音楽・ラジオ

EGO−WRAPPIN'とほしよりこ。生み出すことをやめられない、表現者たちの対話。

BRUTUSCOPE

No. 894(2019.06.01発行)
愛と欲のスニーカー
ほしよりこ(手前)、EGO−WRAPPIN'(奥)中納良恵(右/Vo、作詞・作曲)と、森雅樹(左/G、作曲)

EGO−WRAPPIN'が6年ぶりに待望のニューアルバムを発表。かねてより交流のある漫画家ほしよりことの対談が実現。

森雅樹 
ほしさんがアニメーションを手がけたエド・シーランのMV見たけど、めっちゃよかったよね。
中納良恵 
いつ見ても泣けるの。
ほしよりこ 
制作中はすごく描いて、見すぎて、客観性もなくなりすぎて、大丈夫かなと思っていたから、いろんな人から「泣ける」って言われたのがすごく不思議だった。
中納 
今回のアニメーションに限らず、ほしさんの漫画は動きがいつも愛らしいの。それだけでキューンってなるし、涙腺袋みたいなものを突かれる。でもそれは、そうしようと思っても突けないと思うんだよね。
ほし 
『きょうの猫村さん』を出したときも、『逢沢りく』もそうだったけど、誰かを感動させようとか泣かせようと思ったことは一回もない。だから人が全然違う反応をすることにびっくりするし、そういうのがすごく楽しいなって思う。思った通りのことにならなくて、読まれることによって息が吹き込まれるような。自分はある一面を見て描いているけど、ほかの人がその人の違う面を見てくれているのがすごくいいことだし、私が描いたのは、私の中だけの人じゃなくてよかったなって思う。
中納 
ベトベトしていない、執着的じゃないところが逆に何かを残していく感じがして、すごく後味が長い。愛情ではなく、愛。だから夢中になって、突き動かされるのかな、と。
ほし 
よっちゃんは歌詞を作るとき、受け手のイメージとか考えるの?
中納 
イメージしすぎるとズレるというか、自分の中の、ちょっといいように見られたい、みたいな方向になっていってしまう。そうなると歌ってて気持ち悪くなるから、そうならないように修正したりはする。最初に森くんのギターから引っ張られるメロディが出てきて、そこに言葉が乗っかるから、初めの衝動で出てきたことに従おうと思っていて。
ほし 
ちなみに曲は、いつもどんなふうに作っているの?
中納 
詞は帰ってから練るんだけど、それこそ森くんと合わせているときに自然に出てくるというか、例えば母音で、うわわわぁ、えぃえええ〜わ♪とか、まずリズムが出てくるの。
森 
そう、リズムが大事なんだよね。
中納 
特にそこは意識するようになっていて。ポップにするのに、リズムで言葉を乗せるメロディを作ることが、すごく重要な感じがしている。
森 
最近ライブでコーラスとかもやるんだけど、よっちゃんの歌詞って難しくてなかなか覚えられない(笑)。でも、ダンダンダララン♪みたいにリズムで覚えたら、言葉も覚えられるって感じたんだよね。
ほし 
エゴの曲って、すごく浮遊感があるよね。歌をアクション化していくみたいな。それと、キラキラしたものがある。私はそれを“宇宙っぽい”と思っていて。声が通信している感じというか、聴いていると昇華していくような感覚。ちなみに今作だと、「oh boy, oh girl」がすごく好き。それから「衛星ハロー」の歌詞が面白くて、ゆっくり進む物語を見ているような気持ちになった。
中納 
すごく嬉しい。
ほし 
「oh boy, oh girl」は最後ちょっぴり切なくなって、“あの子は星になって 笑った”ってところにグーッてなった。これもやっぱり私の中で、くるくるって昇華していくエゴラッピンのコスモ感なんだよね。
中納 
ほしさんの言う“宇宙感”に通じるかわからないけど、森くんともう20年以上やってきて当たり前みたいになっているけど、こんなふうに森くんのギターの音色に引っ張られるって、それこそエネルギーの交換で、いつも面白いなと思う。2人でスタジオに入っても、何もしゃべらず、ひたすらガーッと音を出すだけで作っていく、エネルギーの交換。
森 
2人でジャムっているときはすごく没頭してるし、作っていて一番気持ちがいい瞬間。今回は、その積み重ねでできたアルバム。音遊びの延長みたいな。それこそ、さっきよっちゃんが言った、原型はあまり壊さずに言葉を乗せて、リズムは大切に、という。一方で、これじゃあよっちゃんにとって面白くないのでは、もっと新しいものを生まなくては、というプレッシャーもある。その時点でやりとりは始まっていて、ターゲットはよっちゃんであり、周りにいる信頼できる仲間たち。
中納 
今回はバンド編成もグワンと変えてみたよね。新しいメンバーは感性が結構近くて、もらうもの、引き出されるものも多い。
森 
アルバムでは「timeless tree」と「CAPTURE」の2曲だけだったけど、一緒にやって新鮮だったよね。
中納 
一発目の中野サンプラザのライブは、スリルも満点。
ほし 
あ、「CAPTURE」は探偵モノの主題歌なんだね。
森 
嬉しいことに、いつも探偵。
ほし 
ドラマチックな始まりの曲が多いからかな。ドラマチックで、ちょっとミステリアスで。
中納 
イントロは強いもんね。アウトロは弱いのだけど……。
ほし 
でも、いつもライブの最後で「サニーサイドメロディー」を聴くと、愛だーって思えるよ!

『Dream Baby Dream』

6年ぶりとなる9枚目のニューアルバム。リズムボックスとパーカッション、神秘的なリリックが絡み合う魅惑的な「Arab no Yuki」で幕を開け、10月より放送開始のアニメ『歌舞伎町シャーロック』のオープニングテーマとなる哀愁と怪しさに溢れた「CAPTURE」、ドラマ『フルーツ宅配便』のオープニングテーマとして書き下ろされた「裸足の果実」など全11曲収録。3,000円。12inchアナログ盤も同時発売中。

ほしよりこ

1974年生まれ。マンガ家、イラストレーター。『きょうの猫村さん』(マガジンハウス)、『逢沢りく』(文藝春秋)などの作品で知られる。エド・シーランの楽曲「スーパーマーケット・フラワーズ」のMVで初挑戦したアニメーションが話題になっている。

EGO−WRAPPIN'

エゴ・ラッピン/1996年、中納良恵(Vo、作詞・作曲)と、森雅樹(G、作曲)が大阪で結成した音楽ユニット。9枚目のニューアルバム『Dream Baby Dream』のリリースツアーが7月3日から全国各都市で開始。https://www.egowrappin.com

illustration/
Yoriko Hoshi
text/
Chisa Nishinoiri

本記事は雑誌BRUTUS894号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は894号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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愛と欲のスニーカー(2019.06.01発行)

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