おいしいベンガル料理を食べるため、2人の奏者がレシピ本を制作。

BRUTUSCOPE

No. 895(2019.06.14発行)
名古屋の正解
石濱匡雄
U-zhaan

ユザーンの願望で作った石濱匡雄のベンガル料理のレシピ本『ベンガル料理はおいしい』が発刊。

まだ日本でも数少ないベンガル料理のレシピ本を「自分が欲しかったから」という理由で企画したタブラ奏者・ユザーンと、レシピ&調理を担当したシタール奏者・石濱匡雄の2人に話を聞いた。

ユザーン 
以前から匡雄さんの作るベンガル料理の大ファンで。「自宅であの味を再現するために、彼のレシピを手元に置いておきたい」という個人的な欲求から企画した本なので、「僕自身が使いやすいレシピ集にする」というところだけはブレないようにしました。エンターテインメント性を上げすぎて、レシピ部分がわかりにくくなったら本末転倒ですしね。デザイン担当の長嶋りかこさんたちは僕の意図を汲んで、とても実用的で美しいデザインに仕上げてくれました。
石濱匡雄 
この企画を湯沢くん(ユザーンの本名)から聞いた時「まあええよ」とは答えたものの、内心は「こんなの実現せえへんやろうな」と思っていて。だから本当に話が動きだした時には正直驚きました(笑)。それで、まず料理教室を不定期に開催してみて。料理をする習慣がない人はどこで失敗するのかとか、中火と伝えた時にどの程度の火力にするかとか、細かいことを観察してました。
ユザーン 
料理教室、この本のためにやってたんだ。僕はてっきり、とうとうシタール奏者からベンガル料理人の方にシフトしていくつもりなのかと思ってた。
石濱 
違うって。辛さなんかも、俺や湯沢くんの好みに合わせて作ると大抵の人には強すぎるんやなあとか、いろいろ研究しててん。その成果はしっかり出てると思うけど、本当にこのレシピでみんな作れるのかなとは少しだけ心配してる。
ユザーン 
この前、本のレシピ通りにキチュリを作ってみたけど、きちんと匡雄さんの味に仕上がったから大丈夫だと思うよ。程よくスパイシーでおいしかった。
石濱 
それは嬉しい報告やね。本書中の料理のいくつかは、読者のほとんどの人が味の想像もできないままレシピを頼りに作る形になると思うから、できる限り分量とかもわかりやすくしたかった。それと、インド料理って「まずタマネギを弱火で1時間炒めて」みたいな手間のかかるイメージを持たれがちやんか。そんなことしなくてもおいしく出来上がる、シンプルなレシピを知ってほしかってん。
ユザーン 
一番のオススメは何?
石濱 
シラスと野菜の碗チョッチョリかな。耐熱容器に材料を入れて蓋をしたら、電子レンジで加熱するだけで仕上がる。
ユザーン 
そりゃ簡単そうだね。しかも、チョッチョリってかなりおいしいよね。
石濱 
せやねん。あんなにうまいのに手間要らずで。あとは、時間はちょっとかかるけどマトンチャップも簡単やね。材料の仕込みが終わったら、弱火で放置しておくだけ。でも、湯沢くんのイチオシ料理はやっぱりあれなんやんな。
ユザーン 
そう、ショルシェ・マーチ。日本中の人にこのおいしさを知ってもらいたい、というのがこの本のもう一つのテーマでもあるくらい。魚だと、ルイマーチル・ジョルも食べてみてほしいな。ルイは日本でいうコイなんだけど、カレーにした時のポテンシャルが半端ない。
石濱 
ベンガル人、みんなルイが大好きやもんね。湯沢くんは養殖業者からコイの一匹買いとかしてるんやろ?
ユザーン 
そう、ネットで注文して。現地で食べるルイよりも、日本のコイの方が脂ものってておいしい気がするよ。匡雄さんは輸入食材屋さんから現地のルイを買ってるんでしょ?
石濱 
そうやね。今はなんでも手に入るから。この本にも「マスタードオイル」とか「パンチフォロン」とか、日本では一般的ではない食材がたまに出てくるけどインターネット上で購入できるし。
ユザーン 
基本的には日本で入手しやすい食材でレシピにしてくれてるしね。
石濱 
うん。魚もサケやアジ、サバのようなスーパーで気軽に買えるものを中心に使ってるし、本来はパニール(インドのカッテージチーズ)を使うメニューも厚揚げで代用したりとか。でも味と調理法は、ほぼいつも作ってるまんま。
ユザーン 
本格的な、手加減なしのベンガル料理なんだ。
石濱 
そう言ってしまうと取っつきにくい料理本なのかと思われそうやけど、ほんまに誰でも気軽に家で作れるようになってるはずやから。そこは信じてほしい。
ユザーン 
信じてもらえるといいね(笑)。
キチュリ

ムング豆と米、数種類の野菜を一緒に炊いた、ベンガルスタイルのおじや。ベンガルではこれを食べて体を温め、体調を整える。

シラスと野菜の 碗チョッチョリ

調理は刻んだ野菜とシラスにマスタードオイルとターメリックを混ぜ込み、加熱するだけ。風味が香る存在感のある野菜料理。

マトンチャップ

調味料を揉み込んだ骨付きのマトンを1晩寝かし、数時間煮込めば出来上がる、コルカタのイスラム系カレー。パンにもビリヤニにもぴったり。

ショルシェ・ マーチ

魚をマスタードペーストで煮た、ベンガル料理の代名詞ともいえる魚のカレー。ベンガル料理初心者にオススメの一品。

ルイマーチル・ ジョル

ベンガル人が好んで食べている、コイを使ったカレー。コイの入手が難しい場合はサバやアユなどほかの魚でもおいしく出来上がる。

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『ベンガル料理はおいしい』

インド・西ベンガル州からバングラデシュにかけて広がる地域(ベンガル地方)の料理、ベンガル料理のレシピ本。ユザーンが「日本一おいしい」と語る石濱匡雄のレシピの中から、日本でも手に入る食材を使ったシンプルなものから本格的なものまで、ダール(汁物)やメイン、デザート、チャイなどの35品が眺めるだけでお腹の空いてくる料理写真とともに丁寧に解説されている。NUMABOOKS/1,850円。

いしはま・ただお

1979年大阪府生まれ。シタール奏者。15歳でインドの弦楽器シタールを始め、その後モノジ・シャンカール氏に師事。国内外での演奏活動やラジオパーソナリティを務める。今年6月にコルカタ、NY大阪で収録したニューアルバムをリリース。

ユザーン

1977年埼玉県生まれ。タブラ奏者。オニンド・チャタルジー、ザキール・フセインの両氏にタブラを師事。2014年坂本龍一コーネリアス、ハナレグミらを迎えたソロアルバム、『Tabla Rock Mountain』をリリース。著書に『ムンバイなう。』など。

photo/
Norio Kidera, Yusuke Abe (U-zhaan portrait)
text/
Konomi Sasaki

本記事は雑誌BRUTUS895号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は895号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.895
名古屋の正解(2019.06.14発行)

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