エンターテインメント

マンガ家・タナカカツキとミュージシャン・YO−KINGによる男のサ道。

BRUTUSCOPE

No. 897(2019.07.16発行)
決闘写真論
タナカカツキ(左),YO-KING(右)

サウナはもはや大人の嗜みでもあり社交場でもある。生粋のサウナーが語るお作法解説。

サウナ大使としても活躍するマンガ家タナカカツキが、サウナー友達のミュージシャン・YO−KINGを誘って、フィンランド大使館を訪問。限られたVIPのみが利用を許される“大使専用サウナ”にてサウナートークを繰り広げた。

YO−KING 
サウナ大使、お声がけいただきありがとうございます〜。
タナカカツキ 
リニューアルした大使専用サウナにご招待いただいたんで、ぜひKINGと一緒にと。僕ら同世代で、学年は僕が1個上ですが、サウナ歴ではKINGが大先輩。レジェンドですから。
YO 
いやいやいや(笑)。
タナカ 
僕は若い頃はサウナなんて好きじゃなかったですよ、まったく。あんなんメタボゾンビの墓場やと思ってましたし。40代になってようやく扉を開けて。遅咲きなんです。一方、KINGは早熟で。20代の頃から出入りしてますよね。
YO 
初体験は20代前半かな。入ってみると、何分温まって、水風呂に入って休憩して、それを何セットか繰り返しましょうとイラスト付きの説明書きが飾ってあって。その通りにやり続けてたら、何回目かでぐわ〜っとキたんですよ。「うわ〜! みんな大好き〜!」
タナカ 
出た、「サウナトランス」(笑)。
YO 
超ポジティブな気持ちに包まれたんです。
タナカ 
当時のサウナに対する認識って、どれだけ我慢ができるか、どれだけ汗をかいたか、というのが一般的だったんです。でも、KINGは、いち早く「その後」に注目するんです。1998年、忌野清志郎さんとの対談で、これは日本のサウナ史において最も重要な対談だと思うんですが、KINGはこんなことを言ってるんです。「サウナでいちばんいいのは入ってるときじゃないんですよ。(中略)水風呂に入って、水風呂を出て、サウナに入った時間と同じだけ休憩とるんですよ。その間がサウナなんですよ!」(『BREATH』1998年11月号)。サウナに関してこういった発言がメディアに出たのはこれが最初だったと思うんです。98年といえば、みんなウィンドウズに夢中だった頃ですよ(笑)。その段階で、「ドーパミンが出て幸福感に包まれる」とも言ってますからね。僕が『サ道』を書いたのは2011年。当時はこの対談の存在を知らなかったから、その後に読んでびっくりしたんです。ああ、僕と同じこと言ってるやん! しかも10年以上前に! って。
YO 
サウナが好きな人は、こういうことをみんなわかってるんだろうと思ってたんです。だって、サウナに入ってるおじさんたちって、みんないい顔でグダーッとしてるじゃない。ああ、飛んでるんだなーって思ってましたもん(笑)。
タナカ 
僕、最初のうちはそういうことがよくわからなくて、気分悪いんかなと思って、声をかけたことがあるんです。大丈夫ですか? って。いま思えば、イッてるときに声をかけてたんですよね。
YO 
だめだめ声かけちゃ(笑)。
タナカ 
でもそういう体験って、それまではみんな言葉にはしなかったんです。それを客観的に観察して、「ドーパミンだ」と言ったKINGはすごいなと。
YO 
僕は快楽主義者ですけど、イケナイことをしてまで快楽を得ようとはしないので、合法的に飛ぶならサウナだなと。お酒も好きだけどそんなに飲めないし、ライブで飛ぶことはたまにありますけど、それとはちょっと種類が違うし。
タナカ 
そこに20代前半で気づいたと。
YO 
でも、カツキさんも漫画で描いているように、慣れてくるとだんだん飛ばなくなってくるんです。アレ? って。最初の頃に感じた「みんな大好き」が「ちょっと大好き」に減っちゃって。
タナカ 
中毒症状です、それは(笑)。サウナはほぼ毎日ですか?
YO 
忙しいかどうかにもよるんだけど、1日おきくらいかなあ。カツキさんは?
タナカ 
僕はお風呂みたいに使っているのでほぼ毎日。最近は、設備が充実してるサウナも多いし、電源もWi−Fiも完備されてるから仕事もできる。だから、出勤する感じでサウナに行ってるんです。
YO 
よく思うけど、サウナに慣れてる人って、ハダカになるのが早いですよね。
タナカ 
ロッカーでの服のしまい方もカラダが全部覚えてますからね。シャシャシャシャって柔術かなにかのようになんのよどみもなくスパッと。しかも、脱いでる瞬間を見せないようにもするんです。
YO 
わかる! わかるなあ〜。
タナカ 
脱いでるときは、変身してる最中のいちばん弱いサナギのとき。無防備だから見られたくないんです。他人が変身する姿も見ないようにしますよね。
YO 
あえて見ない。そこは「品」です。そういったところも鍛えられますよね、サウナは「サ道」、道場ですから。
タナカ 
ていうか、マニアックすぎ。脱いでる途中の話なんてどうでもええわ。
YO 
あはははは(笑)。
タナカ 
サウナ初心者のために話を戻しましょう。KINGが言うように、サウナって、クールダウンが本番ですから、すべての工程が終わったときにやってくるんです、気持ちいいのが。その状態を「ととのう」と僕は言ってるんですが、初心者にとって、サウナで障壁と感じるのが水風呂やと思うんです。KINGはすぐに入ることはできました? 
YO 
プールに通ってたんで、水に入るのは抵抗がなかったんです。しかも、子供の頃からちょっとM的に長風呂を我慢する方だったんで、のぼせてクラッとする感じが好きなんです。水風呂できゅーっとなる感覚も結構好きというか。
タナカ 
フワッと落ちる感じって子供は好きですよね。僕も椅子でぐるぐる回ったり、静脈をちょっと止めたりして……ってそういう話じゃなくて(笑)。
YO 
水風呂ね。サウナ好きの水風呂のベストは16℃ですよね。
タナカ 
16ですね。
YO 
16にしてるところに行くと、「水風呂16℃」って書いてあったりしますよね。ウチはわかってますよと。
タナカ 
水を冷やすって結構大変なんです。16℃は水道水より全然冷たいから、安定的に冷たくできるのは、ウチにはいいチラーがあるっていう自慢なんです。
YO 
チラー?
タナカ 
冷却装置のことです。何百万もするいいチラーがないと16℃以下には絶対にならないんです。ってまた話がマニアック(笑)。で、どうですか、サウナに通ってカラダの変化はあります?
YO 
汗をよくかくようになったし、寝付きもいい、眠りも深い。もともと、心配事をしないタイプなんですが、どんどんしなくなりましたね。考えなくていいことは、考えなくなっちゃった(笑)。
タナカ 
思考を推し進めていくと、だんだん自己批判になっていくから、その前で止まるようになりますよね。平たく言えばバカになるってことですけど(笑)。
YO 
そうかも。だんだん自分が宇宙の一部だと感じるようになりますもん。
タナカ タナカ 
カラダの感覚が徐々に変わるから五感も変わるんですよね。遠くの音が聞こえたり、目が見えるようになったり。覚醒するんです、血液の循環が良くなって酸素が脳に供給されて。と同時に心も広がっていく。だから、悩まなくなるし、みんな大好きって気分になるんです。
YO 
飼ったことのない犬を飼ってみようって思うもん(笑)。
タナカ 
とにかく、ビギナーは、評判のいいサウナに行くと話が早いです。僕のいちばんのおすすめは、フィンランドのラップランド方面にある〈ピュハピーロ〉。このサウナはタイミングがよければオーロラも見える天国のような場所にあるんです。ぜひ体験してほしいですが、遠すぎ(笑)。日本で挙げるなら〈スカイスパYOKOHAMA〉かな。フィンランド式サウナで温度も湿度もバッチリ。ロウリュもしょっちゅうやってます。
YO 
ロウリュといえば、掛け声が各施設でいろいろあるじゃないですか。「イチ、ニッ、サウナー!」ってところがあって(笑)。みんなで言わなきゃいけない空気感があるから、僕も郷に入ればでそこへ行くと言うんですよ。
タナカ 歌うところもありますよ。「ある日〜森の中」と輪唱して、最後の「ラララ♪」で、タオルをぶんぶん振り回す(笑)。人数が少ないと地獄です、オッサン2〜3人で歌う「森のくまさん」は。
駐日フィンランド大使館内にある大使専用サウナ。ロウリュもできる本格派だ。

