中/外羽根短靴58,000円(共にメゾン ミハラヤスヒロ☎03・5775・7941)

photo/
Koichi Tanoue
text/
Hiroya Ishikawa

本記事は雑誌BRUTUS898号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は898号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.898
ことば、の答え。(2019.08.01発行)

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