写真

気鋭の写真家が作り出す、つじつまの合わない展示空間。

BRUTUSCOPE

No. 894(2019.06.01発行)
愛と欲のスニーカー
出展作品より、Untitled, for「Room. Pt. 1」(2019)。とあるホテルの一室を切り取ったこの作品は、シート状の塩化ビニルにプリント。会場では、透明感を持ったこれらのイメージを幾重にも重ね、壁に釘で打ち付けて展示している。
上の作品に同じく、Untitled, for「Room. Pt. 1」(201 9)。ほぼ同じ構図で撮影されたこれらホテルの内観のほか、訪れた洞窟や旅先での風景を、重層的な構造で見せることによって、過去や記憶の不安定さ、不確かさを表現している。

近年、音楽やZINE制作など、写真にとどまらない活躍を見せる横田大輔の3年ぶりの個展が開催中。

 銀座のガーディアン・ガーデンが主催する公募展の入選者たちの、その後の活躍を紹介する展覧会シリーズ『The Second Stage at GG』。その50回目として、現在、写真家・横田大輔の個展『Room. Pt. 1』が開催中だ。

 横田は一貫して「記憶と現在」「イメージと現実」など対照的な物事の関係性を、荒々しくも繊細な作風で表現してきた。その作品は、第2回写真『1_WALL』グランプリ(2010)や、オランダ・アムステルダムの写真フェア『Unseen』でのOUTSET|UNSEEN Exhibition Fund(2013)、フォーム・ポール・ハフ・アワード(2016)を受賞するなど、国内外で高く評価されている。

 日本のみならず、アムステルダムのFoam写真美術館で2度の個展を開催したほか、テート・モダンやポンピドゥー・センター・メスでのグループ展やあいちトリエンナーレ2016などの芸術祭にも参加してきた横田。そんな彼にとって、日本では3年ぶりの個展となる本展は、塩化ビニルシートを幾重にも重ねた平面作品から印画紙を用いたインスタレーション、マルチ・チャンネルの映像まで、様々なメディアによって構成される。一連の作品群には、横田が長年にわたって定点観測的に撮影してきたホテルの部屋や洞窟、旅をした土地の風景などが登場する。

 それらイメージの集積が、鑑賞者によってつじつまの合う一つの記憶として統合されることを避け、断片のまま無防備に提示される本展。それは、横田にとってはどんなイメージも一時的な姿に過ぎず、常に変わりゆくものであることを物語る。

『横田大輔展「Room. Pt. 1」』

日本では3年ぶりとなる新作個展。~6月22日、ガーディアン・ガーデン(東京都中央区銀座7−3−5 ヒューリック銀座7丁目ビルB1)で開催中。11時~19時。日曜休館。詳細は公式HPへ。http://rcc.recruit.co.jp/gg/

横田大輔

よこた・だいすけ/1983年埼玉県生まれ。写真家。「像」としての写真を解体することで更新されるイメージの定着を試みている。フィルムの高温現像や過度なレタッチ、複写など、写真現像やプリントにまつわる様々な手法を駆使しながら生み出される一連の作品群は、ざらついた質感を持つ。

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Mami Hidaka

本記事は雑誌BRUTUS894号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は894号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.894
愛と欲のスニーカー(2019.06.01発行)

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