人生いろいろ、サウナもいろいろ。

仕事もできるサウナ。

〈スカイスパYOKOHAMA〉は駅直結。湿度高めのフィンランド式サウナが大量発汗を促す。レストランのメニューも豊富でコワーキングスペースも。宿泊可。●神奈川横浜市西区高島2−19−12 スカイビル14F☎045・461・1126。10時30分〜翌9時。無休。

極めたいなら本場フィンランドへ。

フィンランドにはさまざまなサウナがある。薪を燃やして煙を充満させるスモークサウナ、厚い氷のブロックで作るアイスサウナ。タナカカツキさんイチオシの〈ピュハピーロ〉は家具や小物のセンスがとってもいいそう。オーロラを見ながら入ってみたい!

サウナビギナーに捧げる奥義。

1. サウナの真髄は水風呂と休憩にあり。
2. 品位を保ったままハダカになるべし。
3. ロウリュの掛け声は恥ずかしがるな。

サウナ→水風呂→休憩が1セット。これを2〜3回リピートすることから始めよう。水風呂は繰り返すうちに慣れてくるのでぜひ挑戦を。また、サウナは我慢比べではないので限界を感じたらクールダウンしよう。水分補給も忘れずに。

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ドラマ『サ道』

タナカカツキさんの『マンガ サ道〜マンガで読むサウナ道〜』がドラマ化。7月19日テレビ東京・ドラマ25(毎週金曜深夜0時52分〜)で放送開始。出演は原田泰造、三宅弘城、磯村勇斗、宅麻伸ほか。主題歌はコーネリアスがドラマ用に書き下ろした曲「サウナ好きすぎ」。

タナカカツキ

1966年大阪府生まれ。自身のサウナ体験をマンガにした『マンガ サ道〜マンガで読むサウナ道』(1巻・2巻)発売中。日本サウナ・スパ協会が公式に任命したサウナ大使も務める。

YO-KING

ヨー・キング/1967年東京都生まれ。89年、真心ブラザーズとしてデビュー。デビュー30周年記念のセルフカバー・アルバム『トランタン』を9月4日に発売。全国ツアーも開催。

photo/
Koichi Tanoue, Harri Tarvainen for Visit Finland
text/
Izumi Karashima

本記事は雑誌BRUTUS897号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は897号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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