建築・インテリア

無駄こそが生み出す、ゆとりある暮らし。

居住空間学2019

No. 892(2019.05.01発行)
居住空間学2019

内田 斉/内田文郁

JANTIQUESオーナー/FUMIKA_UCHIDAデザイナー 東京都目黒区

ダイニングスペースのテーブルはエーロ・サーリネン。通常、真円が多いが斉さんは楕円がお気に入り。椅子は年代も国もバラバラ。壁の奥は入居時に造ったランドリールーム。

アフリカ製の子供椅子をはじめ、小さめの椅子に植物を置いてサイドテーブル代わりに。家具や雑貨は目的を持って買いに行くことはない。手に入れてから使い道を考える。

斉さんが若い頃から憧れだったネルソンのCSS。ウォールユニット型の収納システムで、木と鉄の組み合わせが好み。9本の鉄筋のうち6本をリビングに、3本を書斎に設えた。

15畳ほどのベッドルーム。写真の対面にはバスルームが併設されていて、外国人住宅らしい設計。キルトやブランケットなど、新旧かかわらずファブリックが家中にたくさんある。

空間に表れる、自分たちのクセやスタイルを追求する。

「ミニマムで無駄のない暮らし」がもてはやされる一方で、その無駄と呼ばれる存在こそが、暮らしのゆとりにつながっているという好例がある。「私たちにモノを持たない暮らしは絶対無理ですね」と屈託なく笑う内田斉さんと文郁さん夫妻の住まいからは、そんな自然体の生活が垣間見られる。
 
夫妻と2人の子供と犬と猫。一家が暮らすのは、1970年代に外国人専用住宅として建てられたヴィンテージマンション。7年前に購入した。広々とした4LDKは、造りも間取りもゆったりとしている。文郁さんいわく「デッドスペースが多いでしょう。今の建築だったら部屋にしてしまいそうですが、そういう無駄な部分があるのが特徴というか、この家のいいところですね」。用途を限定せず、アイデア次第でいかようにでも変化させることができる。それは、空間だけでなく、身の回りに置く家具や雑貨にも同じことが言える。

「こういう使い方をしようと思って買ったことはあまりないです。今人気のユニット家具は便利だし、すぐに使えることはわかりますが、どこか面白みがなくて。それよりも偶然出会ったヴィンテージ家具をどう使ったらまとまるのかを考える方が楽しい」(文郁さん)。家具は海外で買い付けたものから、近所のリサイクルショップで見つけたものまでさまざま。国も年代もバラバラだ。

ヴィンテージのものは、時に使いづらさもありますが、僕らにとってはそのくらいがちょうどよい。不自由さをどう生活に取り入れるか、工夫を凝らすことでその人のクセやスタイルが表れるんじゃないかな」(斉さん)
 
合理的であることが悪いわけではない。けれどもみんな揃って同じような暮らし方になるのは味気がない。文郁さんは続ける。
「発想の転換や創意工夫でその人らしい空間を作ることができる。突き詰めて考えることが人間性を深めてくれる気がして。居住空間は、自分たちが作っているようですが、実は私たち自身が“作られている”場所なんだと思います」

リビングで子供たちとくつろぐ文郁さん。「夫婦の理想を追い求めて、子供が過ごしにくい場所にならないように、家族みんなが落ち着ける場所になるよう心がけています」

食器棚として作った棚ではなかったが今はご覧の通り。器は夫妻で好きなものを購入。フランスベルギーアメリカもの以外に、最近文郁さんは和食器にハマっている。

お気に入りのものは目に入るところにディスプレイ。その景色を眺めるのが楽しい。入居時にほとんど修繕はしていないが、天井を抜き、柱や壁の一部に木材を張るなどした。

渋谷で〈フックドヴィンテージ〉を営む、文郁さんの弟が手がけたランドリールーム。奥にあるヴィンテージデスクは、しばらくの間長女の勉強机だった。今は猫の住処に。

奥はドイツ人のシュルツによるサイドテーブル。花びらの形をした木天板と細い鉄の脚に惹かれた。ダイニングテーブルも所有。手前はイームズウォールナットスツール。

洗濯室の片隅に掃除用具を収納。といっても、しまい込むのではなく見せる収納に。「外に出てても嫌ではないもの」という基準で選ぶと、もの選びも妥協しなくなる。

ヴィンテージの仏軍のキャビネットは道具入れに。「人の手を通ってきたものに惹かれる」と斉さん。新しさや便利さよりも経年による質感のあるものを身の回りに置く。

「コーラー社の蛇口を使いたかった」という文郁さん。海外で入手した1920〜30年代のパーツや〈サブウェイセラミックス〉のタイルを施し、トイレ空間を作り上げた。

うちだ・ひとし/うちだ・ふみか

斉さんは古着屋〈サンタモニカ〉を経て、2005年、中目黒にヴィンテージショップ〈ジャンティーク〉を開店。文郁さんは、2014年、自身のブランド〈フミカ_ウチダ〉を立ち上げ、18年には、本郷三丁目に初となる直営店をオープン。

photo/
Keisuke Fukamizu
text/
Chizuru Atsuta

本記事は雑誌BRUTUS892号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は892号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.892
居住空間学2019(2019.05.01発行)

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