FUJICOMMUNICATION / サエキ飯店

グルマン温故知新

No. 896(2019.07.01発行)
新・珍奇植物

稀少なワインと味わう、チャイニーズ。

中国料理やエスニック料理をワインとともに、というスタイルはすっかり定着した感がある。それだけに、今や「どんなワインを選んでいるか?」が、店の個性となる時代に。ジョージアワインに愛を注ぐ広東ベースの料理と、ナチュラルワインを厳選する台湾料理を。

FUJICOMMUNICATION(江戸川橋)

台湾フードに恋した2人によるカジュアル酒場。

 この店を2人で営む齋藤翼さんは飲食店の立ち上げ請負人、近藤喬哉さんはヒルトン東京のサービスマン&飲食コンサルタントという経歴を持つ。高校の同級生で野球部仲間という2人が、意気投合してこの春開いたのは、水餃子やルーローハンといった台湾でお馴染みのストリートフードとナチュラルなワインを楽しめる店だ。

 開店準備中に台湾に渡り人気店を片っ端から食べ歩き、ローカルフードの穏やかな味わいが、提供したいと思っていたワインに合う、と確信を得た。

 看板メニューである自家製水餃子の皮は、強力粉と塩、水のみで熟成時間などを工夫し、モチモチしていつつ歯切れの良い食感を実現。中身のあんやほかの料理も、化学調味料は使わずに素材の優しい旨味で仕上げる。

 水餃子に使っている、台湾の香辛料「マーガオ」に、すっかりハマったという2人。夜市風の串焼きやソーセージなどの新メニューも続々登場中だ。

マーガオ餃子

豚肉、ニラ&白菜、エビと全4種類ある水餃子の中でも一番人気。あんの具材は豚肉、白菜、セロリというシンプルな構成。仕上げに、台湾の稀少な香辛料「マーガオ(馬告)」を削りかけることで、レモングラスを思わせる爽やかな香りが立ち上る。卓上にタレがあるが、まずはそのままで。680円

蒸し鶏パクチーのサラダ クミンソース

箸休めにオーダーしたい、ほぐした蒸し鶏とパクチーを合わせたサラダには、梅酢ベースにクミンが香る特製ドレッシングを使用。500円。小皿料理は350円〜で、ほかには厚揚げの台湾風、台湾産ピータン冷奴などが。

ルーローハン

こってり甘めなタイプとは一線を画すさらっとした味わいは、豚皮を使わず糖分をキャラメリゼしていないから。とはいえ、豚肉を大きくカットし、食感を楽しめるようにしている。750円(大)。500円(小)もあり。

サエキ飯店(目黒)

香港の普段着ご飯とジョージアワインを。

 今年の春に開店するや否や、破竹の勢いで人気急上昇のチャイニーズがこちら。

 店主の佐伯悠太郎さんは〈聘珍樓〉〈福臨門〉〈赤坂璃宮〉という、広東料理の名店での修業経験を持ち、中国料理人としていわばサラブレッド。その一方でワーキングホリデー制度を活用して香港のローカル店で働いたり、アルゼンチンジョージアなど33ヵ国を1年かけて巡り、ユニークなキャリアを築いた。

 そうした経験と、料理人としての基礎となっている広東料理の技術とが反映された料理はよそ行きではない、香港で日常的に食べられているものが中心だ。日本では馴染みが薄いカエルも「香港では牛・豚・鶏に次いでポピュラーで、おいしくてインパクトがある」と佐伯さん。

 そのパートナーとして推すのが、旅をして惚れ込んだジョージアワイン。昔ながらの製法による画一化されていない味わいは、旬の食材を多用した、気取らない料理によく合う。

野生ガエルと中国セロリ、九条ネギの炒めもの

千葉・館山から生きたまま届くカエルは、下味をつけてからカラッと揚げ、さらに炒めて味ととろみをつけてから、仕上げに土鍋で熱してフランベするように紹興酒の香りをまとわせる。プリッとジューシーな肉が新鮮さを物語り、香味野菜との相性も上々。料理はすべて、8,000円のおまかせコースから。

冬瓜、広東白菜、茎ブロッコリーの 上湯干し貝柱あんかけ

メインの魚料理のあとにはさらりとした一品が。あらかじめ煮た冬瓜と、生の野菜をさっと炒めて、クリアな旨味の上湯に干し貝柱を加えたあんで仕上げる。

烏骨鶏と金華ハムの薬膳スープそば

あっさりとしていながら深い滋味を感じる烏骨鶏と金華ハムのスープに、滋養強壮効果に優れた黄耆や山薬(干しヤマイモ)などの生薬を加えて栄養満点に。歯切れのいい食感の極細麺は〈橋爪製麺〉の特注品だ。

FUJICOMMUNICATION

電話:03・5579・2712
営業時間:11時30分〜14時LO、17時30分〜22時LO。
酒:ビール640円〜。グラスワイン700円〜。ボトルワイン3,600円〜。
価格:水餃子580円〜。小皿料理350円〜。一品料理500円〜。飯・麺500円〜。
席数 :カウンター7席。テーブル6卓16名。

東京都新宿区水道町1−23 石川ビル2F。月曜休。交通:東京メトロ江戸川橋駅から徒歩7分。2019年3月オープン。飲食店らしからぬちょっと不思議な店名は、齋藤さんと近藤さん、名字に「藤(フジ)」を持つ2人の名前にちなんでいる。ワインのセレクト担当は、齋藤さん。自身が飲んだことのある銘柄や造り手を中心に、軽やかでフルーティな、料理に合うものを揃える。

サエキ飯店

電話:03・6303・4735
営業時間:18時〜21時最終入店。
酒:クラフトビール900円〜。グラスワイン1,000円〜。紹興酒800円〜。
価格:おまかせコースは5,500円と8,000円の2種類。
席数 :カウンター7席。テーブル1卓4席。

東京都目黒区三田2−10−30 荒井ビル1F。不定休。交通:JR・東急目黒目黒駅から徒歩5分。2019年4月オープン。ジョージアワインはスパークリング・ロゼ・オレンジ・レッドなどを幅広く取り揃える。ボトルは常時12〜13種類をラインナップし、5,500円〜。ほかに紹興酒や香港クラフトビール「Lion Rock」も用意している。1人で切り盛りしているため、予約は1日3組まで。要予約。

文/
小石原はるか
photo/
Hisashi Okamoto

本記事は雑誌BRUTUS896号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は896号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.896
新・珍奇植物(2019.07.01発行)

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