美術

untitled(2006)|ガブリエル・シエラ

チンキビジュツ〜世にもおかしなアートの世界〜

No. 891(2019.04.15発行)
曜変天目 宇宙でござる!?

 水平に切られたリンゴの間に、1ドル札。現代アートってさっぱりわからんという人にとっても、コンセプチュアルながら、わかりやすい作品ではないでしょうか。さて、「ビッグ・アップル」といえばニューヨークの愛称です。この言葉が使われ始めたのは1920年代なんだとか。当時の人々が夢見た、これから来る“ビッグ”な時代に込められた期待を感じますね。が、しかし。この作品では、どこにでもある普通のリンゴになってしまいました。努力はカネで報われるなんて思ったら大間違い。資本主義の栄光はどこへ。庶民にとっては儚く散った100万ドルの夢……といったところでしょうか。ガブリエル・シエラは1975年コロンビア生まれのアーティスト。諸問題をおざなりにしてきた北アメリカに対する批判をこの1個のリンゴに凝縮した、痛烈な皮肉とも読み取れるようです。さらにこの作品、誰にでも簡単に作れちゃうところがイイですね。プラカード代わりに小さなリンゴを掲げた人々を見かけるのも、そう遠くないのかも。

©Gabriel Sierra

文/
中村志保

本記事は雑誌BRUTUS891号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は891号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.891
曜変天目 宇宙でござる!?(2019.04.15発行)

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