夏葉社 代表 島田潤一郎(第4回/全4回)
美しい本を作ることへのこだわりについて、もう少し教えてください。
- 島田潤一郎
- ここ数年はイベントなどで本を手売りする機会が増えてきています。それでね、本が綺麗だとみんな手に取ってくれるんですよ。「これを読む前にこれを読め」みたいな教養主義なんて関係なくフラットに本と出会ってもらえる。たとえ作者のことを知らなくても本を読んでもらえる。そういう土壌ができてきていると思います。
本だけでなく帯の端正な佇まいも書店で目を引きます。
- 島田
- 夏葉社の基本の考え方は、一つの本を2500〜3000部くらい刷って、それを10年かけて売っていくというものなんです。10年先のデザインは予見できないし、言葉も年月が経てば古びたものに感じられるだろう。そうならないためには要素をそぎ落とすしかない。帯のデザインも文言も、ここまでシンプルにすれば10年後にもそんなに外しちゃうことにはならないだろうという(笑)。長く耐性のあるものを作って何年もかけて売っていくというのは、大きな出版社ではなかなか難しいと思います。いざとなったらコンビニでバイトでもなんでもすればいいやって開き直れるのは“一人出版社”ならではですね。うちの本は高いと言われてしまうこともあるんですが、それでも、できるだけ安くしようと努力しています。文学はもっと多くの人に読まれるべきだし、本が読まれることで社会が良くなると本気で信じている。そのためにも、学生や著者にも届く本を作りたいと思っています。(了)
- 写真/
- 角戸菜摘
- 文/
- 鳥澤 光
本記事は雑誌BRUTUS891号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は891号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。