アート、イラストレーション、デザインなどの垣根を越えて活動する3人。我喜屋位瑳務、高木真希人、寺本愛のグループ展が開催。
日常の中に潜む、摩訶不思議な世界。その危うさをポップなタッチで表現する3人のアーティストによるグループ展『Grand Menu』。今、最も描きたかった新作のことなど、それぞれの思いを語ってもらった。
- 我喜屋位瑳務
- この3人は、面識はあるけれど、特に普段よく交流しているわけでもなくて。
- 高木真希人
- そうですね、交流はそんなにないですね。
- 寺本愛
- 意外とね。
- 我喜屋
- みんな〈FARO Kagurazaka〉で展示をしたことがあって、ディレクターの佐々木真純さん(アートキュレーター)が、「この3人で展示会をしてみない?」と声をかけてくれたんです。タイトルも、打ち合わせで行った焼肉屋さんのメニューに「Grand Menu」って書いてあるのが目に留まって、「あ、これでいいんじゃない?」って(笑)。
- 寺本
- そこから、それぞれ新作を2点くらい制作して、旧作も交ぜて展示しよう、ということになりました。みんな作品は多めに持ってきていて、佐々木さんと相談したり会場に並べたりして決めていきました。
- 高木
- 展示する作品のセレクトも配置も、すんなり決定しましたよね。
- 我喜屋
- 特にタイトルテーマを強く意識することも、3人ですり合わせすることもなかったのに、それぞれの作品を持ち寄って設営を終えると、思った以上にしっくりきました。
- 高木
- でも、「Grand Menu」っていう響きは、少し意識していたかも。そんなことないですか?
- 我喜屋
- まったくない(笑)。いつも通りって感じです。ただ、テーマとは関係なく、取りかかる前はいつも怖いよね。いいものができるかどうかって。みんなそうだと思うけど。
- 寺本
- それはありますね。私もテーマは意識しなかったけど、前回の個展から作品に色を入れ始めて、やっとピンとくるようになってきたので、今回の新作にも色が入ったものを加えています。今までは、あまり色を使うことまで考えられなくて。色って、その色が持つイメージがすごくたくさんあるじゃないですか。赤なら赤、という。それがうまく取り入れられなかったんです。最近はちょっとずつ、自分の思い通りに使えるようになってきたかな。
- 我喜屋
- 僕も最近少し作品に変化があって、アメコミの広告みたいな印刷物そのものを、いったんバラバラにして、自分の感覚で再度組み立ててから、それを描き起こす、というのをやり始めたところです。今までは、コラージュを描くような感覚で制作していて、もちろんそれも続けていくんですけれど、もっと細かな線をバラしてから再構築するのが、今、旬の描き方ですね。
- 高木
- 私は先に2人の個展をここで観ていたので、「この2人の間に入っていくにはどうする?」というのが、自分の中の課題としてありました。これまでは結構シンプルに作っていたんですけれど、今回は少しモノの要素や角度の違う光などを加えて、手数を増やすことにチャレンジしています。より複雑にすることで、バリエーションを出していきました。
寺本 普段、たまにしか交流はないけれど、こうして作品を目の当たりにすると、やっぱり刺激を受けますね。いつもその刺激を、それぞれ静かに持ち帰っている気がします。
- 高木
- 画面の中でコミュニケーションしているようなところはありますよね。ここでしか観られない、3つ合わさった特殊な“変さ”を味わってもらいたいです。
- 我喜屋
- うん、もっと世の中に「こんな変な絵があるんだよ」ってことを知ってほしいですね。どうしてもわかりやすいものの方が表に出やすいじゃないですか。それはそれでいいのかもしれないけれど、観た人が「なんでこうなるの?」って疑問を感じることも、一つのコミュニケーションではないかと。そんなふうに自由な角度で楽しんでみてください。



寺本 愛
てらもと・あい/大学で美術と服飾を学び、様々な時代と地域が持つ服飾の機能性と、文化背景の表象としての装飾性を接続し、それを纏う人々の暮らしを描く。取材を通じて得たイメージにフィクションを織り交ぜながら昇華させる作品が話題を呼んでいる。
- photo/
- Masayuki Nakaya
- text/
- Sayaka Takahashi
- edit/
- Asuka Ochi
本記事は雑誌BRUTUS895号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は895号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。