エンターテインメント

貝殻の本

菅原 敏「詩人と暮らし」

No. 893(2019.05.15発行)
新・日本のイタリアン。

母は泣いたし
父は悲しそうな笑顔で
弟は部屋にひきこもり
犬は新聞紙をびりびり破き
風呂は煮立って
トースターは爆発
家の一階もう沈んでしまった
それでも私 
あなたのことを許すから
本を一冊 ラッコのように
胸に抱えてぷかぷかと
背中を海に 夏を待ちます

memo】そんな手紙が今も机の引きだしで眠っているのだが、時折この季節、眠りから覚めることがある。ラッコは潮に流されぬよう、ワカメや昆布を体に巻きつけて眠るらしい。彼らの寝具をサラダに入れて、私は私で夏を待ちます。(敏)

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すがわら・びん

詩人。新詩集『かのひと 超訳 世界恋愛詩集』(東京新聞)発売中。国内外での朗読公演など幅広く活動中。

編集/
西野入智紗

本記事は雑誌BRUTUS893号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は893号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.893
新・日本のイタリアン。(2019.05.15発行)

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