建築・インテリア

Back to the land 田舎に帰ろう。

居住空間学2019

No. 892(2019.05.01発行)
居住空間学2019
ハイデザート、と呼ばれる標高の高い砂漠地帯、LAの東に位置するジョシュア・ツリーにジェイとアリソンの2人が拠点を移したのは2015年。真夏は灼熱、それでいて冬は雪も降る。季節の振れが大きい大自然の中で理想の家を、と挑んだ住処を訪ねる。

標高3,500フィート(約1,067m)の砂漠に佇む、手作りのモダンハウス。

「新築以上に手がかかったかも」と笑うのはアリソン・キャロル。ジェイとの結婚式を挙げた場所であるカリフォルニア州のジョシュア・ツリーが気に入り、家を購入したのが2015年ロサンゼルスでの生活に見切りをつけ、2人は何の衒いもなく荒涼とした砂漠へと移り住んだ。
「改修する過程でできることは全部、自分たちの手でやりたかったので徹底して学びました」。砂漠暮らしの先輩たちにアドバイスをもらったり、ユーチューブのビデオをたくさん見たり。もちろん屋根や水回りなどは専門家にお願いしたが、デザインマインドを的確に実現できるように、と家づくりに関する本を読み耽ったりもした。
 
例えば、増築した主寝室の壁には敬愛するフランク・ロイド・ライトのユーソニアン住宅で使われていたボード&バテン(板壁に一定のピッチで細い材を入れる)手法を取り入れ、天井にはニューイングランド地方の家に見られるビードボードと呼ばれるディテールを採用した。そんな2人だけにしかできないハイブリッドなデザインが心憎い。
「住処をここまで自分たちでつくったことで、よりこの空間を僕らのものとすることができました」とジェイは続けた。
 
そうして完成した家に暮らし始めて2年が経つ。「冬場は元の家から受け継いだ薪ストーブを焚き、季節の変化を楽しむ」そうだが、真夏の2ヵ月間は、灼熱の暑さを逃れてアメリカの最東北部に位置するメイン州で過ごす。「環境に無理に逆らわず、旅を暮らしに取り入れることが仕事の糧にもなる」という。ちなみに2人は、メイン州に終の住処を持った土地回帰主義者のスコット・ニーリングから家づくりに関して多くを学んだそうだ。寝室に飾られたニーリングによる「常に学び、成長するための覚書」にはこう書いてあった。「Live day BY day/日々を生きる」。街を離れ、時にはスローダウンすることを教えてくれたこの土地での2人の生活はまだまだ始まったばかりだ。

セドナの赤石をフラッグストーン・フロアに。スツールはジョシュア・ツリーの木工家、ダン・アンダーソン作。フランク・ロイド・ライトの復刻版ランプとの相性もいい。

主寝室の壁はフランク・ロイド・ライトのユーソニアン住宅のパネルを真似て。

真鍮のサイドテーブルはメイン州で見つけ、車で持ち帰った。

改修中に暮らしていたトレーラー。今はゲストルームに。

屋外シャワーは敷地にあったコンクリ基盤の一つを再利用。

友人の子供が描いてくれた愛犬レフティの肖像画。

ガレージは〈Wonder Valley〉オフィスに。木に塗り込んだ柑橘オイル入りの桐油が芳しい。

玄関扉のステンドグラスはスティーヴ・ハルターマン作。キッチンは2人が一番時間を過ごす場所。食器棚は見せる収納、火口周りには銅板を張り、変化を楽しみにしている。

Live day by day ─ Scott Nearing

日々を生きる─スコット・ニーリング(土地回帰主義者)

ジェイ&アリソン・キャロル

LAのシルバー・レイクから東へ約220㎞のところに位置するジョシュア・ツリーに拠点を移し、Wonder Valleyというブランドを立ち上げ、オリジナルのオリーブオイルを中心にライフスタイルプロダクトを展開。昨年はサンタフェのホテル〈El Rey Court〉の改装と、メスカル・バー〈LA Reina〉の監修も手がけた。ウェブサイト

photo/
Ye Rin Mok
text/
Aya Muto
edit/
Kazumi Yamamoto

本記事は雑誌BRUTUS892号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は892号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.892
居住空間学2019(2019.05.01発行)

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