アート

ビッグメゾンも熱視線。触覚的なスティル・ライフ。

BRUTUSCOPE

No. 897(2019.07.16発行)
決闘写真論
「ZEEN(ジーン)」とは、オランダ語で腱や繊維など「筋肉に付着して骨に強度を与える丈夫で柔軟な組織」を意味する解剖学用語。これに同国語の「zien(見る)」や「magazine」「禅」を言葉遊び的に掛け合わせたという。
「ZEEN(ジーン)」とは、オランダ語で腱や繊維など「筋肉に付着して骨に強度を与える丈夫で柔軟な組織」を意味する解剖学用語。これに同国語の「zien(見る)」や「magazine」「禅」を言葉遊び的に掛け合わせたという。

初期作から近作までをリミックス。シェルテンス&アベネスが作品集を発表。

 シェルテンス&アベネスは、公私ともにパートナーであるモーリス・シェルテンスとリースベス・アベネスによるアーティストユニットだ。雑誌のエディトリアルから、エルメスメゾンマルジェラバレンシアガといった世界中のブランドとのコミッションワークまでを手がけ、オランダのファッションフォトシーンを牽引するカップルとして知られている。

 2001年の結成以来、静物をモチーフとしたコンセプチュアルな写真作品を発表してきた2人。初期を代表する「Hidden Object」シリーズでは、ゴミや段ボール箱などをターンテーブルの上に置き、高速回転する様子を撮影。社会的に無価値なものに彫刻作品のようなイメージを与えるという、斬新なアプローチを見せた。

 さらに、このシリーズ以外にも、彼らは、ファッションブランドのハンガーを規則的に組み立てて撮影するなど、3次元の現象を構築しながらも、最終的には2次元の写真作品として提示してきた。その写真における2次元と3次元の関係性や平面性への強い意識は、一貫した審美性として彼らの全作品を支え、また各作品は別シリーズ同士であっても呼応し合っているともいえる。

 そんな2人は、今年の3月から6月にかけてアムステルダムのFoam写真美術館で初の回顧展を開催したばかり。同展に合わせて作られた作品集『ZEEN』(Case Publishing)は、全作品に通ずる独自の審美性に注目し、各作品が最初に発表された出版物を複製して収録している。また、7月21日まで、同著の出版記念展が東京・恵比寿にある書店/ギャラリー・POSTで開催中。そこでは実際の撮影セットを再現した展示空間で、彼らの初期作から近作までを通覧することができる。洗練されたイメージと垣間見える遊び心を感じてほしい。

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シェルテンス&アベネス

アムステルダムを拠点に活動するアーティストユニット。精緻な構図とミニマルな美意識を持った写真作品を多く手がける。2012年ニューヨーク国際写真センターが主宰するインフィニティ賞を受賞。

『ZEEN』

作品の触覚的なイメージを反映するように、カバーにはエンボス加工と箔押しが施されている。各ページに記されたコードからは、作品を依頼したクライアントが参照できるユニークな工夫も。〜7月21日、同著の出版記念展がPOST(東京都渋谷区恵比寿南2−10−3)で開催中。Case Publishing/4,960円(会期中特別価格、税込み)。

text/
Mami Hidaka

本記事は雑誌BRUTUS897号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は897号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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決闘写真論(2019.07.16発行)

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